同じ痛みでも腰痛と頭痛はタイプの異なる痛みと思えます。ところが、英国の研究によると、何度も起きる腰痛と頭痛には関連がある可能性があるようです。別の病気として、それぞれ治療が行われてきましたが、治療を組み合わせて行えるかもしれません。
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およそ50万人のデータを分析
日本において腰痛は多くの人が抱えている症状のひとつです。厚生労働省の国民生活基礎調査によると、2016年に腰痛の症状がある人は、男性では9.18%、女性は11.55%。男性だけで見るとあらゆる症状の中で最も多く、女性では肩こりに次いで多い症状となります。なお、頭痛は、男性では2.13%、女性では5.06%となっています。いずれも生活を妨げる厄介な痛みといえるでしょう。
腰痛と頭痛が珍しい症状ではないのは海外でも同じ。英国の場合は5人に1人が腰痛もちで、30人に1人が慢性的な頭痛に悩んでいるといいます。推定では、100人に1人(人口の約50万人以上)がそのどちらも患っているそう。
このたび英国のウォーリック大学の研究グループが、頻発する腰痛と慢性頭痛の関連性について、過去に行われた研究結果を分析し、その結果を発表しました。腰痛と慢性頭痛には共通する要因があると考えたのです。
研究グループは、報告済みの腰痛と頭痛に関連した研究論文から14の研究を検討。少なくとも3か月間にわたって毎日頭痛があった慢性頭痛の人と、腰痛が頻発している人が対象となり、その人数は計46万195人にも上ります。
腰痛があると頭痛もしてくる
わかったことは、頻発する腰痛と慢性頭痛のいずれかの症状がある患者は、まったく症状のない人に比べ、もう一方の症状も発症する可能性が2倍も高くなるということ(慢性片頭痛でも同様)。研究グループは腰痛と頭痛の関連性について、同じ痛みのシグナルが脳へ送られても、人によってその感じ方が違う可能性があると見て、「人によって痛みへの反応が異なることに関連しているのではないか」と説明しています。
頭痛は薬を使った治療が行われることが多く、腰痛は運動や整体のほか、カウンセリングを行う認知行動療法といった精神的なケアが行われることがよくあります。研究グループは、慢性頭痛の治療法としても、認知行動療法が有効である可能性があるとして、「腰痛と頭痛、両方の痛みに同時にアプローチするのがよい」としています。今後、共通のメカニズムが突き止められる可能性もあり、治療の選択肢が広がると、腰痛や頭痛に悩む人には朗報といえそうです。
<参考文献>
厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/index.html
Persistent headache or back pain ‘twice as likely’ in the presence of the other
https://warwick.ac.uk/newsandevents/pressreleases/persistent_headache_or
J Headache Pain. 2019 Jul 15;20(1):82. doi: 10.1186/s10194-019-1031-y.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31307372