子どものころにいじめられたせいで、大人になってもうつ症状が続いてしまう人がいる──。そんな研究結果が海外から報告されました。いじめは大きな社会問題になっていますが、その影響はこれまで考えられていたよりも大きいのかもしれません。しかも影響が続きやすい人にはある特徴が見られるようで、そうした点に目を向けることで、うつ病の予防などにもつながるようです。
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うつ病の症状の続き方を調べたところ…
世界保健機関(WHO)によると、うつ病は世界的な問題となる病気の第3位で、2030年には1位になると予想されるそう。こうしたうつ病が特に増えているのは、若い人だとされています。日本では、厚生労働省によると、過去1年間にうつ病になる人は1~2%。生涯にうつ病を経験するのは3~7%とされています。やはり一般的には若い人で多いといわれています。
若い時期にうつ病の症状を経験することは、その後の人生への影響は少なくないと考えられています。精神的な病気や社会的な困難を経験しやすくなるとされるからです。
ただ、過去の研究によると、若い時期にうつ病を経験していても、そのとき限りの人もいれば、後々まで症状が続く人もいて、そうした個人差についてはまだわからない点も多くあるようです。
今回、英国ブリストル大学の研究グループは、1990年から続く大規模な調査データを用いて、いじめられた経験のほか、母親のうつ病の有無や遺伝子の情報などを分析。うつ病のリスクにつながると考えられる要素が、実際にうつ病の症状にどう影響するかを調べました。
いじめの影響は大人になってからも
研究の結果、大人になってからのうつ病の症状は、子どものころにいじめを受けた経験とも関係してくるようだとわかりました。
研究では、10〜24歳の間に9回行われたアンケートで、うつ病の症状がどのように変化してきたかを確認。そのうえで、10歳時点でいじめを受けた経験の有無や母親のうつ病経験の有無、DVの有無など、生活の中でのうつ病につながる問題があったかどうかなどを調べました。
3525人分のデータを調べたところ、継続的なうつ病の症状が見られない人は約7割で最も多く、成人の初期に症状がある人が約1割、青年期だけうつ病の症状がある人も約1割でした。
このほか、子どものときだけ症状がある人が約6%。子ども時代からずっと症状がある人が約3%となっていました。
いじめとの関係を調べたところ、成人の初期までうつ病の症状が続いた人は、いじめを受けた経験と関係がありました。そのうえで、うつ病の症状が続きやすいのは母親にうつ病の症状があるなど、遺伝的な要因が関係しているようでした。
いじめというと、いまや子どもばかりの問題でもありません。その影響の重さを考えると、やはり軽く考えるべきではないといえそうです。
<参考文献>
厚生労働省「うつ病」
https://www.mhlw.go.jp/kokoro/speciality/detail_depressive.html
JAMA Netw Open. 2019 Jun 5;2(6):e196587. doi: 10.1001/jamanetworkopen.2019.6587.
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31251383
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2736940
Some children are more likely to suffer depression long after being bullied
http://bristol.ac.uk/news/2019/july/yp-depression-and-bullying.html
文/星良孝