日本の女性はとくに家事や仕事で睡眠時間が短いといわれます。女性の性や生殖に関係する健康 “リプロダクティブヘルス”と睡眠にはどのような関係があるのでしょうか。今回は『目覚め方改革プロジェクト』が発信する「目覚めスッキリコラム」の内容より、プロジェクトのメンバーである明治薬科大学 リベラルアーツ 准教授、駒田 陽子先生が教える体内リズムと月経についてチェックしていきましょう。
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月経による不調や周期の乱れが目立つ
月経前にだるさや眠気、イライラを感じ、月経中は腹痛や頭痛に悩まされ、月経後は体調がよく活動的になる…周期によって女性の体調は変化します。このような女性の健康や体調に深く関わる月経、妊娠、出産など、性や生殖に関する健康のことを「リプロダクティブヘルス」といいます。
「日本人女性の約2万人を対象とした調査によると、およそ7割の方が月経前や月経中に心身の不調を感じている結果に。とくに、月経中の痛みには半数の女性が悩み、経血量が多いなどの過多月経には5人にひとりが悩んでいます。
月経周期に関しても、正常な月経周期は25~38日で周期のブレが7日未満とされますが、私たちの研究では半年を通してこの基準を満たしていた人はわずか40%でした」(駒田先生)
とくに月経時の心身の不調については「ガマンする」「横になる」などの消極的な対処になりやすいのが現状で、ふだんの生活に支障をきたすこともあります。
体内時計の乱れが不調の原因に
人間の体には体内時計が備わっていて、約1日のリズム(サーカディアンリズム)を刻んでいます。
「夜に眠り朝に目覚め、日中に活動するという睡眠と覚醒以外にも、さまざまな生理現象が約1日のリズムを示しています。たとえば、血圧や体温が最も高くなるのは後の遅い時間帯です。
また、自然分娩が開始するのは午前0時頃、自然出産の確率が最大になるのは午前6時頃といわれます。人の誕生にも体内リズムが関係しているとは、なんだか神秘的ですね。体内時計が正確に動くからこそ、私たちの体は健康を保つことができます」(駒田先生)
この体内リズムは女性のリプロダクティブヘルスにも大きく影響しています。
「シフトワークに従事する看護師や、時差のある地域を移動する客室乗務員では、月経周期異常や早期流産のリスクが高いことが以前から指摘されていました。これは、シフトワークや時差による体内時計の乱れが、さまざまなホルモンの分泌異常を引き起こし、女性の健康に影響を及ぼすものと考えられます」(駒田先生)。
ソーシャルジェットラグも女性の健康に影響する
しかし、このようなシフトワークや時差が多い仕事のように大幅に体内時計が乱れる場合だけでなく、1~2時間程度のズレであっても月経痛などに影響する可能性が明らかにされつつあります。
「私たちの研究では、平日と休日で睡眠時間帯のズレが1時間以上ある女性は、ズレが1時間未満の女性に比べて、月経中の痛みやむくみといった月経症状を重く感じていました。 また、マウスを使った動物実験では、飼育環境の明暗周期を1週間のうち2日だけ3時間遅らせソーシャルジェットラグの条件下にすると、マウス(中年期)の性周期が乱れたそうです。
こうした研究結果は、シフトワークや海外渡航と比較するとそれほど大きい変動でなくとも、日常的な体内時計の乱れが月経や妊孕性(にんようせい・妊娠する力)に影響する可能性を示唆しています」(駒田先生)
月経にまつわる心身の不調には週末の遅寝&遅起きなどが原因で起こる体内リズムの乱れが関係しているかもしれません。月経周期の乱れを防ぎ、月経期間を健やかに過ごすには、規則正しい生活を意識してみることが役立ちそうです。
情報提供:目覚め方改革プロジェクト
文/庄司真紀