2020年はコロナの影響や漫画『鬼滅の刃』のヒットもあって国内では本を手にとった人が多くいたといわれています。従来、「読書離れ」が指摘されていましたが、読書の習慣の大切さがあらためて重視されています。そんななか、余暇に本、特に小説(著名な文学作品に限らず、いわゆる大衆小説でも)を好んでよく読む人のコミュニケーション能力が高いという報告が。読書が人とのやりとりを円滑にしてくれるかもしれません。
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読書と言語能力の関係は?
子どもの頃は、学校など周囲から本を読むよううながされ、読書の機会をもつことも多いのではないでしょうか。大人になると自ら進んで手にとらない限り、読書の習慣からは遠ざかってしまうかもしれません。
今回、カナダの研究グループは、余暇に読書をする若い成人が減りつつあることから、大学生200人を対象に、読書の動機や読書から遠ざかる理由などを調べてみました。
さらに、米国の大学進学適性試験(SAT)で出されるような言語能力のテストと、どれくらい読書しているかを測るテスト(フィクションやノンフィクションをとり混ぜた著者名を認識できるかどうかなど)を行って、読書に関するデータと併せて分析しました。
楽しむ気持ちが大切
ここから見えてきたのは、読者する人のコミュニケーション能力が高いということ。たとえば、著者名をよく認識できている人は、あまりできない人と比べると、読書量が多く、言語能力が高いことがわかりました。さらに、読書を楽しんでいること、そして自分がよく読書すると自認するような積極性も、高い言語能力と関連していました。この関連性はノンフィクションよりもフィクションで強く見られました。逆に、他人からいわれて読書する人は一般的に言語能力が弱く、どちらかといえばノンフィクションを読んでいる傾向が見られました。
研究グループは本を読むことはとにかく幅広い効果をもたらしてくれると指摘。従来、言語能力を高めるだけでなく、共感を育んで偏見をなくすメリットなどがいわれていました。さらに、読書する人はしない人に比べて健康に長生きするとも。自分の興味や関心に沿って、ストーリーにどっぷり浸かるのが、コミュニケーション能力にもつながっていくようです。
<参考文献>
文部科学省 学校図書館
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/dokusho/meeting/08092920/1282740.htm
Picking up a book for fun positively affects verbal abilities, according to new study
https://www.concordia.ca/news/stories/2021/03/16/picking-up-a-book-for-fun-positively-affects-verbal-abilities-according-to-new-study.html?c=/news/archivee
Martin-Chang, S., Kozak, S., Levesque, K.C. et al. What’s your pleasure? exploring the predictors of leisure reading for fiction and nonfiction. Read Writ (2021).
https://doi.org/10.1007/s11145-020-10112-7
https://link.springer.com/article/10.1007/s11145-020-10112-7