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日本人に多い「ビフィズス菌遺伝子」って? 牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする理由は?

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牛乳

解明が進む遺伝子の世界。最近の研究では、日本人の腸内環境を特徴づける「ビフィズス菌遺伝子」の存在が脚光を浴びています。善玉菌としてよく知られるビフィズス菌ですが、もともと日本人はビフィズス菌が多いのだそうです。今回は、遺伝子を研究する医学博士の一石英一郎先生の書籍『最新の研究でわかった人生を支配する真実 すべて遺伝子のせいだった!?』からお伝えしていきます。

Contents 目次

日本人と「ビフィズス菌遺伝子」の関係

腸の模型

腸にいる菌は「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」に分かれ、理想的な割合は「2:1:7」。

多数派はバクテロイデスや大腸菌無毒株などの日和見菌で、次に多いのはビフィズス菌や乳酸菌などの善玉菌です。善玉菌は乳酸や酢酸を作って腸内を酸性にし、悪玉菌の増殖を抑え、腸の働きを活発にします。病原菌による感染の予防や発がん性のある腐敗物の抑制、ビタミン作りのほか、体の免疫機能向上や血清コレステロール低下につながる働きもします。

ウェルシュ菌や大腸菌有毒株などの悪玉菌は少数派で、毒性物質を作り出して、腸内をアルカリ性にします。

「日本人の腸には、欧米人などよりも高い割合でビフィズス菌がいます。理由は長くはっきりしなかったのですが、日本人は乳糖分解酵素を作り出すことが少ないタイプの遺伝子型をもつとわかりました。日本人は乳糖を分解しにくいので、乳糖が腸内で余ってしまい、それをビフィズス菌がどんどん食べてくれるというわけです」(一石先生)

また日本人は「ビフィズス菌遺伝子」をもっており、その理由は、「乳糖が苦手で下痢をしてしまう日本人と、乳糖が大好きなビフィズス菌との相思相愛的な“共生”のために、ヒトのほうの遺伝子が『ビフィズス菌大好き遺伝子』をもつようになったため」と考えられています。

ちなみに、これはAPOE5という遺伝子のパターンで、主に油の代謝に関連しているそう。ビフィズス菌のような腸内細菌のバランスに、油(脂質)のバランスも関係しているとしたら、腸活としてとても興味深い話です。

日本人に多い? 牛乳でお腹ゴロゴロの理由

牛乳

牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする、いわゆる乳糖不耐症は日本人に多い症状のひとつです。

「日本で多くの人が牛乳を飲み始めたのは戦後。現在でも日本人の牛乳摂取量は、欧米人よりかなり少ないといわれています。歴史をさかのぼると、飛鳥~平安時代の日本には『蘇』(そ)という乳製品があって貴族たちに好まれ、薬や供え物にも使われました」

蘇は乳汁をコトコト煮てできたかたまりを乾燥させたもので、701年の大宝律令のころは、皇族御用達の酪農家「乳戸」が宮中に牛乳を納め、余りは蘇にして保存していたそう。

「その後に乳製品がすたれたのは武士が活躍する戦乱の時代で、乳牛よりも軍馬を飼うようになったからとも推測できます。日本人が牛乳に弱く、下痢をするのは、前述のように乳糖分解遺伝子が弱いせいですが、遊牧民はこの遺伝子がしっかり働いています。私も蘇を作ってみましたところ、予想以上に甘くておいしいのですが、乳糖のかたまりですから、消化不良を感じました。当時の人も乳糖を分解できなかったのかもしれません」と一石先生。

ビフィズス菌遺伝子をもつ一方で、乳糖分解遺伝子が弱く、乳製品の消化吸収に時間がかかる、あるいは消化できないということが日本人の体質としていえるようです。

次に、分解・吸収や消化の話に関連して腸の長さについてもふれましょう。

「大腸内視鏡検査をすることが多い私は、この腸は長いなと実感することがあります。消化しにくい草を食べてきた長い歴史が日本人の腸を長くしたのだろうと思います。もっとも、2013年の『日本人とアメリカ人の大腸の長さは違うのか? 大腸3D-CT(仮想内視鏡)による1300名の検討』という研究では、日本人とアメリカ人の大腸の長さはほぼ同じで、日米とも世代が上がると大腸が長くなるとの結論でした」

胃下垂も似たような話で「“病気”ではなく、消化がよくない草を胃の中に長く停留させて、時間をかけてしっかりこなそうとする“体質”です」と一石先生。

最近は、野菜炒めなど短時間の調理で食べることが多いですが、それが原因で消化不良を起こし胃もたれや胸やけを訴える人が多いそう。

「日本人が昔から食べてきた鍋は、草や野菜やいもなどをグツグツ煮て消化をよくする、とてもよい調理法だということです。古来から大事にされてきた鍋をもっと見直してほしいですね」

遺伝子が決めているかもしれない日本人の体質。食生活やライフスタイルなど古来の人々とのつながりが感じられます。

文/庄司真紀

 

参考書籍/

『最新の研究でわかった人生を支配する真実 すべて遺伝子のせいだった!?』(アスコム)『最新の研究でわかった人生を支配する真実 すべて遺伝子のせいだった!?』(アスコム)

著者/
一石 英一郎一石 英一郎
いちいし・えいいちろう 1965年生まれ。兵庫県出身。医学博士。国際医療福祉大学病院内科学/予防医学センター教授。京都府立医科大学卒業、同大学大学院医学研究科内科学専攻修了。世界の著名ながん研究者が名を連ねる米国癌学会(AACR)の正会員(ActiveMember)。DNAチップ技術を世界でほぼ初めて臨床医学に応用し、論文を発表。人工透析患者の血液の遺伝子レベルでの評価法を開発し、国際特許を取得。長年にわたり、遺伝子の研究を行っている。

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