かゆみ、痛み、おりものの異常など、デリケートゾーンの悩みは、なかなか人には相談しづらいもの。色、臭いなどおりものがいつもと違うと感じたら、STD(性感染症)の疑いもあります。都内のクリニックなどで診療にあたる一方、メディアでも活躍する産婦人科医の丸田佳奈先生に、おりものの異常について伺いました。
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<トリコモナス症>おりものが膿っぽくなり、不快な臭いがする
トリコモナス症は、セックスによってうつるSTD(性感染症)のひとつです。
どんな病気? 原因は?
「膣内にトリコモナス原虫が感染することで発症します。20~60代まで幅広い年代にみられます」(丸田先生)
おりものはどうなるの? 他の症状は?
「おりものが膿のような感じになり、量が多くなって、泡状になることもあります。また、腐った魚のような臭いがすることがあります。膣内の炎症のせいで、セックスで痛みを感じたり、出血がみられることもがあります。しかし、自覚症状が出ない人も多いです」(丸田先生)
どんな治療をするの? 予防するには?
「抗トリコモナス剤の膣錠か経口薬で治療します。感染者とパートナーがお互いに移し合う“ピンポン感染”を起こしやすいため、パートナーと一緒に治療することが大切です。トリコモナス症を始めたとしたSTDの予防には、セックスのときにコンドームを使いましょう」(丸田先生)
<淋菌感染症>緑黄色の膿のようなおりものに
淋菌感染症は、セックスによってうつるSTD(性感染症)のひとつです。
どんな病気? 原因はなに?
「淋菌に感染することで、子宮頸管炎を起こします。放っておくと、子宮内膜炎、卵管炎、腹膜炎などに進行することもあります。妊婦さんが感染している場合、産道感染で新生児結膜炎を起こすことがあります。感染者は20代が中心で、淋菌に感染している人はクラミジアなどの他のSTDにも同時にかかっていることが多いので注意が必要です」(丸田先生)
おりものはどうなるの? 他の症状は?
「緑黄色の膿のようなおりものになり、量が増えます。オーラルセックスにより、咽頭炎を起こすこともあります。
しかし、女性は症状がないことも多く、一方、男性のほうは尿道炎を起こし、膿や排尿痛があるなど、症状は劇的です。患者さんを診ていると、パートナーが淋菌感染症になったことで来院するケースが多いです」(丸田先生)
どんな治療をするの? 予防するには?
「治療は、淋菌に効く抗生剤を注射します。後日、菌がなくなったかどうか、再検査をします。感染者とパートナーがお互いに移し合う“ピンポン感染”を起こしやすいため、パートナーと一緒に治療することが大切です。また、淋菌感染症を始めたとしたSTDの予防には、セックスのときにコンドームを使いましょう」(丸田先生)
<カンジダ膣症>おりものが白っぽく、カッテージチーズ状のかたまりがみられる。多くは、ストレスや疲労が原因
カンジダ膣症は、カンジダ菌というカビの一種が膣内で増殖することで発症します。
どんな病気? 原因は?
「カンジダ菌は膣内にいる菌です。ふだんはデーデルライン桿菌という常在菌が膣内の環境を良好に保ち、カンジダ菌の増殖を防いでいますが、抗生剤の服用でデーデルライン桿菌が死滅したり、疲労・ストレスなどで免疫力が低下して、膣内がカンジダ菌優勢になることで発症します。皮膚などにもいるため、セックスを介して膣に入り込んで増殖し、発症することもあります」(丸田先生)
おりものはどうなるの? 他の症状は?
おりものは白っぽくなり、量が増えます。カッテージチーズ状の白いかたまりが見られることがあります。他の症状としては、「外陰部と膣内に強いかゆみが出て、熱っぽい感じがします。膣内もムズがゆい感じがあります」(丸田先生)
どんな治療をするの? 予防するには?
「抗真菌薬の膣錠と軟膏で治療します。デーデルライン桿菌は細菌なので、抗生剤で死滅してしまうのでNGです」(丸田先生)。
カンジダ膣症になりやすい人は、日ごろから免疫力が低下しないように、疲れをためない生活をすることも大切。また、「膣内のビデ洗浄は、デーデルライン桿菌まで洗い流してしまうので、使い過ぎないように。抗生剤の服用にも注意します」(丸田先生)
取材・文/海老根祐子