睡眠不足は体や精神、脳はもちろん、思考や行動にも悪影響を及ぼし、その結果、人間関係に関する悩みが増え、さらなる不眠に陥ってしまうという負のスパイラルを生み出しているそうです。一体どういうことなのでしょうか。睡眠コンサルタントの友野なお先生に教えていただきましょう!
Contents 目次
人間関係トラブルやストレスから解放される「睡眠のチカラ」
脳の各部位を総合的に使いこなす指令塔ともいえる「前頭前野(ぜんとうぜんや)」という場所は、他人の意見を分析して判断したり、自分の意見を組み立てたり、まさに「思考の根幹」ともいえる働きをします。
つまり、人間が人間らしくあるために、非常に大切な役割を果たしているといえるのですが、睡眠不足の場合、この前頭前野の働きが鈍くなることが指摘されているのです。
寝不足のときはふだんよりもキレやすくなったり、他人に対する思いやりや協調性が失われたり、周囲に対して無頓着になったり、感情のコントロールができなくなったりしますよね。また、ちょっとしたことでイライラしたり、落ち込んだりすることが増えた…などという経験、皆さんにもありませんか? そういったことがあると、当然人間関係にヒビが入りやすくなってしまいますよね。また、睡眠不足だと脳や身体機能だけでなく、意欲やコミュニケーション能力も低下してしまうことが明らかになっています。
さらに、心の安定を維持するうえで欠かせない脳内物質「セロトニン」の分泌が十分になされないために、些細な課題に対してですら「できない」という衝動にかられてしまうこともあります。
やる気は失せ、プレッシャーにも弱くなり、そのうち「疲れた」などを理由に他人との関わり合いをもちたがらなくなっていき、社会的引きこもりの原因にもなりかねません。
これまでの研究では、睡眠不足が不安障害や気分障害などの精神疾患のリスクを高めることが指摘されており、徹夜明けはぐっすり眠れた日よりも交感神経の緊張が強くみられ、心理的ストレスを受けやすく、情動不安定になる傾向が高まると言われています。
実際、4時間に睡眠時間を制限して5日間過ごしてもらい、その前後で脳の働きを比較した調査では、脳の感情を司る扁桃体(へんとうたい)という部分が、特に恐怖表情に対する反応が強く出るにもかかわらず、幸福表情に対する反応は変化がなかったという結果を報告しているのです。つまり、ネガティブな感情にとても敏感になり、ポジティブな感情には鈍感になっていることです。
人間関係のストレスやトラブルに悩む現代人はとても多いですが、睡眠不足は体や精神、脳はもちろん、思考や行動にも悪影響を及ぼし、その結果、人間関係に関する悩みが増え、さらなる不眠に陥ってしまうという負のスパイラルを生み出してしまうことにつながります。
日ごろから睡眠負債をためないように意識すると同時にぐっすり質の高い睡眠を確保することで脳や心、体の疲れやダメージを修復してニュートラルな状態に戻します。翌日の思考・活動するためのエネルギーをしっかりと充電させましょう。