とどまるところを知らない物価上昇、なかなか上がらない給料が家計を圧迫しています。このままでは将来が不安…という人も少なくないでしょう。年々厳しくなる経済状況の中で資産を増やすには、じつは貯金だけでは不十分です。そこで、物価上昇に負けないお金の増やし方について、人気マネーセミナー講師の森本貴子さんに教えていただきました。
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物価が上がり、お金の価値が下がる「インフレ」とは?
みなさんの中には、節約をして毎月貯金をしている人も多いと思います。しかし、今の日本では「せっかく貯めたお金の価値が下がってしまう」という現象が起きています。このことを理解しておかないと、なかなか資産は増えていかないのです。なぜでしょうか?
近年、さまざまなものが値上げされています。今のように物価が上がることを「インフレ」と言いますが、じつは、インフレには「よいインフレ」と「悪いインフレ」があります。
よいインフレは、経済成長や賃金上昇にともなって物価が上昇します。かつての高度経済成長期のインフレ率は約4.5%でしたが、その分、日本経済全体が成長し、給料もどんどん上がっていたので、生活は豊かでした。
一方、悪いインフレは、物流や原材料などのコストが上がり続けて物価が上がっているにもかかわらず、経済成長や賃金の上昇がともなわない状態を言います。賃金の上昇額が物価上昇のペースを下回れば、どんどん生活は苦しくなっていきます。
今の物価上昇が悪いインフレになってしまうかどうかは、長い目で見ないとわかりませんが、実際これまで100円で買えたものが、120円や130円を出さないと手に入らなくなってしまっているのですから、「お金の価値が下がっている」といえます。
放っておくと100万円の貯金が55万円に!?
さらに、近年は円安が進んでいます。ドルが買われて、日本円が売られるということは、日本円の価値が下がることを意味するので、海外から輸入するときのコストが上がってしまいます。今、海外に行くと、現地の物価が高くて、日本円の価値が下がっていることを実感するはずです。
現在の状況が続くと、貯金の価値も下がる結果になります。たとえば、貯金が100万円あるとします。仮にインフレが年2%のペースで続いた場合、100万円の価値は年々下がっていき、10年後には、現在の100万円は82万円相当まで目減りすることになります。20年後には67万円相当、30年後にはなんと55万円相当まで下がります。貯金をしたまま放っておいたら、大事な資産が減ってしまうのです。
このような事態に対抗する方法があります。それは、インフレや円安に負けないような資産形成をすること。具体的には、投資をしてお金を増やすのです。
投資は怖い!?
投資と聞くと、「怖い」という印象をもつ人もいると思います。投資なので、もちろん「元本割れ」するリスクもあります。でも、リスクをきちんと管理すれば、それほどナーバスになる必要はありません。ポイントは、「長期」にわたって、投資先を「分散」して、「積み立て」をすること。
たとえば、手元にある100万円で、ある企業の株式を購入したとします。株価は日々変動するので、1か月後には、80万円に値下がりしている可能性もあります。「短期」で投資先を「集中」して「一括購入」することは、ある意味ギャンブルになってしまいます。
そこで、私がおすすめしているのは、投資信託で毎月コツコツと積み立てをすることです。投資信託とは、たくさんの投資家から集めた資金を、ファンドマネジャーと呼ばれる投資のプロが株式や債券などで運用する商品です。値動きがあるので、元本よりも少なくなる可能性もありますが、複数の株式や債券などに「分散」して投資するので、比較的リスクが低いといえます。
成功するコツは「時間」を味方につけること
投資で成功する秘訣は、時間を味方にすることです。運用期間が長くなればなるほど、リスクは小さくなります。実際、5年運用した場合と20年運用した場合とでは、後者のほうが運用成績は安定する、というデータもあります。長期にわたって定額の積立投資を続ければ、インフレに負けることなく、資産を増やすことも可能です。
投資に抵抗がある人は、これまで貯金していた金額の一部だけでも積立投資にまわしてみてはいかがでしょうか。今は100円から投資ができる時代です。まずはお試し感覚で体験してみると、投資に対する印象が変わるかもしれませんよ。
参考書籍:『新NISA+iDeCo+ふるさと納税のはじめ方』(ワン・パブリッシング)