前回、体の疲れだと思っていたのは、じつは自律神経の疲れだったということをお伝えしました。今回は、最近の研究でわかってきた脳疲労の回復を促す食材「日本茶」と「鶏むね肉」について、医師の梶本修身先生の『疲労回復の名医が教える誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』からご紹介していきます。
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日本茶には疲労軽減成分がたっぷり
私たちがふだん、何気なく飲んでいる日本茶には、意外な疲労軽減効果があります。
緑茶の渋みの主成分がカテキンですが、カテキンは抗酸化物質・ポリフェノールの一種で、茶葉には4種類のカテキンが含まれています。
体脂肪低下作用、血中コレステロール低下作用があるため、ダイエット効果で知られていますが、細胞の酸化を引き起こす活性酸素を消してくれる作用もあります。
ただしその効果は2時間以内しか持続しませんから、数時間おきに摂取するとよいでしょう。
ビタミンCやビタミンEにも抗酸化作用がありますので、お茶は疲れがたまりがちな日中に摂取するとよいでしょう。
もうひとつのお茶に含まれる成分といえば、テアニンです。
テアニンはアミノ酸の一種です。テアニンには、興奮抑制作用があります。お茶がコーヒーほど強い興奮作用をもたらさないのは、そのためです。
いれる温度の違いでお茶の効能効果が変わる
じつは、お茶はお湯の温度を変えるだけで、抽出される成分が違ってくるのです。 これは、コンビニやスーパーで手軽に手に入る煎茶にも当てはまる特徴です。
80℃前後でいれると、カフェインが最も多く抽出されます。
どうしても仕事を頑張らなければならないときは80℃前後でお茶をいれ、カフェインの覚醒効果を活用しましょう。
90℃以上の高温でいれると、カテキンの含有量が多くなります。お茶の色は薄く、苦味が強くなります。
この温度でいれたお茶を飲むと、抗酸化作用のあるカテキンが体内にとり込まれ、脳の疲れをリセットすることができます。
一方、65~70℃の低温で蒸らす時間を90秒以内にしていれると、テアニンの含有量が最も優勢になります。この温度ではカフェインやカテキンはほとんど抽出されません。
お茶の色は濃く、うま味と甘味が強くなります。テアニンは、自律神経の興奮を鎮める働きがあり、自律神経の疲労を癒やす効果も期待できます。
夜はお茶を低温でいれてリラックスしましょう。
疲労軽減効果が実証された 鶏のむね肉
これまで一般に疲れをとるといわれてきた、いわゆるスタミナ食は、「疲れは筋肉から」と思われていた時代の間違った考えです。高カロリー、高たんぱくのこってりした食事は、消化吸収にエネルギーを使うので、かえって自律神経を疲れさせてしまいます。
その代わりにオススメしたいのが、「イミダペプチド」を含む食品です。
「イミダペプチド」は正式名称を「イミダゾールペプチド」といいます。
科学的な実験で、1日に200gを目安に最低2週間ほど摂取し続けると、76%の被験者において脳疲労が軽減することが判明しています。
イミダペプチドは、渡り鳥の翼の筋肉(むね肉)、まぐろやかつおなど回遊魚の尾の筋肉など、常に激しく動き続ける部位に多く含まれる物質です。
なぜそのようなところに多く存在するかといえば、生物の進化の過程で、動物たちが消耗の激しい部位にイミダペプチドを作る合成酵素を増やしてきたためだと考えられています。
じつは、人間もこのイミダペプチド合成酵素を持っていることがわかっています。
人間の場合、骨格筋だけでなく、脳、中でも自律神経中枢の組織にもイミダペプチドが豊富に含まれています。
そして、人間の体内では、イミダペプチドを多く摂取することで、それが消化されてアミノ酸となって脳へ届き、脳内でイミダペプチド合成酵素によってイミダペプチドが作られ、すぐれた抗疲労効果を発揮します。これは研究の結果、わかってきたことです。
つまり、材料を摂取しておくことで、自力でイミダペプチドを脳内で合成し、自らの抗酸化力を活性化する仕組みです。
200gのイミダペプチドは鶏のむね肉であれば100g、かつおであれば150gに含まれます。
コンビニなどで簡単に手に入る「サラダチキン」は、鶏のむね肉です。
1パック100g以上の商品がほとんどですので、食事のメニューにサラダチキンを1パックとり入れれば、イミダペプチドの1日の必要摂取量をカバーできます。
鶏むね肉のイミダペプチドの含有量はとび抜けていますので、肉を食べるなら鶏むね肉を選んだほうが効率もよく、かつ経済的です。
残暑が続くこの時季、水出しのゆっくりと抽出したテアニンの多いお茶と、イミダペプチドを含む鶏むね肉で脳疲労をリセットしてみてはいかがでしょうか。
文/庄司真紀
参考書籍
梶本修身『疲労回復の名医が教える誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』(アスコム)