日本の40歳以上の女性で、尿もれの経験がある人は43.9%というデータがあります。それだけポピュラーな悩みといえますが、なかなか人に相談できないものですよね。そこで、尿もれの中でも、切迫性尿失禁について、四谷メディカルキューブ女性泌尿器科の藤﨑章子先生に伺いました。
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原因は、膀胱の過活動
切迫性尿失禁は、骨盤底筋や尿道には問題がなく、膀胱の筋肉が必要以上に活動的になることが原因です。突然、切迫感を伴って尿意を感じるのが特徴で、「あ、トレイに行きたい」と思ってから、ガマンできるまでの時間が短く、トイレに間に合わずにもれてしまう、といったことが起こります。
「40歳以上の女性の10%に見られ、加齢とともに増加しますが、20代でも切迫性尿失禁になることがあります。肥満、糖尿病、神経疾患のある人は、年齢に関係なくハイリスクです。切迫性尿失禁の原因はよくわかっていませんが、カフェインが刺激になる人もいます。また、ふだんは大丈夫でも、アルコールを飲んだときに、その神経作用や、尿が増える利尿作用で、もれてしまう、という場合もあるようです」(藤﨑先生)
骨盤底筋の体操は切迫性尿失禁にも有効
■どんな治療があるの?
治療は、過活動膀胱の薬が処方されます。
「しかし、効果は、根本的な改善ではなく、過活動を抑えることなので、薬を飲んでいる間しか効きません。旅行などのイベントがあるときには服用している人もいます」(藤﨑先生)
■セルフケアは?
セルフケアとしては、ふだんから尿もれシートを使うことが安心材料になります。また、「腹圧性尿失禁と同様に骨盤底筋の体操が効果的です」(藤﨑先生)。
では、体操を具体的にみていきましょう。
<あお向けの姿勢で骨盤底筋を締める体操>
1. 床にあお向けになったら、両ひざを肩幅に開いて立て、リラックスする。
2. 下腹部に手を当て、お腹に力を入れないように気をつけながら、10秒ぐらい肛門や腟をお腹側にゆっくりと引き上げるように締める。きついと感じたら、5秒ぐらいから始めてもOK。
3. 締めた後は、力を抜いてゆるめて、体をリラックスさせる。
4. 「締める」「ゆるめる」のサイクルを10回くり返す。
<床に座った姿勢で行う骨盤底筋体操>
1. 床に座り、壁に軽くもたれ、両ひざを軽く開いて立てる。片手を下腹部にあて、リラックスする。
2. その姿勢で、お腹に力を入れないように気をつけながら、10秒ぐらい肛門や腟をお腹側にゆっくりと引き上げるように締める。きついと感じたら、5秒ぐらいから始めてもOK。
3. 締めた後は、力を抜いてゆるめて、体をリラックスさせる。
4. 「締める」「ゆるめる」のサイクルを10回くり返す。
<イスに座って行う骨盤底筋体操>
1.背もたれのあるいすに、腰と背中があたるように深く腰掛ける。足を軽く開き、片手を下腹部にあて、リラックする。
2.その姿勢で10秒ぐらい肛門や腟をお腹側にゆっくりと引き上げるように締める。最初は、5秒ぐらいから始めてもOK。
3.締めた後は、力を抜いてゆるめて、体をリラックスさせる。
4.「締める「ゆるめる」のサイクルを10回くり返す。
<立った姿勢で行う骨盤底筋体操>
1.テーブルの上に両手を肩幅に開いてつき、足も肩幅に開く。そして、軽く前傾姿勢をとる。
2.上半身の重みを両手にかけながら、10秒ぐらい肛門や腟をお腹側にゆっくりと引き上げるように締める。きついと感じたら、5秒ぐらいから始めてもOK。
3.締めた後は、力を抜いてゆるめて、体をリラックスさせる。
4.「締める」「ゆるめる」のサイクルを10回くり返す。
※トレーニングを行うときのポイント
・お腹に力を入れず、肛門や膣を締めることを意識する。
・全部できなくても、毎日トレーニングを続ける。
・2~3か月行っても改善しない場合は、医療機関に相談を。
また。尿意を感じたときに、骨盤底筋を意識して収縮させてみます。そうすることで、尿意を抑えやすくなるといわれています。自分で尿意をコントロールできるようになれば、もれてしまのではないか、という不安やストレスが軽くなります。
また、排尿記録をとって、尿の量が多くなるような行動パターンがないか、生活を見直してみましょう。たとえば、起床後に水をたくさん飲むから、通勤時にトイレにいきたくなるなど、改善点が見えてきます。
美容のために、水を必要以上に飲む女性もいますが、それを適量にしていったことで頻尿が改善した例もあります。コーヒー、紅茶、緑茶などのカフェインを控えることも試してみましょう。
取材・文/海老根祐子