“怒りを抑える”ことが正しいという社会通念として広がっているのにもかかわらず、怒りの暴走のような事件が頻発し、怒りの感情はエスカレートしているようにも見えます。心理カウンセラーの石原加受子さんは「自分の心に無関心な人は他者や周囲の出来事に目を奪われやすい。他人に認められない不満足感が“怒り”を生み出している」と話します。著書『感情はコントロールしなくていい 「ネガティブな気持ち」を味方にする方法』からお伝えしていきます。
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怒りの理由は「腹が立ったから」だけではない
感情的に怒鳴ったりするのには、その人が育った家庭で、家族がどんな関わり方をしていたかが大きく影響しているといいます。
「よく、ひとつ屋根の下でいがみ合ってばかりいて、『そんなふうに争うのであれば別々に生活すればいいのに』と思ってしまうような家庭もあります。けれどもその家庭がネガティブな関わり方しか学んでいなければ、いがみ合うしかありません」(石原さん)
つまり、家庭でネガティブな関わり方がメインになっていれば、他人とのコミュニケーションもネガティブなものになりやすいのです。
そのひとつが怒りで、怒りの下には孤独への恐れがあります。
「気づいていても気づいていなくても、私たちは誰もが社会から孤立することを恐れていて、誰かと一緒にいたい、どこかに所属していたいという欲求をもっています。依存性の強い人ほど、誰かにすがっていないと怖くてたまりません。見捨てられそうになると、その恐れから、怒り出す人もいます」
“ひとりぼっちになるのが怖い”という思いが怒りとして現れてくるのです。
怒りが暴走してしまう理由
怒りはコントロールするべきものとされていますが、現実には社会全体で少数派への集中攻撃や自分とは違った意見を「悪」と見なす風潮をよく見かけます。
「自分の問題を未解決のまま、怒りという感情を管理したり、コントロールしたりしようとすれば、制御どころか限界に達したときにそれこそ暴走してしまうでしょう。今や怒りは鎮まるどころか、ますますエスカレートしている感がありますし、怒りが憎しみや恨みにまで発展しているとしか思えないような出来事や事件が頻発しています」
理不尽な怒りを抱いてしまう人には、自分の問題があるということ、そして「他者中心」の生き方をしているという特徴が挙げられます。
「『他者中心』の生き方は、物事を、他者を中心にした視点で捉えて思考し判断し、そして、選択し、行動していきます。一般常識、規範、規則、風習といったものを重視し、自分の心よりも外側にあるものに自分を適応させようとします」
一見、いいようにも思えますが、他者中心になればなるほど、自分で物事を決めたり、選択できずに、自分で自分を認めることもできなくなります。
「社会の圧倒的多数の人たちが不安でたまらないことも、焦り続けることも、また他者と自分を比較して勝ち負けや優劣を競うのも、この社会がますます“他者中心”に向かわされていっているからだといえるでしょう。他者承認で得られない不満足感が心に鬱積し、ネガティブな感情を生成していく。これが“怒り”の正体です」
他者中心の生き方の反対は、自分中心の生き方。自分を中心にした視点で捉えて思考し、行動することです。
「自分中心であればあるほど自己信頼が高くなっていき、どんな自分であっても認められるようになっていくでしょう」と石原さん。しつこく怒りの感情が湧くときは、自分で自分を認めてあげるといいかもしれません。
次回は、焦りを解消する方法をお伝えします。
文/庄司真紀
参考書籍
『感情はコントロールしなくていい 「ネガティブな気持ち」を味方にする方法』(日本実業出版社)