何もしていないのに疲れたり、忙しくても楽しいと疲れを感じなかったり。「疲れ」は一体どこからくるのでしょう。それは肉体疲労やエネルギーの枯渇ではなかったのです! 今回は、医師でテレビでもおなじみの梶本修身さんの著書『疲労回復の名医が教える誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』から、知られていない疲労の正体についてお伝えしていきます。
Contents 目次
「疲れているのは体」は間違い?
「ヒトは、なぜ疲れるのか」ご存じですか?
「活動すると体内のエネルギーを消耗するから」と、お考えではないでしょうか?
結論から述べると、それは大きな間違いです。
飽食時代ともいえる現代社会において、体内のエネルギーが枯渇して疲労を起こすことはあり得ません。
実際、焼き肉やうなぎなどスタミナ食でエネルギーを補給したところで、疲れが回復しないことはすでに体験済みのことと思います。
疲れる理由。それは、細胞がサビるからです。
組織を構成する細胞は酸素を消費しながら活動します。
そのとき、酸素の1~2%が活性酸素となり、細胞自体をサビさせてしまうのです。自転車のチェーンがサビたら動きにくくなるように、細胞がサビたら組織全体もパフォーマンスが落ちます。これが疲労の正体です。
疲れているのは「脳」だった!
疲労の正体はもうひとつあります。
「運動や仕事で長時間活動すると、体が疲れる」と、思っていませんか?
じつは、これも大きな間違いです。疲れるのは体ではなく、脳なのです。
たとえば、同じ1kmの距離を歩く場合でも、4月の心地よい朝と8月の炎天下では疲労度は大きく異なります。同じ体重の人が同じだけ移動するわけですから、物理的には運動量は同じであり、筋肉の活動量も変わりません。
では、なぜ真夏の炎天下のほうが激しく疲れるのか?
それは、炎天下の活動で体温がどんどん上昇してしまわないように、汗をかかせたり、呼吸数を増やして熱い息を吐かせたりする命令を、脳が100分の1秒単位で出し続けているからです。
脳は、体中の内臓組織や筋肉を24時間休みなく制御しています。その機能を司っている脳の組織を「自律神経」といいます。
自律神経は、体が常に安定した状態を維持できるように、体温、呼吸、循環、消化などを無意識下で制御する「体全体の司令塔」であり、もし1分でも制御を怠れば、すぐに死んでしまう生命にとって最も重要な器官なのです。
疲れるのは、体ではなく自律神経。
私たちが日常、活動することで生じる疲労は、すべて脳の自律神経の疲労といえるのです。
その証拠に、運動による疲労も、デスクワークによる疲労も、徹夜による疲労も、 出現する症状は、全身倦怠感、頭重感、ふらつき、めまい、肩こり、むくみといった自律神経失調症とまったく同じなのです。
眼精疲労は自律神経の乱れを知らせるアラーム
眼精疲労は、これまで目の疲労と考えられてきました。しかし、研究が進むにつれて、眼精疲労の原因は自律神経の乱れではないかということがわかってきました。
ヒトに限らず哺乳類は、いち早く外敵や獲物を発見するために緊張時は交感神経が優位になって遠くに焦点を合わせていました。
逆に赤ちゃんに母乳を授けるようなリラックスした状況では、副交感神経が優位になって近くにピントを合わせるように設計されているのです。
しかし、現代社会のビジネスパーソンは、仕事をしているときは緊張で交感神経が優位になっているにもかかわらず、近くのパソコンやタブレットに焦点を合わせる必要が生じています。
本来、近くにピントを合わせるのは副交感神経優位の状況なので、自律神経において矛盾が生じます。そんな状態が長く続くと自律神経の中枢が疲弊し、それが眼精疲労として感じられるのです。
つまり、眼精疲労とは「自律神経が疲れている」というアラームにほかなりません。デスクワーク中はこまめに休憩をとって席を立ち、遠くの景色を眺めるなどして、できるだけ交感神経と副交感神経のバランスをとる必要があるのです。
「体が疲れる」と誤解させることで、オーバーワークを防ぐ人間の防衛本能です。「飽きる」「作業効率が落ちる」「眠くなる」は脳疲労の3大サイン。サインを自覚したら休息をとって脳を休めましょう。
文/庄司真紀
参考書籍
梶本修身著『疲労回復の名医が教える誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』(アスコム)