従来の研究によると、人類の9割近くは右利きだと報告されてきました。どうして利き手が偏るのかといえば、その原因のひとつは遺伝子だとされています。このたび初めて、左利きになる遺伝子型が発見され、左利きの人は脳の働きにも特徴があることが見えてきました。
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40万人もの遺伝子を分析
人類が右利きか、左利きかに分かれるようになったのは、1万年以上も前からだと報告されています。脳の左側のほうが、言葉と関係していることと関連していると考えられています。また、左利きの場合は神経の発達とも関連しているという研究結果も。従来の研究によると、左利きか右利きかは、25%が遺伝子で決まると考えられていますが、どの遺伝子なのかまではわかっていませんでした。
このたび英国オックスフォード大学などの研究グループは、およそ40万人もの英国人の遺伝子を分析し、左利きの人(10%弱)に共通する4つの遺伝子型を発見しました。
脳の言語領域をつなぐ部分に違い
わかったのは、発見された遺伝子のうち、3つの遺伝子は脳の発達などに関係しているということ。特に関連するのは細胞の形成でした。
研究グループが、参加者の脳の詳細なスキャン画像と照らし合わせたところ、左右の脳の言語に関連する領域をつなぐ部分の構造に、遺伝子型による違いが見られました。左利きの人のほうが、このつながりがよいのです。言語機能では左利きのほうが有利なのか、などとつい考えそうですが、平均として見られる違いで、必ずしも左利きの人すべてに当てはまるわけではないそう。
左利きの遺伝子を持つ人は、神経疾患で手の震えなどの症状が現れる「パーキンソン病」のリスクがごくわずかだけ低く、幻覚や妄想などを特徴とする「統合失調症」のリスクがごくわずかだけ高いこともわかりました。ただ、研究グループは、「相関関係を示しているものの、因果関係を示しているわけではない」と説明します。
遺伝のメカニズムについてまだまだわかっていないことは多く、今後も研究が進んでいくことでしょう。
<参考文献>
Genetic regions associated with left-handedness identified
https://mrc.ukri.org/news/browse/genetic-regions-associated-with-left-handedness/
Handedness, language areas and neuropsychiatric diseases: insights from brain imaging and genetics
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/31504236
https://academic.oup.com/brain/advance-article/doi/10.1093/brain/awz257/5556832