漢方を処方する病院も増えており、世界から注目を集める伝統医療の中医学。“病気”ではなくても、ひとりひとりの体質に応じたケアで、一般的な医療では難しい不定愁訴や未病を改善してくれる、健康でいるための医療なのです。今回は、西洋医学、中医学の両方の医師である岡部哲郎先生に、健康でいるための心得をお聞きしました。著書『西洋医学の限界』(アスコム)からお伝えしていきます。
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【心得1】「なんとなく、調子が悪い」を放置しない
なんとなく調子が悪い、食欲がない、ボーッとする…。原因が特定されない“不定愁訴”がしばらく続くときはためらわずに受診しましょう。
「中医学の見地に立って言わせていただくと、不定愁訴は立派な病気です。西洋医学の技術や常識では原因を特定できないだけで、必ずどこかに不調の要因はあります。もしかしたら、大きな病気の予兆かもしれません。あるいは、うつ病につながる一歩手前の状態ということもあり得ます。“なんとなく調子が悪い”は、絶対に放置してはいけないのです」(岡部先生)。
【心得2】食品はすべて薬である
体を冷やす食べ物と温める食べ物があるということはよく知られていますが、それ以外にも食べ物はさまざまな作用をもっています。
「野菜、肉、魚などすべての食品は、人間の心身に何らかの影響を及ぼす力を持っており、それを薬理作用と呼びます。この世に存在する食品はすべて薬で、そのなかでとくに薬理作用の強いものが 漢方薬。これが中医学の考え方で、古来、食生活にこそ医療の基本があるというスタンスをとってきました」。
たとえば牛肉が胃腸の働きを活性化させる作用をもつのに対し、豚肉は乾燥した体をうるおす機能を備えています。また、まぐろには滋養強壮の効果があります。
「西洋医学では“1日○○kcal以内に抑えてください” “1日△g以上のたんぱく質をとりましょう” このように指導することはあっても、具体的にどの食品を控えるべきか、また どの食品をとるべきかについては言及しないのが実情です。同じたんぱく質でも、肉と魚では体に及ぼす影響(薬理作用)が大きく異なるにもかかわらずです」。
同じ炭水化物、同じカロリーでもその食品によって大きく異なる薬理作用。この薬理作用を考慮すれば食生活で体調をじょうずにコントロールすることができるのです。
【心得3】油を控えて、食物繊維を多くとる
ここ数十年で大きく変わった日本人の食生活。その結果、口にする機会が急増した食材があるといいます。それは肉と油。
「肉と油は胃腸に大きな負担をかけるので、体が受ける影響は小さくありません。食の欧米化により、ただでさえ胃腸が弱くなってきているのに、最近は気候の亜熱帯化がそれに追い打ちをかけるようになりました。湿気が体に入ってくると、胃腸の働きが悪くなります。このまま暑くてムシムシした気候が続けば、状況はさらに悪化することでしょう。胃腸を強化し、大腸がんの発症リスクを抑えるためには、ただちに食生活を変えていかなければなりません」。
油を控え、食物繊維を多くとること。この2つは必須。
そして和食中心の食生活はもちろんですが、東南アジアの料理もよいそうです。
「オススメしたいのは東南アジアの料理。同じ湿気の多い国でも、ベトナムやタイの人々は胃腸が弱くありません。彼らの国の料理には、水気を飛ばす作用のあるスパイスが多く含まれているからです」
中医学をもとにした養生法は、自分の体質を知るところから始まります。気になる項目があったら、ぜひ毎日の生活で気をつけてみてください。
文/庄司真紀
参考書籍
岡部哲郎著『西洋医学の限界 なぜ、あなたの病気は治らないのか』(アスコム)