肺のがんというと、まず原因として思い浮かぶのは喫煙でしょうか。実際にそのため禁煙が推奨されるわけですが、なかにはたばこを吸わないのに肺にがんが見つかるケースもあります。海外の研究によると、その原因として、口のなかの微生物が関係しているかもしれないと判明しました。それはどういうことなのでしょうか?
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肺がんは女性でも問題に
肺がんは日本でもごく一般的ながんのひとつといえます。統計によると、男性では4番目に多いがん。死亡原因は1番目です。女性では3番目に多く、死亡原因では2番目。肺がんの大きな要因として考えられているのは喫煙ですが、海外の研究からは、肺がん患者のうち4人に1人程度はたばこを吸わない人だとされます。
このたび米国と中国の研究グループは、なぜたばこを吸わない人が肺がんになってしまうのかを調べるため、口のなかの状態に注目しました。口のなかに存在している微生物は、食道や膵臓などのがんと関係していると報告されており、肺がんにも影響している可能性を疑ったのです。
研究グループは、1996~2006年まで行われた研究から、非喫煙者を選び、肺がんになる人とならない人の間で口のなかの微生物の状態に違いがあるのか、条件をそろえて分析しました。研究の始めに口をゆすいだ液をとっており、これを比べたのです。
口のなかの微生物に違いを発見
このような比較からわかったのは、口のなかの微生物の状態が、肺がんになる人とそうではない人で異なっていることでした。口のなかに存在している細菌の種類が多いほど肺がんになる危険性は低かったのです。
さらに詳しく調べると、「バクテロイデス」や「スピロヘーター」と呼ばれる種類が多いと危険性は低く、「ファーミキューテス」と呼ばれる種類では危険性が高まることも判明しました。それが原因であるかまではわかりませんが、口のなかの環境と肺がんとの間に何らかの関係がありそうだと研究グループは指摘しています。
研究グループは、口のなかの微生物の状態の変化や、大気汚染など生活環境の影響などもさらに検討する必要がありそうだと述べています。よく腸内細菌と健康の関係が指摘されますが、口のなかの状態を整えることも一層注目されるのかもしれません。
<参考文献>
国立がん研究センターがん情報サービス
https://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/stat/summary.html
Type and abundance of mouth bacteria linked to lung cancer risk in non-smokers
https://www.bmj.com/company/newsroom/type-and-abundance-of-mouth-bacteria-linked-to-lung-cancer-risk-in-non-smokers/
Hosgood HD, Cai Q, Hua X, Long J, Shi J, Wan Y, Yang Y, Abnet C, Bassig BA, Hu W, Ji BT, Klugman M, Xiang Y, Gao YT, Wong JY, Zheng W, Rothman N, Shu XO, Lan Q. Variation in oral microbiome is associated with future risk of lung cancer among never-smokers. Thorax. 2020 Dec 14:thoraxjnl-2020-215542. doi: 10.1136/thoraxjnl-2020-215542. Epub ahead of print. PMID: 33318237.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33318237/
Christiani DC. The oral microbiome and lung cancer risk. Thorax. 2020 Dec 14:thoraxjnl-2020-216385. doi: 10.1136/thoraxjnl-2020-216385. Epub ahead of print. PMID: 33318238.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33318238/