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ジェーン・スーさんに聞く、50代からの家族とのちょうどいい距離感

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ジェーン・スーさんに聞く、50代からの家族とのちょうどいい距離感

50代になると親も高齢になり、生活のサポートが必要になったり、介護問題に直面する機会が増えてきます。一方で、子育てが一段落し、改めて自分の時間の使い方を見直す人も。人生の新たな局面を迎え、身近な人間関係に変化が訪れる中、戸惑いや不安を感じて心が揺らぐことがあります。そこで今回は、「家族やパートナーとの関係」をテーマに、日々のモヤモヤを晴らすヒントを、コラムニストのジェーン・スーさんに教えてもらいました。

監修 : ジェーン・ スー (コラムニスト)

1973年、東京生まれ。コラムニスト、ラジオパーソナリティ。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、Podcast番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」、「となりの雑談」のMCを務める。『介護未満の父に起きたこと』(新潮新書)など著書多数。

Contents 目次

親の介護では“罪悪感”が標準装備

50代は親の介護が本格化する年代でもあります。ジェーン・スーさんの著書『介護未満の父に起きたこと』では、現在87歳のお父さまの5年間のケアの様子が臨場感たっぷりに描かれ、さらにケアに役立つ具体的な情報が綴られています。親の介護と自分の人生、その狭間で揺れ動く気持ちに、スーさんはどのように向き合っているのでしょう。

優先するのは自分の人生一択。そこに罪悪感が標準装備です。ただ、そう思えるようになったのは、父とぶつかったり、こちらの思いをなかなかわかってもらえなかったり、わがままばかり言われて悲しかったり。そういうことをくり返して辿り着いた結果です。自分の人生と罪悪感を天秤にかけたとき、自分の人生を優先すると、親への罪悪感がどんどん重くなります。でも、親が去ったあとも自分の人生は続いていくので、できるだけ介護離職をしないということも含め、自分の人生を優先することを中心に考えながら、介護に向き合うのがいいと思います」

「それが、なかなか難しい…」という声が聞こえてきそうですが、スーさんは続けます。

「介護は一筋縄ではいかないものです。すごく疲れるし、イライラするし、削られるし、打ちのめされる。それに、父の幸せを考えているようで、実は私が安心したいだけ、ということもあります。だから、父が『大丈夫』と言うなら、父を尊重し、私が先回りをして何かを防ぐようなことは、もうしていないです。父と私は別人格です。親であっても、自他との境界線を引くことが、すごく大切だと思っています

現在、スーさんはお父さまとは同居せず、外部サービスを活用しながらサポートを続けています。食事は「Uber Eats」をじょうずに利用し、最近ではAmazonのデバイス「Echo Show」を使ったスマート介護もとり入れ、効果的に遠隔ケアを行なっています。
「『Uber Eats』は自分で使っていて、父の食事に使えるなと思いました。『Echo Show』は、テクニカルライターの和田亜希子さんが、ひとり暮らしのお母さまを見守るために活用しているという記事を見つけて、父のケアにとり入れました。タクシーアプリ『GO』も遠隔ケアに便利で、父を迎えに行けないときなどは、事前予約や乗車場所の詳細指定をして利用しています。こうしたツールを活用すると、父との確認作業を減らすことができるメリットがあります。『あれはどうなった?』『これはどうなっている?』と確認し合うことで、お互いにイライラして喧嘩になることもあるので、それを回避できる点で有効です。不安やモヤモヤは、漠然としていたり曖昧なところに感じやすいので、親のサポートでも正確な情報を調べることは、とても大切だと思います」

50歳からは自分が向いていることに時間を使う

これまで夫や子どもを優先し、自分のやりたいことはあと回しにしてきたけれど、そろそろ自分優先にしたいという気持ちが湧き上がってきた人もいるのではないでしょうか。でも、家族への遠慮があり、どう切り出せばいいか悩んだり、すでに自分の時間を謳歌している人を見て、心がジリジリと焼かれるように感じることも。

そもそも許可制ではないので、好きにすればいいと思います。ただ、好きにできないことを悩んだり、自分の時間を楽しんでいる人を見て焦りを感じたり、シクシクしてしまう人もいるかもしれません。でも、自分ができないことを朗らかにやっている人を見て悩んだり、落ち込む必要はまったくないと思うんです。それは、自分に向いていないことだから、やらないほうがいいし、実はそんなに悩んでいないのでは、とも思います。やらない理由を挙げているだけで、本当は面倒とか、今の状態が案外ラクとか、そういうことではないでしょうか」

また、これからの人生のパートナーとして、友だちとの繋がりを再構築しようと考えている人もいるかもしれません。

「まず、自分の将来の保険に、友だちを使うなって言いたいです。自分が年をとったときに、寂しくなるかもしれないという理由で、そんなに好きでもないけどコミュニケーションをとっておこうと思うのは時間のムダだと思います。そうではなく、ちゃんと自分の時間と労力を使いたいと思う人と友だちでいる。そういう友だちを作ることのほうが大事ではないでしょうか。ただ、これまで友だちの必要性を感じず、ひとりでいた人が50歳を過ぎて『この先、友だちがいたほうがいいかも』と思っても、それは無理でしょう。これまでそうしてこなかったということは、友だちを作るのは向いていないことだと思います」

自分に“向いていること、向いていないこと”に気づいていない人も、実は少なくないように感じます。目の前のことに一生懸命とり組むあまり、無意識のうちに“向いていないこと”に果敢にチャレンジしてしまうこともありそうです。

後ろ向きになる要素があったり、ネガティブな感情になるものは、大体、自分に向いていないことです。たとえば私は、あまり親しくない人と、お互いを主張しない当たり障りのない会話を1時間続けるとか、絶対にできないんです。できないことは、自分には向いていない、というだけ。それに対して悩むことはありません。自分に向いていないことに憧れを持ったり、罪悪感を持つのは、本当にやめたほうがいい。これまでの自分を振り返り、向いていないことに気づいたら、そこに執着せず、自分が向いていることに時間を使ったほうが、50代以降は健全だと思いますよ」

では、スーさんがものごとをシフトチェンジしたり、軌道修正をするのは、どんなときでしょう?
「軌道修正するのは、100%の力で真剣に向き合えなくなったときですね。相手にも失礼になるので、そのときがきたらやめます」

家族や友だちとの関係についてのスーさんの考え方、いかがでしたか? 「なるほど!」と納得できたり、痛いところを突かれて胸がキュッとなった人もいるかもしれません。お話を伺いながら、スーさんは気持ちと行動が一致しているように感じました。それが、安定したマインドを保つ秘訣と言えるのかもしれません。最終回となる次回は「健康」をテーマにお話を伺います。

 

撮影/田辺エリ ヘア&メイク/藤原リカ スタイリスト/宮崎真純 取材・文/野口美奈子

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■お問い合わせ先
・LE PHIL NEWoMan 新宿店
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