日本の40歳以上の女性で、尿もれの経験がある人は43.9%というデータがあります。それだけポピュラーな悩みといえますが、なかなか人に相談できないものですよね。そこで、尿漏れの中でも、腹圧性尿失禁のセルフケア、病院での治療について、四谷メディカルキューブ女性泌尿器科の藤﨑章子先生に伺いました。
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骨盤底筋に効かせる動きができていない人も多い
■まずは骨盤底筋の体操を
腹圧性尿失禁では、ふとした動作のはずみで尿が漏れてしまい、外出が不安になったり、行動が制限されてしまうことも。日常生活では、尿もれシートを使って対応するのもひとつの方法です。
しかし、尿もれが起こらないようにする根本的な対策が必要です。最近では、尿もれ対策として、骨盤底筋の体操が注目を集めていますが、「病院での治療のファーストチョイスも骨盤底筋の体操指導になります」と藤﨑先生。
「骨盤底の筋肉を鍛えることは、尿もれ防止に効果があります。ダメージを受けた靭帯を改善することはできませんが、筋肉を鍛えることで、靭帯の働きを補うことができます。しかし、骨盤底筋に効く動きをマスターするのは難しく、正しく動かせていない人も多く見受けられます。続けていても、効果がないようであれば、一度、骨盤底の運動指導が可能な女性泌尿器科に相談することをおすすめします」(藤﨑先生)
骨盤底筋の体操は、息を吐きながら、腟、尿道、肛門を締め、お腹のほうへ引き上げるように行うのがポイント。
「病院では、医師、看護師、理学療法士が運動指導で介入して、筋肉を触ったり、超音波で筋肉の動きを確認するなどして、正しい動きができているかチェックしてもらえるので、正しい動きをマスターすることができます」(藤﨑先生)
自分で正しい動きができているか、チェックする方法もあります。
「腟の中に指を一本または二本を、第一関節から第二関節あたりまで入れて、腟をぐっと締めます。指が締めつけられるようならOK。体操をするときは、この感覚を忘れずに」
(藤﨑先生)
近年は、骨盤底筋体操の指導ができる病院も増えています。「体操の指導は自由診療となることも多く、遠方の病院にかかる必要があるかもしれませんが、効果のない体操を漫然と続けているよりもコストパフォーマンスはいいと思います」と藤﨑先生はアドバイスします。
■外科手術という方法もあります
外科手術によって、尿もれを解消する方法もあります。
「一般的には、腟から専用のテープを入れて、尿道に支えを作るような手術が行われます。四谷メディカルキューブの場合、全身麻酔で手術時間約10分、一泊二日の入院で行っています。手術というと、心理的なハードルも高いようですが、『迷ってないで早くにやればよかった』とおっしゃる患者さんが多いですね。ただし、術後6週間は、走る、運動、自転車、赤ちゃんの抱っこなどは禁止。特に小さなお子さんがいる方は、お子さんが大きくなってからにするなど、タイミングのいいときに受けるといいでしょう」(藤﨑先生)
また、レーザー治療を行っている施設もありますが、「尿失禁に対するレーザー治療のエビデンスは、現時点では不十分とされています。効果がある方もいますので、納得したうえで受けるのは問題ありませんが、自由診療で治療費も高額になるため、迷うようならセカンドオピニオンの検討をおすすめします」と藤﨑先生は話します。
取材・文/海老根祐子