一般的にナルシシズムは“過剰な自己愛”、つまり「私って最高!」と自己陶酔していることのようにとらえられています。でも、それは誤解で、じつは自分に自信がない不安感をカバーするために、自分は素晴らしいと誇示してしまうのが本来のナルシシズムだという報告がありました。
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過度の自己愛にも2タイプ
ナルシシズムも笑って済ませられる程度なら問題ないでしょうが、高じてくると自己愛性パーソナリティ障害と呼ばれ、自信過剰の「誇大性」と、逆に傷つきやすい「脆弱性」の2タイプがあります。一方、精神病質(サイコパシー)というナルシシズムに関連する病気も、極度に自尊心が強くて誇大的という特徴があります(サイコパシーというと、連続殺人犯のような怖いイメージが浮かびますが、それは本当に稀な例。一般的には、自信にあふれて一見魅力的なのにじつは利己的で他者に共感できないといった精神症状を指します)。
今回、ニューヨーク大学の研究グループは、これらの症状について違いや関連性を明らかにしようと試みました。そこで、自分をよく見せようとする言動でも、過大な自信ではなく不安感に根ざした自己イメージ操作なのかどうかを評価できる設問を考案し、心理学的な研究で一般的に使われているさまざまな設問(自尊心のレベルや、精神病質の傾向を調べるものなど)とともに151項目のアンケートを作成。300人近い参加者(中心年齢20歳)にコンピューターを介して回答してもらって、結果を分析しました。
4つの要素が関連
分析から、不安感に根ざして自分をよく見せようとする傾向は4つの要素(自己イメージの操作、社会的に証明してもらう必要性、自分は高尚だとする、社会的優越性)で構成されることが浮かび上がり、これらの要素が脆弱性ナルシシズムと強く関連するとわかりました。対照的に、精神病質とこれらの要素とは関連性が見られず、精神病質には不安感が含まれないと推測されました。
この結果を受けて、ナルシシズムの本質は脆弱性ナルシシズムであり、傷つきやすい自我に根ざした不安感からイメージ操作するのが特徴だと研究グループは結論。誇大性ナルシシズムは、精神病質のひとつの現れと考えるほうがよいかもしれないと指摘しています。
<参考文献>
Narcissism Driven by Insecurity, Not Grandiose Sense of Self, New Psychology Research Shows
https://www.nyu.edu/about/news-publications/news/2021/march/narcissism-driven-by-insecurity–not-grandiose-sense-of-self–ne.html
Mary Kowalchyk, Helena Palmieri, Elena Conte, Pascal Wallisch,Narcissism through the lens of performative self-elevation,Personality and Individual Differences,Volume 177,2021,110780,ISSN 0191-8869,https://doi.org/10.1016/j.paid.2021.110780.
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0191886921001550?via%3Dihub