日本の40歳以上の女性で、尿もれの経験のある人は43.9%というデータがあります。それだけポピュラーな悩みといえますが、なかなか人に相談できないものですよね。そこで、尿もれの中でも、腹圧性尿失禁の原因、セルフケア、病院での治療について、四谷メディカルキューブ女性泌尿器科の藤﨑章子先生に伺いました。
Contents 目次
膀胱と脳の連携プレーで尿意を感じる
■排尿のメカニズム
尿もれは、女性にとって深刻な悩みです。そもそも排尿はどうやって起こるのでしょうか。メカニズムについて解説します。
尿は腎臓で作られます。腎臓は、体内をめぐる血液をろ過し、老廃物など不要な成分を水分と一緒に取り除き、尿として排出しているのです。尿は腎臓から尿管を通って、膀胱に集まり、通常、成人は200~500ccの尿をためることができます。
尿がたまっている間、尿道括約筋によって尿道を締め、もれないようにしています。膀胱で尿がいっぱいになると、その情報が脳に伝わり「尿意」として認識され、トイレに行きたくなるというわけです。
囲みコラム 正常な尿とは?
正常な排尿に関するまとめです。成人の場合
【一日の排尿量】1~1.5ℓ
【一回の排尿量】200~400ml
【一日の回数】昼間は5~7回、排尿間隔は3~5時間
そのほかに、
・お腹に力を入れなくても排尿できる
・残尿感がない
・尿もれがない
・排尿後、すぐに尿意を感じない
・尿意をはっきりと感じ、ある程度がまんできる
骨盤底のダメージが原因に
■腹圧性尿失禁の原因
ところが、自分の意志に反して、尿もれが起こることがあります。そのひとつが、くしゃみや咳、ジャンプ、階段の上り下り、重い物を持ち上げる、スポーツなどでお腹に力が入った拍子に尿が漏れてしまう「腹圧性尿失禁」です。
「40代以上で週一回以上の腹圧性尿失禁があるのは12.9%といわれています。尿道を支える骨盤底がダメージを受けることで起こります」(藤﨑先生)
女性に多い原因は、出産です。出産前は、子宮に赤ちゃんがいることで膀胱が圧迫され、骨盤底の筋肉や靭帯がゆるみ、尿が漏れやすくなります。一方、出産においては、産道(腟)を赤ちゃんの頭が通るときに、骨盤底の筋肉や靭帯、神経が壊されて、尿道の支えがゆるくなってしまうのです。特に、鉗子分娩や吸引分娩では、そのリスクが高まります。
「妊娠中の尿もれは、分娩後に多くが解消しますが、出産後は、妊娠・出産による骨盤底への負荷や、授乳期の女性ホルモン・エストロゲンの低下も影響して、尿漏れがひどくなることもあります」(藤﨑先生)
また、出産経験の有無に関係なく、肥満、加齢も腹圧性尿失禁の原因になります。
では、腹圧性尿失禁の改善には、どうすればよいのでしょうか。次回に続きます。
取材・文/海老根祐子