人や物事の印象はどう決まるのでしょう。よい印象をもってもらい、良好な関係を築いていくのは仕事でもプライベートでも大切なことです。海外の研究から、そこにはひとつのポイントがあるようなのです。贈り物をするときや面談に臨むときなど、さまざまなシチュエーションで参考にするとよいかもしれません。
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印象に残る理由を探ると…
人の心に残るのはどういうときか。たとえば、自分にとって役立つと合理的に判断した結果として印象に残ることがあるでしょう。一方で、そうした理屈ではなく、感覚や感情的に心を動かされた結果として記憶に刻まれることもあり得ます。米国で1000人以上を対象に、このいわば「理性的」または「感性的」という2つの異なるアプローチのいずれが記憶に残りやすいのか調査したそう。すると、感覚や感情に基づく感性的なほうを選んだのは15%にとどまり、理性的なほうがよいという考えが強かったといいます。
今回、米国の研究グループはこうした結果をたしかめるために、合計2万人以上を対象に、7回の調査を行いました。1回目の調査ではクリスマスの直後に、もらったプレゼントをどう思うか意見を聞いたうえで、感想を言い当てる言葉を複数の表現の一覧から選んでもらいました。たとえば、「価値がある」とか「役に立つ」を選べば現実的で理性的な反応になります。一方で、「楽しい」とか「大好き」であれば感性的な反応と見なせます。そのうえで1か月後に同じ人がプレゼントにどういう感想を抱いているかあらためてたしかめました。
また、「さまざまな商品のブランドをどう思うか」「ネット上でのレストラン評価」など、状況を変えて、最初としばらく時間を置いてからの印象を比較する検討をしてみました。最後の調査では、ある架空の水生動物について、生物学的なデータを記述したもの(理性的)と、泳いでいる人がその動物と交流する様子を記述したもの(感性的)とを用意し、読んだ直後と時間が経ってからの反応を比較しました。
ポジティブで強い感情ほど残る
このような検証の結果から判明したのは、心に残るのは感性的な反応が見られたほうだということ。最初の反応が感情に根差し、ポジティブで強いほど、印象は後々まで(レストランの評価では、数年後にも)変わりませんでした。最後の調査では、感情に訴える記述を読んだ人たちのほうが、時間が経っても最初の反応が変わりませんでした。
この研究から考えると、たとえば、贈り物をするときに、役に立つという「理性」に働きかけるよりも、楽しい、おいしいなど「感性」に訴えるもののほうが印象に残りやすいといえるのかもしれません。一概にはいえないのでしょうが、長く人に覚えてもらう必要があるような仕事やプライベートでの状況ではこうした研究結果を参考にするのもよいかもしれません。
<参考文献>
Opinions and Attitudes Can Last When They Are Based on Emotion
https://www.psychologicalscience.org/news/releases/2021-march-opinions-attitudes-emotion.html
Rocklage MD, Luttrell A. Attitudes Based on Feelings: Fixed or Fleeting? Psychol Sci. 2021 Mar;32(3):364-380. doi: 10.1177/0956797620965532. Epub 2021 Feb 8. PMID: 33557695.
https://journals.sagepub.com/doi/10.1177/0956797620965532
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33557695/