不安や怒り、嫉妬、焦り…。こうしたネガティブな感情はコントロールするべきもの? ふだん負の感情を抑えてガマンすることを自分に課している人もいるでしょう。しかし、心理カウンセラーの石原加受子さんは、「ネガティブな感情は自分を守るための無意識からのメッセージです」と話します。今回は著書『感情はコントロールしなくていい 「ネガティブな気持ち」を味方にする方法』からお伝えしていきます。
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感情は自分を知るための「情報」
一般的に「感情を抑える」「怒りを抑える」という言い方をよくしますが、「こうした言葉を聞くたびに、怒りは管理すべきもの、そしてじょうずにごまかしたりして“うまくコントロールすべき”という域から出ていないのだと、心がしぼむ思いがします」と石原さん。
ネガティブな感情も、ポジティブな感情も理由がなくて起こることはなく、何かに起因してすべての感情は起こります。
たとえば目の前の相手に怒鳴ってしまったとき。それは相手に腹が立ったからというのがひとつの原因でしょう。しかし、本当はその相手に対してではなく、別のことでイライラしていたということが少なからずあるはず。それだけでなく、無意識的なことが理由になっている可能性もあります。
「自分の根本問題として、人や社会に対しての認識が間違っていたり、根底にある意識そのものがネガティブであったりするために、万事において怒りになってしまうのかもしれません。ネガティブな意識という点では、とりわけ人や社会を“敵”だと認識していれば、常に自分は“攻撃される”という被害者的な見方をしているでしょう」
このように感情は「自分の問題点を見つけ出すツール」でもあるのです。
「自分を守る」ツールでもある
そして、感情にはもう少し重要な“自分を守るためのツール”という意味もあります。自分の気持ちを無視したり、後回しにしたりする人は、自分の判断に自信がもてず、依存的な選択で判断ミスを犯しやすくなります。仕事で相手の言葉を鵜呑みにしてしまい、結局、約束は果たされなかった…など。
「自分の感じ方のセンサーが100%正確だとは言いませんが、少なくとも相手の言葉よりも、“自分の感じ方のセンサー”のほうがはるかに正確です。私たちは自分の思いや感情、気分を感じるというだけでなく、相手が抱いている思いも感じとっています」
この感覚のセンサーは磨けば磨くほど精度も高くなっていくといいます。
「感情のセンサーは自分の守護神とも言えるほどに頼りがいがあって強力です。自分の感じ方を信じて、判断し、行動する。それが結果として自分を守ることになるのです」
ネガティブな感情は自分自身の問題を照らし出したり、トラブルを回避するセンサーでもあるのですね。負の感情から目を背けず、「焦点を当てて味わう」こと。ときには感情からのメッセージに耳を傾けてみませんか。
文/庄司真紀
参考書籍
『感情はコントロールしなくていい 「ネガティブな気持ち」を味方にする方法』(日本実業出版社)