年齢とともに衰えるとされる記憶力。その低下を少しでも遅くすべく、いろいろと研究が進められています。今やスマートフォンのアプリにも脳を活性化できるタイプのものがたくさんあります。そんななか、記憶力が低下しにくい性格についての報告がありました。それは熱意のある元気な人、心理学でいう「ポジティブ感情」をもった人です。
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30年にわたる追跡データを分析
愛情や喜び、熱意、関心、誇り、活気などさまざまな気持ちが含まれる「ポジティブ感情」は最近になってようやく研究が進んできたという側面があります。というのも、対照的な怒りや恐怖などの「ネガティブ感情」は心身の病気につながりやすく研究が進みやすかったのです。ポジティブ感情は、マインドフルネスなどとの関連もあって心身に与える影響が明らかになってきたテーマです。ポジティブ感情をもつことは直感的にも大切ですが、実際に健康的に年を重ねていくうえで重要だという見方はますます強くなっています。
そうしたなかで、米国ノースウエスタン大学などの研究グループは、ポジティブ感情と記憶力の関連性について検証しました。対象は、エイジングについての追跡研究の参加者およそ1000人。10年に1回、ポジティブ感情についての報告を3回行ってもらい、そのうえで、2回目と3回目に記憶力テストも受けてもらいました。
記憶力の低下が長期間にわたって遅くなる
ここからわかったのは、ポジティブ感情をあまりもたない場合には記憶力の低下につながるということ。年齢とともに記憶力は低下していく傾向があるにもかかわらず、ポジティブ感情を抱くことが多い人では、10年にわたって記憶力の急な低下は見られなかったのです。参加者の年齢や教育レベル、ネガティブ感情、外向性などの要素にかかわりなく、また個々のポジティブ感情についても、同様の結果が見られました。
ポジティブ感情は記憶力を低下しにくくすると研究グループは説明しています。体の健康や社会参加など、ポジティブ感情と記憶力がどのような経緯で関係するのか、この先の研究も進めていくそう。いずれにせよ、前向き志向は脳の力を高めるためにはよい効果をもたらしてくれるようです。ふだんから心がけるといいかもしれません。
<参考文献>
Positive Outlook Predicts Less Memory Decline
https://www.psychologicalscience.org/news/releases/2020-oct-positive-outlook-memory.html
Hittner EF, Stephens JE, Turiano NA, Gerstorf D, Lachman ME, Haase CM. Positive Affect Is Associated With Less Memory Decline: Evidence From a 9-Year Longitudinal Study. Psychol Sci. 2020 Oct 22:956797620953883. doi: 10.1177/0956797620953883. Epub ahead of print. PMID: 33090935.
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797620953883
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33090935/