「よく学び、よく遊べ」は子どもに限りません。どうやら大人も仕事ばかりで遊びがないとまずいようです。自分の楽しみや自由、創造性を差し置いてまで社会的な成功や野心を優先させても幸福な人生にはならない─。そんな報告が海外研究からありました。さらに、幸福で満足しているほうが成功や自主性を実現できるという関係も見られるといいます。
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仕事の成功のインパクトとは?
私たち一人ひとりには自分だけの大切な価値観があります。これは、個人の自由や楽しみ、仕事での成功など、人生で重視するものです。これらは私たちの行動や考え方の土台となっています。
しかし、これらの価値観が個人にとってどれだけ大切かということは、その人がどれだけ幸福を感じるか(ウェルビーイング)とは直接的に関係はないようです。重要なのは自分の価値観に沿って行動すること。そうすることで幸福につながると、研究で示されています。
そこで、今回、英国、トルコ、インドの国際的な研究グループが協力して、行動や感情が幸福感にどう影響するかを調べました。具体的には、人々が肯定的な感情や否定的な感情をもつこと、自分の価値観に基づいて行動することと幸福感との関係性について分析。価値観の種類や個々の人にとっての重要性、さらに住んでいる国による違いも考慮しました。
研究としては英国、トルコ、インドの3か国から合計184人の参加者を集め、9日間にわたり毎日、その日の人生の満足度や幸福感、自分の価値観にどの程度従えたかなどを詳細ンに質問するアンケートに回答してもらいました。価値観は「自律」(自由や自主性)、「達成」(社会的成功や目標達成)、「快楽」(個人的な楽しみや感覚的満足)といった、社会心理学で一般的に使われる分類に基づいて分類しました。
個人的な楽しみや自由を優先して幸福度アップ
こうして研究で確認されたのが、個人的な楽しみや自由よりも仕事での成功を優先させると、よりよい人生にはならないことです。
価値観のなかでも「自律」を目指した人は幸福感が13%増加し、睡眠の質と人生の満足度がよくなりましたし、「快楽」を目指した人は幸福感が平均して8%上がり、ストレスと不安が10%低下しましたが、「達成」を目指しても幸福感は増加しませんでした。
どの国でも「自律」と「快楽」という価値観に従うと幸福感の増加につながり、「達成」や「同調」(自己規制や服従)の価値観は幸福感にはなんの影響もありませんでした。ただ、仕事の満足や就業日数などに関連した「達成」であれば、幸福感に影響するのではないかと研究グループは考察しています。
私たちの多くはお金を稼ぐためや学校・仕事などのために日々を過ごしています。これらは「達成」という価値観に重点を置いた時間の使い方です。しかし研究グループは私たちが心身を回復しバランスをとるためには、趣味や自由、創造性など個人的な楽しみなどに時間を割くことが大事だと指摘しています。不安やストレスを減らすことは大切ですが、幸福感を高めることに焦点を当てるほうがもっと重要かもしれないともいいます。
<参考文献>
Hanel PHP, Tunç H, Bhasin D, Litzellachner LF, Maio GR. Value fulfillment and well-being: Clarifying directions over time. J Pers. 2023 Jul 27. doi: 10.1111/jopy.12869. Epub ahead of print. PMID: 37501351.
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/jopy.12869
All work and no play makes a dull life- research has revealed
https://www.essex.ac.uk/news/2023/09/14/all-work-and-no-play