チームリーダー、主任など、この春から部下を持つことなった人もいることでしょう。初めてのリーダーという立場に戸惑いもあるかもしれません。『イラスト&図解 コミュケーション大百科』(かんき出版)等の著書がある研修講師の戸田久実さんに、部下と信頼関係を築くためのリーダーの心得について伺いました。
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部下に「それって常識でしょ?」は通用しない
部下や後輩から一番嫌がられる言葉は何か、わかりますか? 「私たちの時代はこうだった」という言葉です。思わず言っていませんか?
「世代によって価値観は異なります。そこで、『当たり前でしょ?』『常識でしょ?』という言葉が浮かんだら、要注意。自分の常識と相手の常識は同じではありません。当り前、常識で片づけてしまうのは、『言わなくてもわかるでしょ』という思いがあるからです。
しかし、世代が違えば、常識も当たり前も異なり、言わなければわからないこともあります。なぜそれをしなければならないのか、“なぜ”に含まれる背景、事情、理由をきちんと説明することが必要です。
コミュニケーションのゴールは、どちらが正しいか、正しくないか、けりをつけることではありません。自分と相手の価値観の溝を埋めながら、会社としてのゴールを示してあげるのがリーダーの役目です」(戸田さん)
部下がミスをしたときの対処法
部下がミスをする場面にも、遭遇することもあるでしょう。ここでも、「常識でしょ?」「当たり前でしょ?」と持ち出すのはNGです。
たとえば、資料の提出期限を守れなかったとします。
「どうして提出期限を守れなかったの? 約束を守るのは、社会人として常識だよね?」
これはアウトです。
「言われたほうは、提出期限よりも“社会人として常識がない”と言われたほうが記憶に残ってしまうからです。ミスを叱責すると、“怒られるから気をつける”という発想になりがちで、自発的な行動になかなか結びつきません。
この場合、提出期限を守られなければ、その結果、どうなるかを想像させ、自分は何のために叱っているのかを理解してもらうことが大事です。資料が遅れたことで、プロジェクト全体の進行に影響が出て、クライアントの信用を失い、結果的に、クライアントを失うことにもなりかねない、というリスクについて説明するのです」(戸田さん)
部下に腹落ちして動いてもらうために、リーダーになった機会に、当たり前、常識と思っていることを言語化してみるといいかもしれませんね。
部下との信頼関係が生まれる用例集
部下との信頼関係が築けるフレーズ集を紹介します。
■トラブル発生! そんなときこそあわてずに
○「思ったことから話してみればいいよ」
○「話すのは、ゆっくり落ち着いてからでいいよ」
「人前で話しにくそうな場合は、会議室など静かなところに場を移すのも有効。あいづち、うなずきはゆっくり、相手の話がひと区切りつくまで、言葉をはさまないようにするのも大切です」(戸田さん)
■落ち込んでいるときは、励まさなくてもいい
×「元気出して」
○「何かあった? 様子がいつも違うから気になって。話すことでラクになるなら、私でよかったら聞くからね」
「状況はわからないときには、心に踏み込みすぎず、『何かあったら声をかけて』というスタンスでいるようにしましょう」(戸田さん)
相手の話に耳を傾けることが信頼関係の構築につながります。
参考:『イラスト&図解 コミュケーション大百科』(かんき出版)戸田久実著
取材・文/海老根祐子