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31歳・金融・年収600万円。1K・66000円のアパートで満足。宝塚歌劇団が好きで、ファン仲間もいるので寂しくありません~私、ひとりでいてもイイですか?(18)~

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31歳・金融・年収600万円。1K・66000円のアパートで満足。宝塚歌劇団が好きで、ファン仲間もいるので寂しくありません~私、ひとりでいてもイイですか?(18)~

本企画は、ひとりでいるのが好きな人も、ひとりでいるのが寂しいと感じる人も、“おひとりさま生活”について思いのたけを語るインタビュー連載。インタビュアーは、婚活・恋愛の記事を多数手がけ、さまざまなメディアで活躍中のフリーライター・大宮冬洋さんです。
今回登場するのは、エリア総合職として金融機関に勤める31歳の女性。子どもが好きで、いずれ結婚したいと思っているものの、今はハマっている宝塚歌劇団の「推し」を応援することが最優先なのだとか。「推しが退団するまでは婚活休止中です」と言う彼女、そこまでハマった背景には、いろいろな事情があるようです。

Writer : 大宮冬洋 (おおみや・とうよう) (フリーライター)

フリーライター。恋愛・結婚に関するインタビュー記事を得意とし、最近は「お見合いおじさん活動」も勝手に遂行中。35歳以上で結婚した「晩婚さん」を160人以上取材した実績を持つ。2012年、再婚を機に愛知県蒲郡市に移住。近著に『人は死ぬまで結婚できる~晩婚時代の幸せのつかみ方~』(講談社+α新書)がある。

Contents 目次

テレワークの隠れた効用。職場の人間関係と適度な距離ができて喜ぶ人たち

仕事の好き嫌いは業務内容よりも職場の人間関係に負うところが多い。和気あいあいとした雰囲気ならば単調な作業でも楽しかったりする。逆に、どうにも苦手な人がいる場所では「8時間も同じ空気を吸いたくない」と憂鬱になったりするものだ。

しかし、苦手な人ともたまにメールやオンライン会議をするぐらいならば問題ない。コロナ禍でスタートした本連載のインタビュー取材では、「テレワークをするようになって会社が嫌ではなくなった」という声が聞こえてくる。

都内の大手金融機関で転勤なしの「エリア総合職」として働いている江原美佐子さん(仮名、31歳)もそのひとりだ。かつてはシェアハウスに住み、仕事に情熱を持つ同性の友人から刺激を受けてきた江原さん。高学歴だけど淡々と働いている同僚たちは「つまらない」と感じ、仕事帰りの飲み会などでその思いが高まっていたと振り返る。コロナ禍で週1、2回しか出社しなくなった今は人間関係の不満を持たずに済むようになった。テレワークの隠れた効用と言えるかもしれない。

***江原美佐子さん(仮名、31歳)の話***

ベンチャー企業は楽しそう。でも、楽な仕事でいい給料をくれる会社への未練もある

実家は東京の郊外にあり、大学も郊外の私立大学に通いました。就職するときは「仕事は退屈なものだ」と覚悟して今の会社に入ったのです。でも、社会人になってから楽しそうに働いているフリーランスの女の子と出会うことがあって、「うちの会社にはこういう人はいないな」と感じています。

ベンチャー企業への転職を考えたこともありました。でも、楽な仕事でいいお給料をもらえる会社への未練もあるのが正直な気持ちです。つまらない同僚ともテレワークで顔を合わせずに済むようになったので、今は転職を踏みとどまっています。

夜はひとり暮らしの部屋で『TAKARAZUKA SKY STAGE』(宝塚歌劇団の専用チャンネル)をずっと観ています。ファン仲間とLINEで感想を言い合っていると時間が過ぎていくので寂しくありません。むしろ心は健康です。

4月からは部署を異動してDX(デジタルトランスフォーメーション)に関わる業務に就けそうです。うちの会社は保守的で新しいITツールは苦手な人が多いので、私にとってはチャンスかなと思っています。DX推進の経験は転職する際にも役立つはずです。

謝るべきときに謝れない父、甘やかされて自活できない弟。実家には行きたくない

電車で20分ほどの距離にある実家には何年も顔を出していません。両親とも弟とも仲がよくないからです。父とは大学生時代に決別しました。暗くて自分からは何も話さない人で、酔って帰ってきて洗面台に置き忘れた私の携帯を水没させたことがあったんです。高校時代の写真が全部消えちゃってショックだったのですが、父は自分の非を認めませんでした。ゴメンも言えない可哀そうな人なんだと気持ちが引いてしまって、それからは会話していません。

私は子どもの頃からちびっこ好きで、近所の赤ちゃんのところにしょっちゅう遊びに行っていました。でも、4歳下の弟を可愛いと思ったことはありません。母が弟ばかり可愛がり、長女の私はいつも「いい子」でいなければなりませんでした。
結果として弟はアルバイトもしないのに親のお金でゲーム機ばかり増やす大人になり、就職もうまくいかなかったようです。今でも実家暮らし。私は何でも自分でやり自活しています。あの弟には「わがまま言っていないでちゃんとしなさいよ!」と諭す気にもなりません。母が「子育てを間違えた」とこぼしていた記憶はあります。

シェアハウスでの初恋。「好きってこういうことなんだ!」

今は飲み屋で隣に座ったおじさんと楽しく飲み交わせる私ですが、高校生時代まではすごく人見知りでした。女の子にもあまり話しかけられなかったぐらいです。大学は男の子ばかりの学部にいたのでデートに誘ってもらったこともあります。でも、「好き」という感情がわからず、むしろ「気持ち悪い」と思ってしまいました。

人生初の彼氏ができたのは24歳のときです。その頃、実家を出てソーシャルアパートメントで暮らしていました。60人ぐらいでキッチンやリビングを共有する大きくてお洒落なシェアハウスのようなものです。派閥などはなくて、みんなで仲よくしているうちに大好きな人ができました。
私より5歳年上だったと思います。頭がよくてカッコよくて、お洒落な大人のお兄さん。「好きってこういうことなんだ!」と感動して、同じ建物に住んでいるのに毎日LINEをしていました。でも、嫌われたくなくて言いたいことも言えず、すごく面倒臭い人間になっていたと思います。あの頃の私とは友だちになりたくないですね。

8か月で振られてしまったのも仕方ないと思います。彼と顔を合わせるのがつらすぎて、キッチンにもリビングにも行けなくなり、4.7畳の自室で冷たい総菜を食べる日が続きました。別れた後も2年間も暮らしていたのが不思議です。

年収600万円でも1Kのアパートで十分。自分のためにお金を使いたくない

母とは疎遠ですが、母方の親戚とは仲よくしています。でも、祖母が認知症になって私のことも忘れてしまったのがつらくて、最期を看取ることができませんでした。それが心残りだったので、ひとり暮らしになった祖父から「うちに住めばいい」と言ってもらったときは嬉しかったです。

シェアハウスを出て本当に一緒に住もうとしたら、「やっぱり嫌だ」と祖父に拒否されました(笑)。狭い家なので生活パターンが違う私とは暮らしにくいと思ったのだと思います。だから、祖父の家から徒歩5分のところにあるアパートを借りました。
祖父とは1年間、ご近所付き合いができました。毎日、会社から帰ってくると祖父の家に顔を出して30分間ぐらいおしゃべりするんです。週末は一緒に定食屋さんに行ったりしていました。そのうち祖父は体が動きにくくなり、都内の施設に入って1年後には老衰で亡くなりました。

私は今でも同じアパートに住んでいます。6畳1Kの間取りで家賃は66000円。狭い部屋には慣れているので快適です。年収は600万円ももらっているのですが、広いマンションに住みたいとは思いません。私は心配性だしケチなんです。スーパーでは1円でも安い食材を買っていますから。食事はオートミールや焼きビーフンが多いです。肉や野菜を切って冷凍しておき、適当に加えて食べています。私、自分を大切にしていないのかな?

友だちにプレゼントしたりするときには金額は気にしません。私はハマりやすい体質で、バンドなどにどっぷりハマるとどんどんお金を使ってしまいます。今は、宝塚の男役スターにハマっています。髭を生やした役を見たときにやられてしまいました(笑)。どことなく、大好きだった元カレに似ている気もしています。

彼女は真っすぐな性格で、若手にもフラットに接しています。女性としても人としても尊敬! 宝塚を教えてもらったのは祖父が亡くなった頃だったので、私の心の支えが祖父から彼女に移ったのだと本気で思っています。出待ちをしているときに知り合ったファン仲間との交流も楽しくて、60歳のマダムが一番の仲よしです。

卵子凍結費用、120万円也。いつかお母さんになり、仲良し家族を築きたい

1年前、マッチングアプリで知り合った男性と付き合いそうになったことがありました。2歳上のハイスペック男性です。私が追いかけても振り向いてもらえないことが多かったので、私に告白してくれるような男性で生理的に無理でなければ付き合ってみようと思いました。スペックに目がくらんだ面もあります。

でも、手もつながないまま1か月で別れてしまいました。私の男友だちはフットワークが軽くて、音楽フェスなどで初めて会う人とも気さくに会話できる人が多いのですが、彼はそういうタイプではなさそうでした。ちょっとネガティブで趣味もない。友だちにもなれないと気づきました。一緒にいても楽しくないという気持ちが伝わったのだと思います。ある日から連絡が来なくなりました。

友だちにすらなれない人と結婚するのは難しいです。でも、後悔はしないように昨年、卵子を凍結しました。採卵手術は30万円でできると聞いてお手ごろだと思ったのですが、私の場合は一度の採卵では十分な数の卵子が採れず、2回手術をしました。40個弱の卵子を2年間保管するのに、トータルで120万円もかかります。
それでもお母さんになりたいんです。自分の母みたいにはなりたくありませんけど。あまり家族に恵まれなかったので、仲よし家族に憧れているのかもしれません。

宝塚ファンの江原さん。「憧れのスタートお揃いのぬいぐるみに観劇グッズであるオペラグラスとポンポンを持たせました」(本人提供)
宝塚ファンの江原さん。「憧れのスターとお揃いのぬいぐるみに観劇グッズであるオペラグラスとポンポンを持たせました」(本人提供)

***大宮より江原さんへ***

自分を好きになれないと、自分を大事にしてくれない異性に惹かれやすくなります

心の支え、という言葉がなんだか胸に響くお話だと感じました。以前はおじいさん、その後は宝塚スターに愛情を傾けることで自分の心身を健やかに保っているのですね。おじいさんやスターそのものではなく、江原さんがエネルギーを注いでいるという行為が重要なのだと思います。作家の故・田辺聖子さんがこんな文章を書いていたのを思い出しました。

<女は人に可愛がられるのが幸福なのだ、という神話を、女の子をもつ親は信じていますが、でも女の両手はいつも可愛がるものを求めて宙にさし出されているのではないでしょうか。>(短編『それだけのこと』より抜粋)

何かを可愛がりたい、応援したいという感情は、女性だけでなく男性にもあると僕は思います。僕の場合はちょっと遅かったのですが、40歳を過ぎたあたりから若い人がいじらしく感じるようになりました。甥っ子や姪っ子だけでなく、たまたま知り合った男子高校生だって可愛いのです。彼らの将来が少しでも明るいものになるようにできるだけのことをしてあげたいと思ったりしています。

江原さんは応援している宝塚スターが退団したら婚活を再開するんですよね? その際にアドバイスがあります。ご家族の誰かと和解をすることで、自分を可愛がることです。和解の最有力候補はお母さんですね。大学を出るまで育ててくれたことに感謝はしつつ、子どもの頃に「いい子」でいなければならなかった苦しさを伝えてみたらどうでしょうか。もしかすると謝ってくれるかもしれません。

家族を軽蔑し、その誰にも心を開けないのはつらいことだと思います。そんな自分を好きになれなかったりして、自分を大事にしてくれない異性に惹かれたりしてしまいます。不幸な結婚をする女性の典型的なパターンです。今さらお母さんと仲よくなるのは無理でも、たまには顔を合わせて言いたいことを言ってみることをお勧めします。気持ちがより軽やかに安定し、婚活でもいい出会いに恵まれやすくなるはずです。

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