誰もが抱く「幸せになりたい」という想い。これは古代から私たちが求めてきた永遠のテーマです。「幸せ」といっても一瞬の幸福ではなく、持続的な満足感のある生き方(=ウェルビーイング)のこと。心理学的には、幸せになるためにはいくつかの法則があるとされます。今回は、ウェルビーイング・コンサルタントの杉村貴子さんの著書『たとえ明日終わったとしても「やり残したことはない」と思える人生にする』からお伝えしていきます。
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幸せのための「4L理論」
「幸せに欠かせない要素」として、あなたはどのようなことを思い浮かべますか? 全米キャリア発達学会の元会長のサニー・ハンセン博士は、幸せに欠かせない具体的な要素を「4L理論」として示しました。それらはLの頭文字ではじまる次の4つです。
◇ Labor (仕事) : 本業、副業・複業問わず収入を得る活動、家事や社会貢献など
◇ Love (愛):家族やパートナー、恋人、仲間、ペットなどの大切な存在と一緒に過ごすための時間
◇ Leisure (余暇): 趣味、スポーツ、休養、地域活動など
◇ Learning (学び、自己成長):読書、オンライン教育、セミナー参加などで学んだり、ほかの3つを受けて自己成長している実感
「わたしたちは多くの時間を仕事に費やし、仕事を中心に生活しています。米国でも、かつては“キャリア=仕事”といった考え方が主流でした。しかし、ハンセン博士はキャリアを人生そのものととらえ、“4つのL”のバランスこそが幸せな人生に欠かせないと考えました。“4つのL”は、どれかひとつが欠けても、自分が思い描く幸せな人生を築くことはできません」(杉村さん)
「仕事」にやりがいを見出し、人生の多くの時間を楽しむこと。そして、仕事だけでなく、家族や友人たちと過ごす時間や、趣味を楽しむ時間をもつこと、そうした「愛」がなければ、人生は味気ないものに感じるはずです。「余暇」は、体力の回復はもちろん、心身のエネルギーとなり、人生に彩りを与えてくれます。「余暇」を軽んじたり、ないがしろにしたりすると 確実に人生のバランスを崩してしまうでしょう。
最後のL(Learning)は、「人生100年時代」といわれる現代で大事な要素になってきます。何歳になっても「学び、自分は成長できている」と実感できることは、生きるうえでの根源的な喜びになるのです。
「4つのL」はシナジー効果を生み出す
「4つのL」のバランスをとりながら、自分らしく組み合わせていきましょう。そうすることで相乗効果も大きくなっていきます。
「わたしはセミナーや講演で4つのLを説明する際に、『四つ葉のクローバー』で表現しています。4枚の葉は根元の部分でつながっているように、4つのLもそれぞれが関わり合い、シナジー(相乗効果)を生み出しています。太陽の光や水を与えられたシロツメクサ(クローバー)が白い花を咲かせるように、4枚の葉を育てながら、花を咲かせていく。そうすることで、悔いのない、自分らしい人生を送ることができるのです」
社会人は仕事中心のライフスタイルになりがちで、「趣味は仕事」という人も珍しくありません。しかし、仕事がなくなったときに何が残るでしょうか。
「現代は、定年を迎えたあとの人生についても想いを巡らせながら生きていくことが大切な時代になりました。『定年後』(中央公論新社)の著者で人事・キャリアコンサルタントの楠木新さんによると、定年後、自由な時間は約8万時間あるそうです。しかも、この8万時間というのは、20代から60代までに働いてきた時間よりも長いともいわれています。もし仕事以外の自分が想像できないとしたら、ここで4つのLのバランスについて、あらためて考えてみたほうがいいでしょう」
たとえ仕事が面白いからといっても、仕事に没頭し過ぎて、常にオン状態で走り続けていると、心身の健康に支障をきたす可能性もあります。過度なストレスは精神的健康にも肉体的健康にも悪影響をもたらします。そして余暇の時間を大切にする人ほどポジティブで幸せを感じやすいということもわかっています。
この仕事、家族や友人の存在、余暇、学び・自己成長の「4つのL」で人生のポートフォリオを組んでみましょう。そのバランスを最適にすることで自分らしい幸せを手に入れることにつながります。
次回は「4つのL」を充実させるために必要な5つの要素をご紹介していきます。
文/庄司真紀
参考書籍/
『たとえ明日終わったとしても「やり残したことはない」と思える人生にする』(日本実業出版社)
著:杉村 貴子
すぎむら・たかこ Well-being Academia代表兼ウェルビーイング・コンサルタント。青山学院大学経済学部卒業。1998年にジャパンビジネスラボ/我究館(日本初のキャリアデザインスクール)の創業者・杉村太郎と結婚。2000年に夫のハーバード大学ケネディスクール留学を機に渡米。帰国後、証券アナリスト(CMA)としてBS朝日のニュースキャスターを務める。夫の闘病を機に、大和総研に入社。杉村太郎没後、2014年よりジャパンビジネスラボの代表取締役に就任。2017年に自分らしい生き方を支援するスクール「ワーク・ライフデザイン」を設立。2019年にWell-being Academiaを起ち上げる。一男一女のワーキングシングルマザー。