特に病気があるわけではないけれど、疲れやすい、元気が出ない、だるい、朝起きられない、ふらつくといった症状に悩まされていたら、低血圧かもしれません。“生活の質”にかかわるため、改善していきたいものです。伊藤メディカルクリニック院長で、循環器専門医の伊藤幹彦先生に、低血圧について伺いました。
Contents 目次
女性は男性の4倍!? あなたも低血圧に悩んでいるのでは?
ふだん「血圧」という言葉を何気なく使っていますが、血圧とは、そもそもどういうものなのでしょうか。
「血圧とは、心臓から送られた血液が血管を押し出す圧力のことで、自律神経の働きなどによって調節されています。血圧が最も高くなるのは、心臓が収縮して血圧を送り出すときで、これを『収縮期血圧=最高血圧』といいます。
一方、心臓が拡張して次に送り出す血圧をため込むときが、最も血圧が低くなり、『拡張期血圧=最低血圧』といいます。一般的に、“血圧が高い”といったときに聞き慣れているのは、最高血圧が高いことだと思います」
低血圧については定義がありませんが、一般的に最高血圧が100mmHg以下、最低血圧が60mmHg以下の場合、低血圧と診断されます。低血圧は女性のほうが多く、男性の4倍といわれています。
「その理由は、女性ホルモンに、末梢の血管を拡張する働きがあるからと考えられています」
脳卒中や心筋梗塞などの大きなリスクとなり、問題視されることが多い高血圧に対して、血圧が低いことは、あまり重視されない傾向にあります。しかし、疲れやすい、だるい、めまいがするといった不定愁訴で、QOLの低下に悩む人も多くいます。
低血圧には、4つの種類がある
低血圧には、主に4つの種類があります。
■本態性低血圧
低血圧を引き起こす疾患を伴わず、慢性的に血圧が低い状態です。体質が関係しています。症状を自覚する場合もあれば、自覚がない場合もあります。生活に支障をきたすような症状がなければ、特に治療の必要はありません。
■起立性低血圧
立ち上がったあとの最高血圧で20mmHg以上、最低血圧で10mmHg以上低下した場合を起立性低血圧といいます。座った状態や寝ている状態から立ち上がったときに、脳への血流が不十分になってしまうことで、めまい、立ちくらみ、ふらつきなどが起こります。
■二次性低血圧
心筋梗塞や不整脈などの心臓の疾患、胃腸の病気、内分泌異常、甲状腺機能低下、がん、栄養不良、また、けがなどによる大出血といった外部の要因によって低血圧になることがあります。
■食後低血圧
食事をしたあとに、消化のために胃に血液が集まることで、心臓に十分な血液が戻らなくなることで、一時的に低血圧になることがあります。立ちくらみ、吐き気、倦怠感、眠気などの症状が起こります。
特に疾患がない場合、女性に多いのは、本態性低血圧と起立性低血圧です。両方が重なっている場合もあります。また、食後低血圧は高齢者に多いといわれています。
低血圧では、全身の血の巡りが悪くなるため、疲れやすい、冷える、めまいがするなど、さまざまな症状が出てきます。次回、低血圧のくわしい症状について紹介します。