日本は働き過ぎといわれてきましたが、最近ではもっとフレキシブルに働き方を変えていこうという考え方が強まってきています。働き過ぎは精神的に負担ですが、逆に仕事がなくてもストレスになり得ます。では、健康面から見ると、どれくらい働くとよいのでしょう。そのあたりはよくわかっていないようでしたが、このたび、おおむね1週間に8時間働くと、幸福感や精神的な健康が得られるという研究結果が報告されました。
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仕事がなくなっても困る
AI(人工知能)などが話題ですが、テクノロジーの急速な発達で人間が行う仕事が減るなどといわれます。働き過ぎは避けたいですが、仕事がなくなっていくのも不安をかき立てられるもの。過去の研究から、職がないとさまざまな面で悪影響があって、精神的な健康にもよくないということがわかっています。
最近は、ワークシェアを行って、みんなが少しずつ働く道を模索する動きも出てきています。なお、世界中の多くの国では、フルタイムの労働時間はふつう、週に40時間(月~金の勤務であれば1日8時間)です。なお、ベルギーの38時間、ノルウェーの37.5時間など、もっと短い国もあります。
では、毎週の労働時間を短くしていったとき、どれくらいの時間まで減らすと、いちばんハッピーなのでしょう。
ニュージーランドのある会社は、2018年に週4日32時間を試して、結果がよかったため、ずっとこの体制にしようかと検討中といいます。
ただ、一方で、健康と幸福のためにはそもそもどれくらいの仕事が必要なのかはよくわかっていません。
この問題を解いていくため、英国ケンブリッジ大学が立ち上げた大規模な研究プロジェクトの一貫として今回、同大学などの研究グループは、毎週の労働時間が何時間であれば、従業員の精神的な健康にとっていちばんよいのか、また仕事で得られる幸福感や精神的な健康を確保するには、週に最低何時間働けばよいのかについて調べました。
分析したのは、4万世帯を対象にしている世界最大規模の追跡調査。2009〜2018年の7万1000人以上のデータを分析しました。
労働時間の短縮にメリット
わかったのは、まず働いたほうが、精神的に健康になることと、幸福感を得られるということです。週に1〜8時間というわずかな労働時間でもよいのです。
ただ、8時間を超えてくると、状態がさらによくなることはありませんでした。
こうした結果から研究グループは、週に1日だけ働けるようにすることで、みんなが精神的に健康を保てて、幸福感も持つことができると指摘。仕事があるかないかが大きいと説明しています。
研究グループは、「今回の発見は、将来仕事が減ったときに、人々が必要とする最小限の仕事量について考えるための重要な一歩」と解説。ちょっとだけ働ければよいという人は、週1くらい働くのがちょうどいいのかもしれません。もっとも働く環境が悪かったりすると、こうした結果とは違ってくる可能性もあるようで、そのあたりは気をつけるとよさそうです。
<参考文献>
Soc Sci Med. 2019 Jun 10:112353. doi: 10.1016/j.socscimed.2019.06.006. [Epub ahead of print] https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31227212
文/星良孝