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新型コロナ治療の救世主になるのは「ラマ」!? 世界で研究が進む治療法に新たな可能性

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ラマ

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生を受けた緊急事態宣言は解除されましたが、第2波、第3波にどのように備えていくのかという問題はまだ残っています。そうしたなかで、さまざまな治療法の開発が進んでおり、意外な方法も有望視されています。海外の研究グループが注目したのは動物のラマがつくり出すウイルスに効果を示す抗体。その理由は何なのでしょうか。

監修 : 星 良孝 <ステラ・メディックス>

ステラ・メディックス代表取締役社長 獣医師/ジャーナリスト
専門分野特化型のコンテンツ創出を事業として、医療や健康、食品、美容、アニマルヘルスの領域の執筆・編集・審査監修を担っている。東京大学農学部獣医学課程を卒業後、日本経済新聞社グループの日経BP社において「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集者、記者を務めた後、医療ポータルサイト最大手のエムスリーなどを経て、2017年に会社設立。YouTubeステラチャンネルでもヘルスケアの話題を発信。
YouTube:https://youtube.com/@stellach

Contents 目次

ウイルスに対抗する有効な方法は?

ラマの親子

新型コロナウイルス感染症に感染した場合に、どのように治療するのか、世界中で研究が進んでいます。日本でも5月に「レムデシビル」という薬が認められたのがニュースにとり上げられました。世界ではワクチンについて100以上、治療薬については200件以上の開発が進んでいます。

こうしたなか、米国テキサス大学が注目したのは、動物のラマがウイルスに抵抗するために体内でつくり出す抗体です。新型コロナウイルス感染症を引き起こすコロナウイルスがもつ「スパイクタンパク質」にとりついて感染を阻止することができるからです。コロナウイルスはこのスパイクタンパク質によって人の細胞にとりつくので、これを邪魔するような薬としてラマのもつ抗体が使えると考えたのです。

感染の治療に有効となる可能性

ラマ

研究グループが突き止めたのは、ラマの抗体を使うことで、ウイルスの感染を阻止できそうだということ。新型コロナウイルスに感染した直後に使用することで重症化を防ぐことができると研究グループは期待しています。感染する前に備えるワクチンとは異なり、感染したとわかったらすぐに使うところがポイントです。

抗体は外敵から身を守るためにつくられる「免疫グロブリン」と呼ばれるタンパク質です。人でも抗体をつくっているのですが、ラマの抗体が注目された理由は、ラマは2種類の抗体をもっているからなのです。ひとつは人と同じなのですが、ラマやアルパカなどラクダの仲間は大きさが4分の1の抗体をもっています。これが「VHH」と呼ばれており、吸入薬として、口から吸うことで肺に入れられるのが特徴。新型コロナウイルスは肺で増えて重症化につながるので、直接肺に入れられる薬として期待されているわけです。一般的なワクチンのように注射として使うものではありません。

今後は、ハムスターやサルに試し、その後、人間で試験することになるようです。新型コロナウイルスの治療として確立することをゴールとしています。早く治療手段が登場することが望まれます。

<参考文献>

Antibodies from Llamas Could Help in Fight Against COVID-19
https://news.utexas.edu/2020/04/29/antibodies-from-llamas-could-help-in-fight-against-covid-19/

Wrapp D, De Vlieger D, Corbett KS, et al. Structural Basis for Potent Neutralization of Betacoronaviruses by Single-Domain Camelid Antibodies [published online ahead of print, 2020 May 5]. Cell. 2020;S0092-8674(20)30494-3. doi:10.1016/j.cell.2020.04.031
https://www.cell.com/cell/pdf/S0092-8674(20)30494-3.pdf
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32375025/

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