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空気を読んで、作るとは?~人間関係に悩むすべての人に贈る、和田裕美の“程よい距離”を見つける方法~
人間関係の悩みは、いつの時代でもつきものなのではないでしょうか。人間関係を作るためには「空気を読む」ことが大切です。でも、まったく空気を読まない相手に対していくら空気を読んでも疲れてしまうだけ。そこで大切なのが「空気を作る」こと。今回はどうすればうまく空気を作ることができるのかを、著書累計220万部のビジネスコンサルタントで、外資系教育会社時代に世界142カ国中2位の成績を納めた女性営業のカリスマ、和田裕美さんに教えていただきました。
Contents 目次
相手との関係において求めるゴールを意識する
「空気を読む」とは人の気持ちを察することであり、コミュニケーションを図る上でとても大事な要素です。でも、相手が全く「空気を読まない」タイプの人間だった場合、こちらが相手の空気に合わせるだけでは疲れてしまいますよね。だからといって、自分も空気を読まない、人の気持ちを考えないような人間になりたいというわけではない。こんなときに役に立つのが「空気は読むけれども、影響は受けない」というスキルです。空気を読み、さらに自分で空気を作るようにすれば疲れない、そんなお話を前回いたしました。
相手の顔色をうかがって空気を読むということは、相手のために空気を読んでいるということであり、受動的なので疲れてしまいます。そんなときに意識してほしいことは、自分がその相手とどういう人間関係を作りたいのか、どういうゴールを求めるのか、ということ。
自分は家庭を、職場を明るい空気にしたい。でも、パートナーは、上司は、同僚はむすっとしている、イライラしているとします。そのとき、相手の不機嫌な空気に影響されてしまうと、受け身になってしまい、必要以上におどおどしたり、「私はこんなに気を配っているのに何よ!」とイライラしたりしてしまいます。そうするとその空気がまた周囲に移っていき、状況は悪化するばかりです。
影響を受けるのではなく影響を与えて“空気を作る”
そこで、「相手はむすっとしてる、イライラしてる。でも私は家庭を、職場を明るい空気にしたいのだから、笑顔で『お帰りなさい』『お疲れさまです』と言おう!」と考えて行動するのです。するとそれは、空気を読みつつも相手の空気に影響を受けていない、能動的な行動になりますよね? 影響受けていた立場から、影響を与え、空気を作っていく立場に変わることができるのです。この場合、空気を読んでも、その空気を自分が能動的に動かそうとしているので疲れません。
たとえ「お帰りなさい」「お疲れさまです」という言動は同じでも、相手の空気の影響を受けて言った場合には、受け身ですから、返事がなかったり自分の思ったような反応がなかったりすると自分がどんどん、しょげてしまいます。でも、「これは空気を明るくするための第一歩なんだ」と考えたうえでの行動ならば、ストレスははるかに少なくなります。
自分がその相手と築きたい人間関係を決めてゴール設定することはとても大事です。その点を気にかけていると、関係性は非常に作りやすくなりますよ!
受身で空気を読んでいるときは嫌われないようにしているだけ
こう考えるようになったのは、私のセールス時代の経験からです。
セールスをされている方は経験があると思いますが、セールスではいろいろなタイプの人とお話をしなければなりません。相手を不快にさせたり、自分の思うような会話ができなかったりすれば、結果にはつながりませんよね。でも、身を入れて話を聞いてくれない人もいるし、期待通りの反応が返ってこないこともよくあります。
経験の浅いうちは、そういう方と会ったときには影響を受けてしまい、おどおどしたり、「ああ、この人に嫌われているんだ」と思ったりしてうまく話せなくなったりしたことが何度もありました。でも、それでは結果は出せません。そこで、私はこの人とどういう関係性を作ろうとしているのかな、と振り返ることにしたのです。
振り返る過程で気づいたのは、空気を読んで受け身でおどおどしているときって、とにかく嫌われないようにしているだけだったということ。“嫌われないようにする”というゴール設定で話をしていれば、こちらが伝えたいことを伝えるという地点まで到達できなくて当然です。
では、「嫌われたくない」を超えるにはどうしたらいいんだろう……といろいろと考えました。そして、影響を受けるだけではダメだということに気づいたのです。そして相手の苦手な部分を受け止めつつ、「この人との会話をどういうふうに進行させようかな」「この人に、伝えたいことを伝えるためにはどう会話をもっていけばいいんだろう」ということを常に意識するようにしました。そうすると、自然と自分の話し方や空気、態度が変わり、それに伴ってどんどん、目の前の人も変わっていったのです。
人間はふたを開けて見ないとわからない
「嫌われたくない」を超えるというのは、「嫌われてもいい」「好かれなくてもいい」ということとは少し違います。
人間の趣味や好みはさまざまですから、いくら自分が尽くしても、その人の趣味や好みからはずれてしまえば好かれないでしょう。ですから、人に好かれようと一生懸命気を遣って疲れてしまう人は、すべての人から好かれることはないと考えるとラクになると思います。自分自身にも、苦手なタイプだとか、この人のファンにはなれないなとか、そういうことってあるでしょう? いろんな人がいて世の中のバランスが保てるんですよね。
そのうえで、とはいえ関係性を作らなければならない、仲よくなりたい、というようなときには、相手に興味をもって一生懸命に話を聞くとか、相手が好きな話題を探ってその話題で盛り上がってみるとか、そういう努力は必要です。そうして踏み込んでみれば、「うわ、苦手だな」という第一印象だったのに案外気が合うわ、とか、次の世界が待っていることもあるんですよ。
ですから、入り口であきらめるのではなく、ドアを開けられないかな、もっと距離を縮められないかな、と努力をする甲斐はあります。すべての人に好かれることはないけれど、好かれることをはじめから諦める必要もないのです。人間ってふたを開けて見ないとわからないんですよね。
取材・文:寺田千恵
参考図書
『人の心を動かす話し方』(廣済堂出版)