運動をしていると、高揚感が生まれてくるものです。体を動かすことで、ダイエットやアンチエイジングといった体への好影響ばかりでなく、心にもメリットがあるとしたらラッキーです。このたび米国の研究グループが、エクササイズに取り組むと気持ちを高める「脳内麻薬」が出るとの研究結果を発表しました。
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運動をすると心にどんな影響がある?
日本のスポーツ庁によると、スポーツの語源は、そもそも「運び去る、運搬する」という意味を持つ「deportare」という言葉であると考えられているそうです。これが転じて、「気分転換」や「元気の回復」という要素を指すようになり、楽しみながら体を動かす「スポーツ」につながったといいます。実際、スポーツは精神の健康とも密接に関係しています。
今回報告した米国ウィスコンシン医科大学の研究グループの専門は「脳内麻薬」です。脳には麻薬に反応する「受容体」と呼ばれるたんぱく質があるのですが、体からもこの受容体と反応する2つの物質が自然に出ていることが知られています。
幸福な出来事などで脳が快感を覚える理由のひとつが、この脳内麻薬によると考えられるのです。グループは、気分やストレスへの反応に対し、この脳内麻薬がどんな役割を果たしているのかを研究しています。
今回は、うつ病のある女性17人に、20分のバイクトレーニングを使った運動をしてもらい、その前後に検査を行って、血液中にある脳内麻薬の濃度などを測定。気分や不安の程度にどのような影響を与えているか調べました。
「脳内麻薬」はたしかに上昇
わかったのは脳内麻薬がたしかに上昇していたこと。さらに、憂うつな気分や不安も軽くなっていることがわかりました。この脳内麻薬の上昇によって、運動から10分後の気分を軽くする効果が現れていました。さらに、運動してから30分後の不安も軽くする効果が確認されたのです。
研究グループはこうした研究結果を受けて、うつ病の傾向がある人に運動してもらうことで、精神の健康をとり戻すような効果を得られる可能性があると考えています。
運動をすることで心によい効果がもたらされる背景には、さまざまなメカニズムが関係しているようです。気持ちが落ち込んだときには、積極的に体を動かしてみることにやはり意味がありそうです。
<参考文献>
スポーツ庁「スポーツ実施率向上のための行動計画」
http://www.mext.go.jp/sports/b_menu/shingi/001_index/bunkabukai002/gaiyou/1408811.htm
Med Sci Sports Exerc. 2019 Sep;51(9):1909-1917. doi: 10.1249/MSS.0000000000002006.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/30973483
https://journals.lww.com/acsm-msse/Fulltext/2019/09000/Serum_Endocannabinoid_and_Mood_Changes_after.15.aspx
Medical College of Wisconsin Pharmacology and Toxicology
https://www.mcw.edu/departments/pharmacology-and-toxicology/faculty/cecilia-hillard-phd