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あり得ないほど苛酷な砂漠でのマラソンに挑戦したモデルの話 #ヤハラサハラ第5ステージpart3
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極限の疲労
前回までの旅の様子はこちら。
いよいよ体が本当に動かなくなって、後ろから来た人に抜かされ、その人についていこうと必死にはなるも、どうも体が動かなくて、明らかにゆっくりのスピードなのでそれにすらついていけない。距離が少しずつあいていきます。でもここで一人になったらまた迷ってしまうと思って、限界ギリギリでなんとか視界に人がいる状態を保っていきました。
砂丘が終わって干ばつした平地にでました。大きな穴があって、宇宙のどこかの星に来たんじゃないかと思うような景色でした。CP3(33.7km)がいつまで経っても着かない。もう前の人についていくも本当に限界だったので、平地は多少距離が離れても視界に人がいればいいと、さらに遅く進みました。腕時計を見たり、コースマップを取り出す力もなく、ただただ止まらないように進みました。
音のない砂漠
砂丘と砂丘の間をくねくねと曲がるコースになり、前後左右・砂に囲まれ、人の気配もなく音もなく、しんしんとしています。聞こえるのは自分の足音と、空洞ができたバックパックが左右に揺れて、中のマグカップがバックの中であちこちにあたる金物の音。空洞があるだけ重心が定まらなくて左右に揺れるので、より体幹の体力を使います。バックパックが大き過ぎて空洞をなくすようにこれ以上バックをコンパクトにできなかったのですが、慣れた参加者はこの状況を想定して、私の半分くらいの小さなバックパックに、外付けで荷物を足していました。
私は荷物を中に一つにまとめるという固定概念があったのでリュックだけで1.5kgあるようなしっかりした素材のものを選んでしまい、次にもし出場する機会があったら、バックは小さいのを選び直そうと思いました。
最後のCP
コース表示がちゃんと数mおきにあるわけではないので、次のマークが見つからないとたまらなく不安になっていました。音もなくて、いつになったらCP3なんだろうと、体全体とリュックの重さがすべて足にかかっているのを感じながら太陽にジリジリと焼かれ、これまでのフルマラソンでも、高校生の時に必死になってやっていたハンドボールの部活でも、人生で経験したことのない極限の疲れを感じていた時、エンジンの音がしました。
CP3、33.7km。給水車の音です。
左右が高い砂丘がまだ続いていたので見えてはないのですが、音がない砂漠の世界で毎回聞こえると安心するこの音。左に曲がって上り坂。その先にはやっとやっとやっとCP3が見えました。
私が姿を見せた瞬間、スタッフの方達が歓声をあげ、拍手を送ってくれました。もう一台しか車がなかったので、自分がかなり後ろのほう、もしくは最後なんだということを認識しました。一人のスタッフが駆け寄って来るのが見えたのですが、もう安堵で涙が止まらず、視界が滲んで隣に来てくれるまで誰かわからなかったのですが、セカンドステージで泣きながらゴールした時に水を配ってくれた時のスタッフの方でした。あの時からその場にいたスタッフのみなさんは私に気をかけてくれていて、ビバーグ(野営地)でも私を見つけると、 「よくやったねRIKA!大丈夫?順調?」といつも声をかけてくれていました。
「RIKA大丈夫だよ。間に合った。最後だから。あと8.5kmだよ。ゆっくり休憩する時間はないけど、いったん休んですぐ出発すればゴールまだ間に合うよ。」と声をかけてくれました。
最後のチェックポイント。なんとか時間内に到着です。
束の間の休憩
テントを見つけ、「日陰〜!!」と倒れこみました。久しぶりの日陰です。寝返りを打つのも足腰で痛くて、重いリュックをおろすのにも時間がかかりました。疲れや痛みと同時に、足にできた謎の蕁麻疹もピークでした。靴を脱ぐと、真っ赤で蕁麻疹のぶつぶつが腫れ上がって一体化した私の足なのかと疑問に思うような足。ドクターを呼んで痒み止めの薬を塗ってもらいました。フランス人、マイペース。こっちがもう痒くて痛くて一瞬でも早く処置してほしいのに、手つきが遅い。英語も微妙。「お願い早くその薬ちょうだい!」と心の中で訴えるも疲れで声に出ない。
連日スピードが大体同じで会っていたスペイン人のマダムが駆け寄って来て、足のマメの治療を求めたのですが、スタッフのスピードにイライラして、そのフランス人スタッフがわからない英語で文句を言い始めました。私はちょっと英語がわかるので彼女が堂々と文句を言いつつ、マイペースにのんびり作業するスタッフを見ているのが面白くて少しにやけてしまい、「あなた英語わかるのね。」と言われ、二人で少し笑いました。
ヤハラリカ