近年、メンタルで体調を悪くする人が増えています。そんなときに周囲の人間が病んだ人について偏見をもって見てしまうことも少なくありません。本当は解決されるのが望ましくても、なかなか進んでいないのが実情のようで、米国ハーバード大学の専門家は、もっと当たり前のこととして考えるべきと提言。こうした発想を持つのは日本でももっと大切になってくるかもしれません。
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メンタルの問題はますます身近に
厚生労働省の「患者調査」によると、日本の精神疾患を患っている人は増加傾向にあり、2017年は419万3000人となっています。このうち最も多いのは、うつ病などの気分障害で127万6000人。日本の人口のうちおよそ100人に1人の計算となり、メンタルヘルスはますます身近な問題になっています。
このたび米国ハーバード大学は、学内で開催された専門家による議論を紹介。メンタルヘルスの問題が、さまざまな背景を持つ人を受け入れる「ダイバーシティー」の問題と見なされるという考え方を示しました。特に今回は職場の問題として議論が進められ、どのような対策をすべきかがテーマに。「メンタルヘルスを患う人を偏見の目で見るのではなく、職場の中で大きな問題としてとらえて、もっと活発に議論していくべき」との提言がありました。
ダイバーシティーの問題のひとつとして
今回の議論のポイントは、メンタルヘルスは誰にでも起こり得ることだが、ダイバーシティーの問題のなかでも「目に見えづらい状態にある」として、そこに手を打つべきだという点。報告によると、米国国内でもメンタルヘルスは身近で、米国精神医学会の発表では成人のほぼ7割がストレスや不安などの何らかの症状を抱えている状況です。一方で、多くの人がメンタルヘルスの問題で体調を崩していても、おもてにしづらいと指摘。「精神を病んでいると知られると、仕事の能力を低く見られるのではないか」といった不安があるためにためらってしまうといいます。
今回の議論では、「メンタルヘルスの問題を、体のほかの傷病と同じように、偏見とは切り離して扱うようにすべき」と強調。ケガをして休んだ人に偏見を持たないように、心を病んだ人も偏見にさらされるべきではないとし、「メンタルヘルスの問題を抱えた人のための逃げ場を用意すべき」と説明しています。
さらに、会社のルールのなかでも、人種や性別、宗教などと同じように、個性のひとつとして受け入れられるように定めることも必要になるとしました。
日本でも同じようにメンタルヘルスを「当たり前」として対応できるようにしていく必要がもっとあるのかもしれません。
<参考文献>
厚生労働省「知ることからはじめよう みんなのメンタルヘルス」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/data.html
Mental health as a diversity issue
https://news.harvard.edu/gazette/story/2019/08/harvard-panel-on-mental-health-in-the-workplace/