新型コロナウイルスの影響により、日本の企業でも外出自粛からテレワークを強化する動きがみられていますが、その一方で、慣れない環境で新たなストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。そんななか、スイスやドイツの人々は、コロナ危機の状況に比較的うまく対処して働けていることが報告されています。今後「新しい生活様式」が求められる日本でも参考にできるかもしれません。
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パンデミック前後での比較
新型コロナウイルスの感染拡大で、仕事や働き方に対する柔軟な対応が世界中で求められています。ニューノーマル(新しい常識)の働き方であるリモートワークやテレワークと呼ばれる在宅勤務の働き方が各国で推奨。半面、新しい働き方や業務の効率化が求められ、育児の負担も増加し、将来が見通せないことから不安も高まっています。そんななか、スイス・チューリッヒ大学で労働衛生を専門とする研究グループが、コロナ危機におけるワーカーの幸福感につながる「ウェルビーイング」や「健康」への影響について調査結果を報告しました。
研究グループは2020年4月にスウェーデンとドイツに住む597人(男性54%、女性46%)のワーカーを対象にアンケート調査を実施(対象者の平均年齢は49歳)。2019年6月に実施されたアンケート調査への参加者について、さらなる調査を行ったのです。研究グループは、その前回の調査から得られていた職場環境、ウェルビーイング、ライフワークバランスに関する回答結果と、新型コロナウイルスのパンデミック後の回答結果とを比較しています。
リラックスした状況で仕事に集中
こうしてわかったのは、パンデミック後にも、ワークライフバランスをじょうずに保ちながら、以前にもまして熱意をもって仕事に打ち込めている可能性もあるということ。
コロナ危機直後の回答をみると、29%の人が仕事に支障が出たと感じており、仕事が改善したと感じた人はわずか11%と影響が出ているように見えました。こうした影響はワークライフバランスにも同様に反映されていました。
しかし、パンデミック前後の回答を詳細に比較すると、意外にも仕事やワークライフバランスの問題が悪化していないと判明。ワークライフバランスは昨年6月よりもよくなっていました。新たに知識を増やし、専門的な技術の幅を広げられていると感じている人は多くなり、私生活においても職場の同僚からのサポートが増えたと感じ、何よりも働き方に自由が利かせやすくなったという感想が見られたのです。働き方の自主性の高まりが、ワークライフバランスの実現につながった結果に。
働き方に柔軟性や自主性が出たことでワークライフバランスが改善したと感じる人がいる一方で、幼い子どもがいる人では、コロナ危機で家での負担が増えたと感じていました。そのような人はほかの回答者とは異なり、働き方が変わったことによるメリットを感じておらず、同僚からのサポートも昨年より減っていると感じていました。
また回答から見えたのは、身体面、精神面の健康への支障でした。将来への不安が増し、他人とのつながりが減ったと感じていました。また運動量が減少していることもわかりました。
このようなテレワークのメリットとデメリットは、新しい働き方を模索中の日本でも参考にできるかもしれません。
<参考文献>
Workers Happy despite Crisis and Uncertainty
https://www.media.uzh.ch/en/Press-Releases/2020/Covid19-Work.html