「思ったことが言えない」から始まる人間関係の悩み。とくに職場ではさまざまな事情が重なって、言いたいことが言えないまま状況が悪化していくというパターンが多いようです。職場での悩ましい人間関係は、仕事の効率も落ちるし、何よりストレスですよね。著書累計220万部のビジネスコンサルタントで、外資系教育会社時代に世界142カ国中2位の成績を納めた女性営業のカリスマ、和田裕美さんに、よい関係を生み出すコミュニケーションについて語っていただきます。
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「思ったこと」は言わなきゃ関係は悪化する一方
職場での人間関係について、悩んだことがある人もいるかもしれません。私はいろいろな相談を受けるのですが、人間関係の悩みの多くは、「思ったことが言えない」というところから始まるように思います。思うように言えないまま抱え込み、わだかまりとして残り、「これってなんだかおかしくない? こうだと思うんだけど」ということが相談になるんですね。でも、ここで前提になるのが、やっぱり人にはいろいろなタイプがあるということ。そこを理解しないと、何かあったときに、ひとりで悪い方向に考えて、ネガティブになり、物事を悪化させてしまうことになります。職場でもこれは同じです。
これってもしかして「ネガティブ妄想」? 共感力の高い人は要注意!
たとえば、自分の知らないところで同僚が上司とランチや飲み会に行った、というようなことがあったとします。ここでネガティブ妄想が広がると、自分はなぜ誘われなかったのだろうか、ひょっとして嫌われてるんじゃないか、そういえばあのとき……とどんどん勘繰りの世界が広がっていき、機嫌よく仕事できなくなっていきます。果ては、それとなく同僚に探りを入れ始めてみたり、という事態にもなりかねません。
でも実際には、上司はたまたまその場にいたメンバーに声をかけただけで、他意はまったくなかった、という場合がほとんど。そんなことで仕事のモチベーションが下がるなんてちょっともったいないですよね。
「自分だけが誘われなかった」そういうことに傷つく人は、自分が誘う側の立場だったらちゃんとみんなに声をかけられる、気のつく人が多いんですね。誘われなかったらイヤな思いをするだろうと気を回すことのできる、共感力が高くてやさしい人です。これはとても大事なことですが、一方で自分が声をかけられなかったら、必要以上に傷ついてネガティブになることも多いのです。ですから共感力の高い人は「ネガティブ妄想」に陥っていないか振り返ってみることが大事です。
その「当たり前」は本当に「当たり前」?
あるいは、仕事のできる人に多いのが、やる気が感じられなかったり、仕事ができないように見えたりする上司や後輩にイライラしてしまうこと。「普通、これくらいするよね」「何であんなに覚えてくれないのかな」「1回言えばわかることでしょ?」「もっと早く言うのが当たり前じゃないの」……。でも、イライラしたり怒ったりしても、状況は変わりません。あなたが「普通」「当たり前」と思っていることと他の人の思うことが、相当、違っている可能性だってあるからです。
そういうときには気持ちを乱すのではなく、いったん、相手の立場になって「どうしてこの人はこうなんだろう?」と考えてみるのが有効です。相手の立場を少しでも察したり理解したりできれば、相手に注意をしたりお願いをしたり、自分の意見を言ったりするときでも、伝え方を工夫することができます。自分のほうが絶対に正しいと思っていても、それを前面に押し出すのではなく、相手が聞き入れやすい言い方を工夫するのです。
人間関係に百点満点はない
そこまで譲歩しなきゃいけないの、と思うかもしれません。でも、人間関係がよくなくて仕事で成果を出せなかった場合、チーム全体の評価が下がって結局は自分に返ってきます。逆に人間関係をよくしたために空気がよくなれば、自分は仕事がしやすくなり、成果も出やすくなります。全体の評価が上がれば、あなたの評価も上がり、会社のためにもなります。シャクだと思ってもうまく上司を立てれば、上司からの評価がよくなって給料も上がるかもしれませんよ!
人間関係とか空気づくりに百点満点はありません。いろんな人がいるし、完璧にはいかないものです。でも、自分の周りはなるべく明るくして、自分の心は平和でいようとすることはできますよね? 自分が期待した世界とは違っても、そこになじみながら自分で空気をつくっていくことを考えられれば、少しずつドアは開いてきます。
やればやるほど深い仕事の世界。ゴールを見失わずに深掘りを!
仕事の楽しさは、深掘りしないと見つかりません。「わかった」と思っても、実際には表面的な「わかった」にすぎないこともあります。これだけやったからもう十分というようなことはないんですね。やればやるほど深いものです。もっと知りたい、もっとわかりたい、と夢中で深掘りしていくうちに、できなかったことができるようになったり、ある日突然、「ああ、こういうことなんだ!」ってわかる瞬間が訪れたりします。
もちろん、自分で小さな目標を設定したり、空気をよくするように相手の気持ちを察して行動したりしていても、職場で褒められるかどうかなんてわかりません。ただ、誰かの評価をもらえなくても、自分が考えたことを自分でできた、という満足感と達成感を積み重ねれば、仕事はもっと楽しくなりますよ!
この意識は、仕事でも、家事でも、あらゆることに適用できるのではないでしょうか。ぜひ、自分がどうありたいのか、自分の目標や幸せは何かを見失うことなく日々の生活を楽しんでいってほしいと思います。頑張ってくださいね!
取材・文/寺田千恵
参考書籍
『人の心を動かす話し方』(廣済堂出版)