最新の心理学研究によると、幸福感を決める3大因子は「遺伝による設定値が50%、環境が10%、意図的な行動が40%」。これは、大半の人が幸福を作り出すと思っている富や成功などの環境要因は、短期間の幸せを生むだけで、じつはあまり重要ではないということを示しています。それでは女性にとって身近な「美しさ」はどうでしょうか。今回はソニア・リュボミアスキー博士の『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣』から見ていきます。
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「美しさ」と「幸福」の関係
ボトックス注射やシワとり、豊胸手術、まぶたや鼻の整形、脂肪吸引…と世界中の人が自分の外見を作り替えようとしています。それは美しさが幸せの因子だと多くの人が信じて疑わないからでしょう。
米国美容外科学会議の報告では、ほとんどの人が「手術後の外見に満足した」と報告しています。しかし、その満足感は長続きせず、幸福はほんの短い期間だけということもわかっています。
「キレイな人たちが自分の外見に満足しているかと尋ねられれば、『もちろんです』と答えるでしょう。でも、幸福かと尋ねられれば、じつは外見がその判断に与える影響はあったとしても、わずかなのです」(ソニア・リュボミアスキー博士)
外見的な美しさが本当の幸せとは関係ないとしたら、それは多くの女性にとって信じがたいことのはず。
しかし、「美しさと幸福感とは無関係である」ということは、こうした整形だけではなく、もともと美しい人にも同じようにいうことができるのです。
外見をポジティブにとらえることで幸せに
幸福な人は客観的に見た場合もより魅力的なのでしょうか?
ある心理学の実験では、大学生を「幸福な大学生のボランティア」と「不幸な大学生のボランティア」に分け、彼らの写真とビデオを撮影。それを判定する人々に見せて、外見的な魅力に点数をつけてもらいました。被験者は女性の場合、ノーメイクの状態で髪をすべて隠すために白いシャワーキャップをかぶり、白衣を着せられました。
「その結果は、美しさと幸福は直接、関連性がないということを示していました。幸福な被験者は自分が魅力的だと信じがちでしたが、客観的な判定によると、幸福でないと思っている仲間よりも容姿がいいとはみなされなかったのです」
つまり先述したように、整形などで客観的に見てより美しくなっても、以前と比べてより幸福にならない場合も。ただし、「自分で自分が美しいと思い込むことは、幸福感が増す要素のひとつになるかもしれない」と考えることはできるそう。研究によれば、幸福な人は外見も含めて、人生に関するすべてをよりポジティブに、より楽観的に見る傾向がある」といいます。
美しくなれば幸せになれると考えるのは誤り。また美しい人は幸せだというのも疑ってみる必要があります。幸せと美しさは別物。ポジティブな価値観が幸せのもととなっていくようです。
文/庄司真紀
参考書籍/
『新装版 幸せがずっと続く12の行動習慣』(日本実業出版社)
著者/ソニア・リュボミアスキー
米国カリフォルニア大学リバーサイド校の心理学教授。社会心理学とポジティブ心理学のコースで教鞭をとっている。ロシア生まれ、アメリカ育ち。ハーバード大学を最優等位で卒業し、スタンフォード大学で社会心理学の博士号を取得。米国国立精神衛生研究所から数年にわたって助成金を受けて、感謝・やさしさ・つながりの介入プログラムを通じて持続的に幸福感を高める可能性に関する研究を進め、多くの研究奨励賞や表彰を受ける。その主なものに、バーゼル大学名誉博士号、ディーナー賞、クリストファー・J・ピーターソン金賞、テンプルトン・ポジティブ心理学賞がある。
訳/金井真弓
かない・まゆみ 翻訳家。『わたしの体に呪いをかけるな』(双葉社)、『欲望の錬金術』(東洋経済新報社)、『#MeToo時代の新しい働き方 女性がオフィスで輝くための12カ条』(文藝春秋)、『人生を「幸せ」に変える10の科学的な方法』(日本実業出版社)など訳書多数。