日本でも電子たばこが普及し、昔ながらのたばこから切り替える人が増えています。そんな中、電子たばこが脳にダメージを与えるという研究結果が報告されました。問題となったのはニコチンを含むリキッドを使うタイプで、日本ではニコチン入りの電子たばこのためのリキッドは規制されていますが、思わぬ落とし穴があるようです。
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毒物のストレスに弱い脳の細胞
日本ではニコチン入りの電子たばこのためのリキッドは医薬品に該当し、薬機法で販売などは規制されます。一方で、米国ではニコチンを使った電子たばこも一般的で、社会問題になるほど。
従来のたばこ製品より安全という印象があって広がる電子たばこですが、日本でも本当に安全なのかは心配する人も増えているよう。実際に、医学会などから健康に悪影響がある可能性もあるという指摘が出てきています。
このたび、米国カリフォルニア大学の研究グループが、ニコチンを含む電子たばこが、体内にあって、さまざまな細胞のおおもとになってくる「幹細胞」にどのような影響を与えるのかを調べています。結論としては、脳の中にあるこの幹細胞に悪影響が及ぶ可能性があるようです。
幹細胞は、再生医療などで注目を集めていますが、たばこ製品やニコチンに触れると、再生能力が失われる研究結果があることに着目したのです。幹細胞は、たばこの煙などの毒物によるストレスに弱いようなのです。研究グループは、ネズミの脳にある神経の幹細胞を使って分析しています。
若い人や妊婦はとりわけ注意が必要
分析の結果、明らかになったのは、電子たばこ用のリキッドやニコチンに触れると、神経幹細胞が有害な影響を受けてしまうということ。
幹細胞の中には、エネルギーを作り出す「ミトコンドリア」という器官があるのですが、ストレスに反応して融合してしまうことが知られています。ニコチンなどの影響でやはり、多くが融合して、互いを守ろうと変化することが確認されたのです。
どうやらニコチンの影響によって、細胞の中にカルシウムが過剰に流れ込むことが関係しているようでした。
研究グループによると、ミトコンドリアが損傷を受けることで神経の病気につながる恐れがあるといい、若い人や胎児をお腹に宿している妊婦をはじめとして電子たばこには気をつけるべきだと強調します。若い人や胎児は脳が発達段階にあるために、記憶力や学習能力、認知機能に悪影響が及びかねないからだといいます。
電子たばこが広がっていますが、思わぬ悪影響がある可能性についても知っておいたほうがよいかもしれません。
<参考文献>
日本禁煙学会「お知らせ」
http://www.jstc.or.jp/modules/information/index.php?content_id=119
iScience. 2019 Jun 28;16:250-269. doi: 10.1016/j.isci.2019.05.034. Epub 2019 May 28.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31200115
Study finds electronic cigarettes damage brain stem cells
https://www.eurekalert.org/pub_releases/2019-07/uoc–sfe070119.php
文/星良孝