コンテンツの新しい形として、“音声コンテンツ”が存在感を増しています。2021年に話題をさらった「Clubhouse」をはじめとする音声SNSのほか、AppleやSpotifyが提供するポッドキャスト、オーディオブックなどさまざまなサービスが登場。そしておなじみのラジオも、インターネット配信によって魅力が見直されつつあります。このコンテンツを耳で消費する傾向について、ITライターでスマホ安全アドバイザーとして活躍する鈴木朋子さんに解説していただきます。
Contents 目次
「目は忙しいが耳はまだ空いている」
昨年、2021年に注目されたネットサービスといえば、音声SNS「Clubhouse」がそのひとつに挙がるでしょう。「音声だけで交流する」という方法が新鮮に受け止められ、招待を求める人が殺到、一時期は招待枠がフリマアプリで売られるほどでした。
なぜClubhouseがここまで注目されたのでしょうか? 既存のSNSに新鮮味が薄れたことや、招待制(当時)による相乗効果などもありますが、「音声」に絞ったことが大きかったのだと思います。
以前から、ネットサービスを手掛ける人たちにより「目は忙しいが耳はまだ空いている」と言われていました。映像や画像、テキストなど、「見る」コンテンツはあふれています。一方、「聞く」コンテンツは常時聞いているほどではなく、まだ余力があると考えられていたのです。
音声コンテンツの魅力は、スマホがあればいつでも楽しめること。今はワイヤレスイヤホンやBluetoothスピーカーなど、スマホで音声を聞く環境が整っている人も多いでしょう。電車で移動しているときや、何か手作業をしているときでも、「ながら聞き」ができることも人気の理由です。
2021年初に巻き起こったClubhouseの爆発的な流行により、従来からあった音声コンテンツの魅力に、多くの人が気づきました。そして、新たなサービスも立ち上がり、今、音声コンテンツ業界全体が盛り上がっているのです。
音声コンテンツにはさまざまな種類がある
音声コンテンツといっても、ClubhouseのようなSNSから、定番のラジオまでさまざまな種類があります。現在はどのような音声コンテンツがあるのか、紹介していきましょう。
音声SNS
音声で交流するサービス。誰でも配信者になることができる気軽さが魅力です。Clubhouseは音声専用ですが、Twitterは機能のひとつとして、音声チャット機能「スペース」をリリースしています。スペースはTwitterのアカウントがあれば聞くことができ、スペースが開かれるとアプリの上部に表示されます。既存のSNSが音声機能を付けると、配信者はすでに繋がっているファンをイベントに集めやすいメリットがあります。そこでFacebookも音声機能「Live Audio Rooms」をアメリカでスタートしています。日本での開始が待たれます。
インターネットラジオ
インターネットラジオ「radiko」や「NHKラジオ らじるらじる 」など、ウェブサイトやアプリを通じてラジオ局が配信している番組を聞きます。聞き逃してしまった番組を後から再生できるほか、現在いる場所では聞けない放送局の番組も聞くことができます。
ポッドキャスト(Podcast)
ポッドキャストは、音声で楽しめる番組。ラジオのように、配信者が作った番組を視聴します。ラジオとの違いは、配信されているコンテンツを選んで、好きな時間に再生するところ。ラジオ番組が過去の番組をポッドキャストで配信しているケースもあります。
ポッドキャストのサービス自体がオリジナル番組を配信していることもありますが、基本的にはポッドキャストアプリで世界中に配信されている番組を聞くのが一般的。「Apple Podcast」「Google ポッドキャスト」「Spotify」「Amazon Music」などがあるので、使いやすさで選ぶといいでしょう。
音声配信サービス
音声コンテンツを配信しているサービスです。ポッドキャストと似ていますが、独自のコンテンツを配信している点が異なります。認証を受けた人だけが配信できる「Voicy」や「NowVoice」「ZATSUDAN」などのサービスと、誰でも配信できる「Radiotalk」や「Spoon」などのサービスがあります。
前者は芸能人やスポーツ選手などの有名人が多く、ビジネスや自己啓発など学びに繋がるコンテンツが多く配信されています。主に有料会員に登録して視聴します。後者は無料でも楽しめる気軽な配信が多く、生放送での配信も行われています。
オーディオブック
プロのナレーターや声優が本を朗読して配信するサービスです。「audiobook.jp」や「Amazonオーディオブック – オーディブル」などがあります。月額で支払うか、1冊ごとに支払うかは、サービスによって異なります。
生活スタイルや聞きたいジャンルで選択
音声コンテンツには有料と無料があり、誰でも配信できるサービスと有名人が配信するサービスなどの違いがあることがおわかりいただけたかと思います。では、「音声コンテンツを楽しんでみたい」と思ったとき、何を基準に選べばいいでしょうか?
推しの有名人がいるなら?
まず、好きな有名人がいる人は、その人のSNSをフォローしておくことがおすすめです。Twitterのスペースが突然開始されるかもしれませんし、Clubhouse開催の通知も受け取れます。SNSの音声サービスは投げ銭やサブスクなどの課金機能を今後拡充していくので、“推し活”もできますね。
また、音声コンテンツを配信している有名人も多くいます。各サービスで検索してみましょう。人によっては、無料コンテンツ、有料コンテンツ、月額制など、複数の方式で配信していることもあります。
語学学習や無料聴取には?
「英語を勉強したい」「無料で楽しみたい」という場合は、ポッドキャストがおすすめです。世界中の番組を無料で聴くことができます。アプリの選択は自分が普段使っているなど使い勝手が良いと感じるアプリ、またはオリジナルコンテンツが配信されているアプリで選ぶといいですね。音声コンテンツサービスでも、一部の新聞社はニュースを無料で配信しています。配信時間に1日分のニュースを耳でチェックすると効率が良さそうです。
あらためてラジオを聴きたいなら?
ラジオを生活に取り入れたいなら、「radiko」がおすすめ。音声コンテンツの老舗とも言えるラジオは、楽しい帯番組がたくさんあります。毎朝のルーティンにすれば、目を使うテレビよりも朝の準備がはかどるでしょう。
本を読みたいけど時間がないなら?
本を読む時間が取れない人は、オーディオブックを。読んだことがない本を通勤時間に聞くこともできます。再生スピードを調整できる場合もあるので、すばやく勉強したい人にもおすすめです。
自分でも配信したいと思ったら?
そして、自分も音声コンテンツを配信したいと思ったら、気軽にチャレンジできる無料配信サービスがいいですね。投げ銭方式でお小遣い稼ぎができるかもしれません。
今後、音声コンテンツサービスはますますコンテンツが増え、盛り上がっていきそうです。「耳」で楽しむ生活、一度試してみませんか?
Profile
ITジャーナリスト・スマホ安全アドバイザー / 鈴木朋子
SNSなどスマートフォンを主軸にした身近なITに関する記事を執筆している。初心者がつまずきやすいポイントをやさしく解説することに定評があり、入門書の著作は20冊を越える。安全なIT活用をサポートする「スマホ安全アドバイザー」としても活動中。著作は『親が知らない子どものスマホ』(日経BP)、『親子で学ぶ スマホとネットを安心に使う本』(技術評論社)など多数。
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