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CATEGORY : ヘルスケア |オーラルケア

今こそ見直すとき! 感染症対策にも大切なオーラルケア。30~40代女性が気をつけるべきことは?

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さまざまなオーラルケアアイテム

がんや外傷などが原因で、歯やあご、顔面の一部を切除した人に装置を作り口腔機能を回復させる「顎顔面補綴」を専攻、クリニックでの診療と平行して東京医科歯科大学歯学部附属病院顎義歯外来で非常勤講師を務める歯学博士の照山裕子先生。多くの生活者に病気を早期発見する目を養ってもらいたいと、著書やメディア、講演などを通じてオーラルケアの重要性についても発信しています。30~40代のFYTTE世代の女性が気をつけたい口の中の病気やセルフケアの方法について伺いました。

監修 : 照山 裕子

歯学博士。東京医科歯科大学非常勤講師。日本大学歯学部卒業、同大学院歯学研究科にて博士号取得。口腔および頭頸部のがん手術などによって失われた機能を回復させる「顎顔面補綴」を専攻した臨床経験から、予防医学の重要性を提唱する。「日本人の口腔ケアへの意識を変えるにはどうしたらいいのか?」という課題の答えのひとつとして考案、推奨している「毒出しうがい」が書籍化され、13万部のベストセラーに。現在は大学病院および全国の歯科クリニックにて診療を続ける傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも多数出演。『日経woman』のオフィシャルアンバサダーも務める。

Contents 目次

FYTTE世代の女性は、歯周病に気をつけて

歯科医院で治療してもらっている女性

照山裕子先生が、FYTTE世代の女性に注意を促すのは、歯周病です。
「歯周病は、歯周病菌による感染症です。箸やスプーンの共用、キスや飲みものの回し飲みなどで菌の感染が起きると考えられています。複数人で同じ鍋料理を直箸でつつくことなどもってのほか。ついうっかり同じ皿から食べてしまいがちなバーベキューやビュッフェなども注意したいですね」

歯周病なんて、自分には関係ない、と思っていませんか? いえいえ、人ごとではありません。なんと成人の7割が何らかの歯周病予備軍であるといわれているのです。
「歯周病菌は、口の中のプラーク(バイオフィルム)という粘り気のある汚れの中で、食べかすなどをエサにして増え、主に歯と歯ぐきのすき間の“歯周ポケット”に住み着きます。歯周病を発症すると、初期には、歯ぐきの腫れ、赤み、出血などがみられます。重症化すると、口臭がひどくなったり、歯を支える骨が溶けて、歯が抜け落ちることがあります」

しかし、歯周病菌を持っているからといって、すべての人が歯周病になるわけではありません。歯科医師、歯科衛生士などプロによる定期的なクリーニングと正しいセルフケアを続けることで、発症を防ぐことができます。
「一方、うまくケアできないと、毒性の強い歯周病菌がどんどん増え、体の抵抗力がいつしかそのパワーに負けてしまい歯周病を発症します。多くの場合は、感染から発症までのスピードはゆっくりです。歯周病菌の毒素に加え、喫煙や食事のとり方といった生活習慣、免疫力の低下、かみ合わせの過度なストレス等が複合して、長い年月をかけて発症。状態によって歯肉炎、軽度歯周炎、中等度歯周炎、重度歯周炎という4段階に分かれます」

<歯周病の症状>

口の中の細菌は700種類以上あるといわれますが、「レッドコンプレックス」と呼ばれる3種類の悪質な歯周病菌が特に要注意です。中でも最も凶悪なP.g菌(Porphyromonas gingivalis)が棲みつくと歯周病が重症化しやすくなるだけでなく、さまざまな全身病の原因になります。18歳以上になると、異性との交際も活発になるため、こうした病原性の高い菌に感染するリスクも高くなるといわれています。

「また、歯周病菌の中には、女性ホルモンをエサに増殖するものがあり、月経サイクルの中で、女性ホルモンの分泌量が増える月経前になると、歯ぐきに一時的な腫れや出血がみられるようなこともあります。月経に関係なく続くようなら歯肉炎のサインかもしれませんし、妊娠や出産で症状が増悪する人もいます。歯周病は、女性こそ注意したい病気です」

歯周病菌の影響は、口の中だけではありません。近年、さまざまな研究によって、歯周病菌が全身の健康にも悪影響を与えることがわかってきました。
「たとえば、感染症への影響です。歯周病菌は、たんぱく質を分解する酵素を持っており、ウイルスの膜を壊して、ウイルスの毒性を引き出す働きがあります。つまり、口の中に歯周病菌が多いと、新型コロナウイルスやインフルエンザが毒性を発揮しやすい環境を作ってしまうのです。
さらに、免疫システムが、常に歯周病菌と戦っていることで、体が疲れやすくなったりもします。歯周病菌が血管に入り込み、血流にのって全身に運ばれることで、生活習慣病や認知症にも関与。早産のリスクが高まり、その結果、赤ちゃんが低体重児になることもあります」

1日1回、しっかり歯を磨くことが歯周病対策に

歯を丁寧に磨く女性

歯周病予防のために、定期的にクリニックで歯のクリーニングをしてもらっている、という人もいるかもしれません。「でも、プロケアが受けられるのは、日常生活におけるほんのわずかな時間。歯周病ケアの主役は自分自身です」と照山先生は強調します。

では、どのようなケアをすればよいのでしょうか。
「オーラルケアは、歯みがき、フロス、ブクブクうがいを時と場合によって、使い分けて」とアドバイスします。

たとえば、照山先生の一日のオーラルケアは次のとおりです。
【朝】寝ている間は口が乾燥し細菌が繁殖しやすいので起床後すぐのブクブクうがいを徹底。歯みがき剤は、さっぱりしたミント系など気分や歯ぐきの状態によって使い分ける。
【昼】診療などで忙しいことも多いので、時短でケア。フロスを全体に通し液体歯みがきでブクブクうがいの後、さっと歯みがき。
【夜】フロスを通したあと電動歯ブラシを使い10分間程度、しっかり磨きます。歯磨剤は歯を傷めない処方のもの(酵素で汚れを浮かすタイプなど)を使用。入浴中に、湯船につかってテレビを見ながら、磨くことも。最後に必ずブクブクうがいを徹底。

「今は、予防歯科の観点でも『一日一回はしっかり磨こう』というのが主流です。鏡も見ずにゴシゴシ力いっぱいこするだけの誤った歯の磨き方では、歯の根元がすり減って、知覚過敏になるリスクも。その日の汚れは翌日に持ち越さないという意識で、夜に重点を置く歯ぐきケアがおすすめです。と同時に、生活サイクルの中で汚れがたまっていかないように、コーヒーを飲んだり、おやつを食べたりしたら、隙を見つけてブクブクうがいやフロスをとり入れるようにするといいでしょう」

歯みがきは毎日のことですが、「意外とじょうずに磨けている人は少ない」と照山先生は指摘します。歯みがきのポイントは、3つです。

1.歯の表面ではなく、歯と歯ぐきの境目を意識して磨く。
2.歯ブラシはペン持ちで、ヘッドまでの距離を短めに持つ。ブラシ部分を45度下に向けて、歯と歯ぐきの境目にあて、一本ずつていねいに磨く。
3.歯ブラシは小刻みに動かす。シャカシャカ音がするようなら、強く磨きすぎ。

「月経の時期に歯ぐきが腫れやすい人は、この時期はやわらかめの歯ブラシにするなど、体調などによって、歯ブラシを変えてもいいですね。歯みがきに自信のない人や歯並びが乱れて磨きにくい人は、電動歯ブラシも、おすすめです」

長い人生を健康的に送るために。オーラルケアはトータルで考えよう

フロスをする女性

最近では、日本歯科医師会の呼びかけで、80歳まで20本以上の歯を残そうという「8020運動」が展開されています。自分の歯を維持することが健康寿命を延ばすには、重要なことだからです。人生100年時代に、オーラルケアの重要性はますます高まっています。その中で、「オーラルケアをトータルで考えてほしい」と照山先生は話します。

「たとえば、過去に虫歯治療で詰めた金属が経年劣化でゆがみ、歯から金属が浮いてしまい、そこにたまった汚れを歯ブラシやフロスでは取ることができず、虫歯がさらに深く進行することはよくあります。また、合わない金属をそのままにしておくと食物が挟まりやすく歯周病ケアを難しくすることもあります。保険診療では、虫歯治療に金属や吸水性の高いプラスチックが使われることが一般的ですが、健康増進という観点からは、天然の歯に性質が近いセラミックなどを適用すると口の中を衛生的に保ち、歯を長持ちさせる効果があるのです。

また、口腔がんの発症は口の中への機械的な刺激も一因になっているのでは、と言われています。強すぎる歯みがきを見直すことなどは、こうした生命を左右する病気の予防にもなると考えています。高速でブクブクうがいを行うことは、舌の筋肉を鍛える効果もありますが、それは将来起こりうる誤嚥性肺炎のリスクを防ぐことにもつながります。このように、適切なオーラルケアは歯周病ケアだけではなく、実は、いろいろなメリットがあるのです」

長い人生を健康で過ごすためにも、日々のオーラルケアを見直したいですね。

取材・文/海老根祐子

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