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44歳・独身。3度結婚の機会を逃したけれど、まだあきらめていません ~私、ひとりでいてもイイですか?(1)~

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44歳・独身。3度結婚の機会を逃したけれど、まだあきらめていません ~私、ひとりでいてもイイですか?(1)~

新型コロナの影響で、人と会う機会がめっきりへった今日。みなさんは、ひとりでいることが気楽でいいと感じますか? それとも寂しいと感じますか? なかには、「今はひとりでいいけど、一生ひとりでいるのはイヤ」なんて人もいるかもしれません。
FYTTEでは、今月からそんな“おひとりさま”生活を送る独身女性のリアルに迫るインタビュー連載をスタート! インタビュアーは、婚活・恋愛の記事を多数手がけ、さまざまなメディアで活躍中のフリーライター・大宮冬洋さん。独身の男女を引き合わせて結婚に導く「お見合いおじさん活動」の主宰者としても知られています。そんな大宮さんが、おひとりさまたちのリアルな姿を描き出していきます。

Writer : 大宮冬洋 (おおみや・とうよう) (フリーライター)

フリーライター。恋愛・結婚に関するインタビュー記事を得意とし、最近は「お見合いおじさん活動」も勝手に遂行中。35歳以上で結婚した「晩婚さん」を160人以上取材した実績を持つ。2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。近著に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)がある。

Contents 目次

現在43歳の僕(大宮)が中学生だったころの1990年、50歳での未婚者の割合は男性5.6%、女性4.3%だった。大人のほとんどは既婚者だったのだ。その後、この「生涯未婚率」は上がり続け、20年後の2020年には男性26.6%、女性17.8%にのぼると推計されている(内閣府「平成29年版 少子化社会対策白書」より)。
未婚化の社会的影響は僕の関心事ではない。気になるのは独身でいる個人の心境と今後だ。特に都市部では女性がひとり暮らしをしやすくなっているけれど、「このままひとりでイイ」と断言できる人は少ないと思う。どうすれば安心と喜びのある生活を最期まで送れるのだろうか。
既婚男性で地方暮らしの僕も他人事ではない。学生時代の同期である妻との間には子どもがいないし、「あなたは長生きすると思う。ストレスがなさそうだから」と周囲から指摘されている。いずれまた独身に戻る可能性が高いのだ。少しずつでも心の準備しておきたい。それぞれの事情と気持ちを抱える人たちの「ひとり」を語ってもらい、最後に筆者の意見と感想を添えたいと思う。

***吉田香苗さん(仮名、44歳)の話***

母が大病を患ったとき、「どうして今まで結婚しなかったんだろう」と初めて後悔

私が40歳のときに母が大病を患い、ひとり暮らしをいったんはやめて実家に戻りました。母がいなくなってしまう恐怖を感じたとき、「どうして今まで結婚しなかったんだろう」と初めて後悔したのを覚えています。2歳年下の弟はそれで婚活をがんばり、相手を見つけました。今では仕事をしながら子育ても手伝う、いわゆるイクメンで楽しそうにしています。
実家は埼玉県にあります。近所には吉田姓が多くて、親戚も少なくありません。実家のある土地も父が本家から譲られたものです。父は私が高校生のときにやはり病気で他界しましたが、母はそのまま住み続けています。末っ子で寂しがりで、ひとりで都内に行くことすら怖がるような人です。
弟のお嫁さんも埼玉県出身で、家族で実家から徒歩20分ぐらいのところに住んでいます。母は将来、実家を二世帯住宅に改装するつもりでいるようです。1階には独身のままの私と母が住み、2階に弟家族が入る構想。でも、弟のお嫁さんのお母さんも埼玉県内の一軒家でひとり暮らしをしています。構想の通りにいくかはわかりません。

転職7回。ひとつの仕事を3年間ぐらい突き詰めるとほかのことをやりたくなる

仕事はフリーランスの編集者兼ライターです。都内の大学を卒業してから、出版社を5社渡り歩きました。途中、人材コンサルティング会社やホテルチェーン、美容皮膚科で人事や研修、広報の仕事をしたこともあります。

私は3年間ぐらい突き詰めるとほかのことをやりたくなる性格なのに、会社では「NO」と言えずに忙しい仕事を引き受けてしまう傾向があります。ホテルで中途採用の仕事をしていたときは睡眠2時間ぐらいで働いていました。燃え尽きて次に移るのがよくあるパターンで、どの会社もありがたいことに円満退社です。
フリーランスになったのは3年前。主な取引先が都内に2つあるので、そのどちらにも近い場所で事務所を借りようかな、と思っています。母の病気は治りましたが、まだ実家を出るわけにはいきません。もし私が結婚しても、何かあれば駆けつけてあげられる距離に住みたいと思っています。

1歳年上の商社マンと10年以上つき合った。3度の結婚チャンスを逃した理由

学生のころに出会った1歳年上の商社マンと35歳までつき合っていました。お互いに仕事優先で別れていた時期もありましたが、途中で3回ぐらいは結婚のタイミングがあった気がします。
最初は27歳ぐらいのときです。当時、彼は独身寮から出てひとり暮らしを始めて2年くらい経ったころで、私は実家暮らし。彼から「そろそろ家を出ないか」と言われたのですが、結局は一緒に住むことを選びませんでした。
5年後、彼が中部地方の支店に異動になったんです。花火大会を一緒に観に行ったとき、「こっちに来ないか」と言ってもらったのですが、私には仕事を辞めて行く勇気はありませんでした。
最後のタイミングは35歳のときです。彼は海外に転勤することに。また遊びに行くよ、と言うと「遊びに来るには遠いよ。住むなら別だけど」と言うんです。「寂しい?」と聞いたら、現地にも同僚はいるので寂しくはないと返されました。あのときに「寂しいから結婚して一緒に来てくれ」と言われていたら別の人生だったかもしれません。
彼が海外に行ってからも連絡を取り合うつもりでした。でも、今回に限っては音信不通になったんです。その後、人づてに彼らしき人が海外で結婚したというウワサを聞きました。

LINEでもメールでもない。いまどき電話をかけてくれる男性が好き

相手の年齢や職種、年収などにはとくにこだわらないという吉田さん。「でも、明確な条件がないぶん、決め手もないので難しい気がしています」(本人提供)

Noと言えないタイプの私は、いつも最初は相手のことがあまり好きではありません。ゴリゴリに押してもらってつき合って、別れてからその人のことが好きだったと気づくことも多々。長くつき合った彼も、振り返ると「欲しいときに欲しい言葉」をかけてくれる人でした。新人時代に私が先輩の名前を言い間違えて落ち込んでいたら、「仕事は適当でええねん」と言ってくれたこともあったな…。

40歳のときに参加した飲み会で知り合った年下男性も押しが強い人でした。毎晩12時ごろになると電話をかけてくるんです。彼は見た目は30代のように落ち着いて見えましたが、実年齢は25歳だったと後から知ってびっくり(笑)。会社の独身寮に住んでいました。いまどきLINEでもメールでもないのが新鮮でした。昭和じゃん!と。私、電話でこちらに踏み込んで来るような人が好きなのかもしれません。
彼は素直で愛嬌がある人でした。30歳を過ぎるとお互いに打算が働いたりしますが、彼にはありませんでした。居心地がよかったのですが、半年ほど経ったころに連絡が少なくなり、ちょうど私の携帯も壊れてしまって自然消滅です。

心でつながっていたい。心を分かち合える存在が欲しい

その年下彼と別れたとき、母も闘病していたので本気であせりました。「ヤバい、この先はだれとも出会えないんじゃないか」と感じたからです。可能性は数%かもしれませんが、できれば子どもが欲しいとも思っています。このまま一生ひとりは寂しいので、だれかと一緒にいたいのが本音です。

私が30代前半だったら結婚相談所に入会していたかもしれません。でも、44歳の女性では市場価値が低いですよね? 入会してもお見合いニーズがないと思ってしまいます。
誘ってもらってワイン会や飲み会に参加することもあります。半年ほどLINEのやりとりが続いていた3歳年下の男性もいましたが、お互いに仕事のスケジュールが合わなくて疎遠になってしまって…。ワイン会に来ていた50代の男性からはグイグイと押されました。でも、馴れ馴れしいしガツガツしていたので、名刺はいただきましたが、こちらの連絡先は伝えませんでした。
私は遠距離恋愛をしていた時期も長いので、好きな人が物理的にそばにいてくれなくても構いません。でも、心でつながっていたい、心を分かち合える存在が欲しい、とは強く思います。

***大宮より吉田さんへ***

長期計画を遂行しているアリの真似は無理。キリギリスなりの人生を全うしてください

頭の回転も舌の回転も速く、前向きさと柔軟性があって、徹夜をしてでも仕事をがんばる吉田さん。忙しくなると夢中になり、ほかのことは目に入りにくくなってしまいます。やや飽きっぽいという欠点も、フリーランスとしてさまざまな会社の仕事に自由に関われるならば問題ないですよね。吉田さんの話を聞き終えたとき、僕の頭に浮かんだのは「アリとキリギリス」の寓話です。もちろん、吉田さんはキリギリスです。

手堅いアリが転職をするのは多くて3回程度で、いずれもキャリアや収入のアップが条件。一方では、20代後半までには無難な異性と結婚します。その場合は、一時的に仕事をセーブすることも厭いません。アリたちにとって、結婚や子育ては自らの人生に不可欠の要素だからです。仕事や親の世話は大事だけれど「二の次」で、最も大事なのは長期的な人生計画の遂行なのです。
キリギリスな吉田さんは、よくも悪くも目の前のことを最優先する人なのでしょう。母親はいずれ先に亡くなることを知りながらも、「今はそばにいてあげたい」という気持ちを払しょくすることができません。今だけの居心地のよさを考えるならば、むしろ現状維持のほうが自分にもよいと感じているのかもしれません。「好きな人には物理的にそばにいてくれなくてもいい」なんて言いながら、年下の男性との気楽な恋愛を楽しんでいる時点で、結婚や子育ての優先順位は下から数えたほうが早いのでしょう。上位にあるのは常に仕事と実家です。

僕は批判しているのではありません。むしろ、ちょっと刹那的でややせっかちなところもあるけれど、やる気があって愛情深い吉田さんに共感しています。仕事の面ではフリーランスという働き方がぴったり合っているのではないでしょうか。生活面ではお母さんをとことん大事にして、自分の身の振りはなんとかなるさ、ぐらいの感覚でいいのかもしれません。

自分の中での優先順位が明確になると、ある種の清々しさが生じます。それに惹かれて近づいてくる男女も少なくないはずです。そのなかに人生後半のパートナーが見つかるかもしれません。このような生活スタイルはアリには決して真似できないでしょう。ぜひ、キリギリスはキリギリスなりの人生を全うしてください。

取材・文/大宮冬洋

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