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42歳・独身。東京から湯治目的で縁もゆかりもない九州へ単身移住。彼氏未満の人はいるけど寂しいです…。~私、ひとりでいてもイイですか?(25)~
本企画は、ひとりでいるのが好きな人も、ひとりでいるのが寂しいと感じる人も、“おひとりさま生活”について思いのたけを語るインタビュー連載です。インタビュアーは、婚活・恋愛の記事を多数手がけ、さまざまなメディアで活躍中のフリーライター・大宮冬洋さん。
今回登場するのは、言語聴覚士の資格を持ち、現在は講師業やクリエイターとして活動しているという42歳の女性です。もともとアトピーなどで肌が弱く、結婚を考えていた恋人がいたこともあり、就職せずに湯治をしに単身で九州へ。いずれは東京に戻る予定のはずでしたが…。
Contents 目次
地元から遠く離れて暮らす人。地元からは決して離れたくない人
生まれ育って実家もある場所を「地元」と定義するならば、そこから遠く離れて暮らす人と離れたくない人の2種類に分かれると思う。僕の場合は埼玉県所沢市で生まれ育ったけれど、小学生のときに隣接する東京都東村山市に引っ越した。高校は武蔵野市にあり、浪人生時代も同じく武蔵野市に拠点がある予備校に通い、大学は国立市にあった。
就職先は町田市にあり、1年後に辞めて実家に出戻らせてもらい、お金を貯めてひとり暮らしを始めたのは杉並区。広く表現すると「武蔵野」「多摩」が地元だ。電車と徒歩が主な移動手段だったので、「西武新宿線および中央線の沿線」といったほうが自分としては馴染みやすい。
35歳のときに結婚を機に愛知県蒲郡市に引っ越した。バツイチだという弱みもあり、隣接する西尾市で家業の工場を継いでいる妻に対して妥協したとも言える。もはや関東地方ですらなく、名古屋のような都会でもない。フリーライターなんて市内に僕しかいないだろう。自動車の運転が苦手だといって駅周辺を徒歩で移動している成人男性も僕ぐらいだ。
最初はかなり寂しかった。工場の朝は早い。妻は朝7時過ぎには家を出てしまい、暗くなるまで戻ってこない。平日に自宅で原稿を書いていても息抜きしに行く飲食店も知らず、もちろん友だちもいなかった。月の半分以上は取材と称して東京に帰っていたのは寂しさを埋める意味もあったのだと思う。
……思わず自分語りをしてしまった。今回登場してくれるクリエーターの山崎久美さん(仮名、42歳)も関東地方出身で、現在は九州の都会でひとり暮らしを続けている。転勤でもなく、地縁があるわけでもないのに、なぜ九州に単身移住したのだろうか。理由は「湯治」という一風変わったものだった。
***山崎久美さん(仮名、42歳)の話***
悪い立場を自分の問題として捉えて解決しようとはせず、タバコを吸ってごまかす恋人
子どもの頃からアトピーや喘息の症状があり、具合が悪すぎて高校は退学しました。それから通信制の高校に通い直して2年遅れで東京の私立大学に入ったんです。
若い頃は視野が狭くて甘え心もありますよね。学生時代から付き合っていた彼氏と結婚しようと思っていたので、「就職はしなくていい。体調をよくすることに専念しよう」と思って大学卒業後は温泉治療が有名な九州に来て、アルバイトをしながら暮らしています。
彼とは遠距離恋愛をしながら九州にいたら、楽しくなって住み着いてしまいました。みんなが大卒で就職するのが当たり前、という東京時代の「常識」に縛られずに済むからです。ここでは中卒、高卒の人たちが普通に暮らしています。勉強なんてできなくても構わない。それでもいいんだな、生きやすいな、と感じました。
トータルで7年近く付き合った彼と別れたのは30歳のときです。ある日、「性格的に好きじゃない」と目覚めたんです。それまでの私は、体調が悪くて働く自信がないことを言い訳にして彼の弱さに目をつむっていました。
彼は自分の悪い立場を他人のせい、社会のせいにする人でした。自分の問題として捉えて解決しようとはせず、タバコを吸ってごまかして逃げて終わり。年齢を重ねるにつれて余裕がなくなり、その傾向が色濃くなったんです。
私にも同じような弱さがあります。だからこそ、彼に決定的な弱点が見えて、耐えられなくなりました。正直に言うと、彼をずっと好きだったわけではなく、結婚してラクができそうな道に必死にすがりついていたのです。
「やさしいからこの仕事をしている」と思われたい人たち。そのズルさを私は知っています
思いきって彼と別れて、バイトに精を出し始めたらアトピーや喘息の症状もあまり出なくなりました。自分の心と違うことが体調を悪くしていたのだと思います。1年半後にはすっかりよくなったんです。
でも、東京に戻って言語聴覚士の専門学校に通い始めてからはまた体調が悪化。現場で働き始めたら20kg台まで体重が激減して死にそうになってしまいました。普通の会社でずっと働くのは無理なので国家資格を取得して医療機関でラクに稼ごう、というズルい考え方が間違っていたのだと思います。
私の母は看護師として成功しています。だから私が言語聴覚士を目指すことも賛成してくれました。でも、母と私は正反対の人間です。安易に真似てはいけなかったのだと今ではわかります。
リハビリに関わる仕事内容自体は面白いと思いました。でも、基本的に立ち仕事なので体力のない私には向いていません。同僚はよく言えばやさしい人。悪く言えば、ぶりっ子です。「やさしいからこの仕事をしている」と思われたい人たちでした。本当は私のようにズルい人が多いのかもしれません、3年間で友だちはひとりもできませんでした。
お金にしやすい講師業に逃げていた。作品を作って売るのは本当に難しいから
九州に帰って来てからは、言語聴覚士の仕事は一切していません。学生のような安いワンルームマンションに住み、カルチャーセンターの講師業と株式投資で生計を立ててきました。ほかに、インテリアの自作キットを制作して販売しています。月13~14万円で生活できています。趣味は家具作りなので、自宅の家具は自分で作りました。
3食自炊しています。料理は好きではありません(笑)。グルメな母に比べるとかなりランクを下げた料理をしています。野菜は好きなので、炒め物などはいつも多めに作って4回ぐらいに分けて使っています。あとは焼き魚と煮物ぐらい。これでもほかの人からはちゃんとしているように見えるみたいです。
生活時間は決まっていません。朝9時~11時ごろに起きて、夜は2時~4時ぐらいに寝ます。でも、講師の仕事やイベントへの自作キットの作品出展があれば朝5時でも起きますよ。
コロナ前までは講師業がメインでした。多いときは月8講座ぐらい。私は「できない人」の気持ちがわかるので教えるのは上手なほうだと思います。でも、コロナで講師の仕事は激減。今は自宅に引きこもってひたすら自作キットの作品制作をして、海外に売るための準備もしています。
講師業はお金にしやすいので、今までそこに逃げていた面もあります。作品を作って売るのは本当に難しいのですが、試行錯誤しながらやっていくしかありません。
他人に何かを与えられるような豊かな気持ちがないと制作にも宣伝にも魂が入りません。まずは自分自身にお金と愛情をかけてあげることが必要ですね。コンビニのコーヒーぐらいはケチらずに飲んでいます(笑)。
「寂しい」と言葉にはしづらいほどの寂しさ。楽しいことを外に探すしかありません
1年前からはマッチングアプリで婚活をしています。半年ほど付き合った男性もいます。45歳のバツイチの人でした。話していてとても波長が合ったし、性格はいわゆる「繊細さん」の私の真逆。好きになれたし居心地もよかったのですが、結婚して共同生活はできないと思いました。
彼は前の家庭とお金の問題を抱えていたからです。しかも、古い家をローンで購入して住んでいて、結婚したら夫婦共働きでローン返済をするのが当たり前、という感覚。決して性格が悪いわけではありません。高校を出てから県内を出たことのない彼とは、生活への価値観が違いすぎると感じました。
じつは、もうひとりの男性とは交際には至らないまま10回以上も食事をしています。私の10歳上で、海外でも働いているハイスペックの技術者です。会話も上手で気遣いもできるけれど、恋愛感情は持てません。「ちょっといいな」と思ったぐらいでは踏み込めないあたりも私とそっくりだからです。そして、相手が思ったような反応をしてくれないだけでいちいち傷つく。まるで私自身と話しているような感覚になります。
それでも会い続けているのは結婚できるかもしれない相手だからです。でも、お互いに「好き」とは言えないでしょう。恥ずかしいからではありません。自分から言うほど好きじゃないことがわかっているからです。
生活を安定させたいと思って婚活を始めて、私は寂しかったのだと改めて知りました。それまでは寂しさに気づかないほど寂しかったのでしょう。「寂しい」と言葉にするとつらすぎるから、楽しいことを外に探すしかありません。女性の場合は、既婚女性からも男性からも受け入れてもらいやすいので得です。私は合唱サークルを続けています。
マッチングアプリは今お休み中です。毎日のようにチェックしてメッセージを送り合わなければ意味がないので、気力体力が要ります。作品の制作と販売に集中している今はそのパワーがありません。
***大宮より山本さんへ***
生活の安定を結婚に求めてしまうと、相手との関係がいびつになりやすくなります
ふんわりとしていてモテそうな雰囲気の山崎さん。作品も可愛らしくユーモラスですね。そんな山崎さんの口から人間の弱さとズルさをえぐるような言葉が出てきたのは興味深かったです。しかも、その根底には「自分もそういう人間だから」という認識があります。もともと気楽には生きにくい性質なのでしょう。
でも、40年以上も生きてくると(山崎さんの場合は「生き延びてきた」という表現のほうが正しいかもしれません)、数え切れないほどの失敗をもとにして「自分を追い詰めすぎない方策」のようなものが見えてきますよね。独身女性は社会人サークルなどで歓迎されやすい、という指摘は面白いです。思わず「男はつらいよ」とつぶやいてしまいました。
冒頭で僕は、愛知県蒲郡市に来た当初は知り合いが妻とその家族しかいなくて寂しかった、と書きました。でも、当時は30代半ばと比較的若かったのがよかったのかもしれません。ネットで探した近所のコーヒーショップの店主や常連客を突破口にして、いろんな人と仲よくなることができました。今では近所を散歩していると、車を運転中の友人知人から発見され、「大宮さーん。今日はどこまで歩くの?」と声をかけてもらっています。嬉しいです。
話を戻しましょう。山崎さんがコロナを機に、家具の作品制作と販売に力を入れているのは生みの苦しみの時期だと感じます。山崎さんの作品インスタグラムを拝見しましたが、生で見たくなるものばかりですね(実際、手作りキットを1点購入してしまいました)。今後、じわじわとファンが増えていく気がします。
僕も個人事業主なので「生活を安定させたい」という気持ちはよくわかります。でも、それを結婚に求めてしまうと、相手との関係がいびつになりやすく、自己嫌悪にも陥りやすくなるかもしれません。山崎さんは講師や作品制作だけでなく、株式投資の才能もあるようですね。ほかにも心身を疲弊させずに取り組めて、人にも喜ばれる仕事があるはずです。いろいろ試してみることをお勧めします。
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