デスクワークの多い現代人は骨の刺激が少なくなり、骨も早くもろくなる恐れが。40代を過ぎると誰でもその可能性が高まります。そこで前回、整形外科医の中村光伸先生が考案した、骨を鍛える「1分間骨たたき」をご紹介しました。最新の研究では骨を鍛えると、あるスーパー物質が分泌されて、全身も若々しく健康になることが判明。今回は著書の『医者が考案した 骨粗しょう症を防ぐ 1分間骨たたき』から、今、注目の骨ホルモンについてお伝えします。
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全身を活性化する「オステオカルシン」
骨は体を支える屋台骨。そして内臓や脳を保護する役割もあります。さらに骨の役割はこれだけではありません。
「骨のなかにある骨芽細胞には、免疫力を高めたり、さまざまな臓器の機能をコントロールしたりする重要なホルモンを分泌する働きがあることが、最近の研究により明らかになってきました」と中村先生。
なかでも注目されているのが「オステオカルシン」というホルモン。
「オステオカルシンは『骨ホルモン』とも呼ばれ、血管を通って体のすみずみに運ばれ、臓器を活性化します。さまざまな健康効果があり、たとえば糖尿病の予防では、オステオカルシンはすい臓の働きを活性化し、インスリンの分泌を高めることがわかっています」
オステオカルシンは心臓や肝臓、腎臓、すい臓、腸など、多くの臓器に働きかけるため、全身の機能をトータルで向上させ、糖尿病、認知症、動脈硬化、生活習慣病などの予防や改善にも効果が期待されているそうです。
ほかにもある骨の“スーパーホルモン”
オステオカルシン以外には、骨芽細胞から放出される「オステオポンチン」という別の物質も存在します。
「『オステオポンチン』は免疫力を高めるホルモンとして近年研究が進められています。老化による免疫力の低下との関係性も指摘されており、オステオポンチンの分泌が少なくなると骨髄内でつくられる免疫細胞の量が減少し、病原菌やウイルスに感染するリスクが増大するといわれています」
また「スクレロスチン」というホルモンにも注目です。
「骨づくりの司令塔である骨細胞は骨芽細胞に新しい骨をつくる指示を出しますが、一方で、骨づくりをストップさせる信号を送ることもあります。その役割が、スクレロスチンです」
スクレロスチンは、骨にかかる衝撃が少なくなると大量に分泌され、骨づくりをストップさせます。
「運動不足などで骨に衝撃が加わらない生活を続けていると骨細胞からスクレロスチンが大量に分泌され、知らず知らずのうちに骨づくりを抑制します。デスクワークなどで1日の大半を座って過ごすことの多い現代人は要注意です」
ただし、「骨たたき」や運動などで骨に刺激を与えるとスクレロスチンの分泌を減らすことができるそう。骨は体を支えるだけではなく、全身をコントロールし、私たちの健康と密接にかかわり合っています。
骨を鍛えることは骨折を防ぐだけではなく、健康な毎日を送る効果的な方法のひとつといえそう。健康寿命を伸ばすには骨の健康が欠かせませんね。
文/庄司真紀
参考書籍
『医者が考案した 骨粗しょう症を防ぐ 1分間骨たたき』(アスコム)