魚や野菜が豊富なうえ、オリーブオイルやナッツなどの食材を使う地中海食は健康食としてその効果が注目されています。こうした中、地中海食とメンタルとの関係を調べた研究が新たにオーストラリアから報告されました。
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メンタルでの影響を調べたところ
今回研究報告をした南オーストラリア大学を中心とした研究グループは、メンタルの問題が、世界的にも死因のトップにある心血管疾患と共通した問題を持っていることが多いところに注目。食べるものが貧しいことが、同じようにトラブルを招いているのではないかと考え、調査することにしたそう。
そこで注目したのが、地中海食です。地中海食は、野菜、果物、豆類、ナッツ、種子、全粒穀物が豊富。調理油はオリーブオイルを主に使って、魚を適度にとることができて、赤身肉や加工肉などが少ないというのが特徴です。
これまでの研究では、心血管疾患やうつ病になりにくくなる効果があるといった報告もありました。
研究グループは、うつ病の人を対象として、地中海食をとるグループととらないグループに分けて効果を調べるという、国際的に見てもあまり行われてこなかった研究をすることにしました。
対象としたのは、うつ病患者152人。2つのグループに分けて、一方のグループは、3か月間にわたって隔週で地中海食の料理教室に通ってもらい、料理の食材も届けて、地中海食に取り組んでもらいました。この間、魚の油も摂取してもらっています。もう一方のグループは地中海食をとらず、ゲームをしたり、一緒に本を読んだりする集会に3か月間にわたって隔週で参加してもらいました。
そうして6か月間にわたって、メンタルの健康状態のほか、QOLや血液検査を受けてもらい効果を調べたのです。
ナッツなどに、精神面の健康につながる効果
3か月目の食事アンケート結果では、地中海食をとったグループは、野菜、果物、ナッツ、豆類、全粒穀物をとる量が増え、野菜の種類も増えて、「地中海食スコア」が高くなり、不健康なスナック類と赤身肉と鶏肉が減りました。
「地中海食スコア」は、地中海食をどのくらい遵守しているかを調べた結果で、この数値が高いと心血管疾患のリスクが低くなると証明されているものです。
うつ症状のスコアは、どちらのグループも下がりましたが、地中海食をとったグループは、とらなかったグループに比べて大きく低下。食事の変化とうつ症状の改善は、6か月後も持続していました。
また、地中海食スコア、ナッツの摂取量、野菜の多様性が高いほど、うつ症状のスコアが低いという関連性も見られました。
魚の油に豊富なオメガ3脂肪酸の増加、または、オリーブオイルなどに多いオメガ6脂肪酸(リノール酸など。必須脂肪酸だが多すぎるとよくないといわれている)の減少も、精神的な健康状態の改善につながるとわかりました。
地中海食のように健康的な食事をとることで、身体的な健康ばかりではなく、精神面の健康にもつながるという結果に、食事の重要性があらためて浮き彫りになったようです。
<参考文献>
Nutr Neurosci. 2019 Jul;22(7):474-487. doi: 10.1080/1028415X.2017.1411320. Epub 2017 Dec 7.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29215971
https://www.tandfonline.com/doi/full/10.1080/1028415X.2017.1411320
文/星良孝