新型コロナウイルス感染症はいまだに大きな問題ですが、その重症化の理由がわかってきています。よく指摘されるのは、肥満や糖尿病など代謝系の基礎疾患や不健康なライフスタイルが感染や重症化のリスクに関連するという研究結果。一方、このたび海外研究で、植物性食品がベースの健康によいとされる食事をとっていると感染しても重症になるリスクが低い可能性があると報告されました。
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スマートフォン利用を分析
風邪をひくと栄養のあるものを食べるようにうながされます。病気を寄せつけないためには健康的な食事は重要でしょう。新型コロナでも栄養をとることは重要ではないかと考えられるようになっています。実際、これまでの研究によると、感染拡大が起こりやすかった人口集団で栄養不足の特徴が見られているそう。
そこで今回、米国ハーバード大学や英国ロンドン大学などの研究グループは、食事と新型コロナウイルス感染症のリスクとの関連性を調べてみました。使用したのは、スマートフォンのアプリを利用して行われている新型コロナウイルス感染症に関する追跡研究からのデータ。
今回は2020年3月から12月まで追跡した英国と米国の参加者60万人近くのデータを分析しました。参加者は性別や年齢、居住地、基礎疾患などのほかに、パンデミック以前の食生活についてアンケートに答えています。その回答に基づいて果物や野菜などの健康によいとされる植物性食品をどの程度とっているかについて、スコアを出しました。追跡期間中におよそ3万2000人が新型コロナウイルス感染症になり、症状や経過を報告しています。
食事の質が高いとリスクが低下傾向に
ここから判明したのが、植物性食品のスコアで全体を4つに分けると、いちばん高いグループはいちばん低いグループに比べて、新型コロナウイルス感染症にかかるリスクが9%低く、重症になるリスクが41%低いことです。ライフスタイルや居住地域の感染率などを考慮しても同様の結果でした。
ワクチンやマスクの重要性についてはいうまでもありませんが、食事に気を配ることでも新型コロナに感染する、あるいは重症化するリスクを下げられる可能性があるのではないかと研究グループは指摘しています。今回の研究によると、質のよくない食事または貧困のどちらとも無縁であれば、感染の3分の1近くを防ぐことができたとする推測値が成り立つそう。新型コロナの観点からも食事には一層気をつけるとよさそうです。
<参考文献>
Diet may affect risk and severity of COVID-19
https://news.harvard.edu/gazette/story/2021/09/diet-could-affect-coronavirus-risk-according-to-mgh-study/
Merino J, Joshi AD, Nguyen LH, Leeming ER, Mazidi M, Drew DA, Gibson R, Graham MS, Lo CH, Capdevila J, Murray B, Hu C, Selvachandran S, Hammers A, Bhupathiraju SN, Sharma SV, Sudre C, Astley CM, Chavarro JE, Kwon S, Ma W, Menni C, Willett WC, Ourselin S, Steves CJ, Wolf J, Franks PW, Spector TD, Berry S, Chan AT. Diet quality and risk and severity of COVID-19: a prospective cohort study. Gut. 2021 Sep 6:gutjnl-2021-325353. doi: 10.1136/gutjnl-2021-325353. Epub ahead of print. PMID: 34489306.
https://gut.bmj.com/content/early/2021/09/06/gutjnl-2021-325353.full
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34489306/