一日中マスクを装着する生活が続き、肌荒れや吹き出物(ここでは「ニキビ」という呼称で統一します)など、肌トラブルに悩む人が増えているといいます。一度ニキビができて対処を誤ると、なかなか治らなかったり、跡が残ってしまったりすることも。
今回はニキビができたときの効果的な対処法や、スキンケアでの予防法を、皮膚科医の小林智子先生に教えていただきました。今まで正しいと思っていたスキンケアを、今一度見直してみましょう。
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マスク下は高温多湿! 肌はどうなっている?
マスクをつけていると呼吸によって湿度がこもり、じんわりと汗をかいていることも多くなります。小林先生曰く、マスク下の肌は高温多湿にさらされていて、皮脂の分泌が高まってしまっている状態なのだそう。
「マスクによるニキビの原因は、主に4つ挙げられます。ひとつは皮脂の分泌が多くなり、雑菌が増えたり毛穴が詰まってしまったりしてしまうこと。もうひとつは水分量が高まり、いわば赤ちゃんのおむつかぶれのような状態を生み出してしまうこと。長時間肌が蒸れていると、バリア機能が弱まってしまうのです。3つ目は、そんな多湿の状態からマスクを外すとき、急激に乾燥してしまうということ。着脱で起こる温度と湿度の変化に、肌がうまく対応できなくなってしまい、トラブルの原因に。そして最後は、口の動きなどによってマスクが擦れてしまうこと。サイズが合っていない方も多く見られ、大きすぎても小さすぎても、肌トラブルの原因になり得ます」(皮膚科医・小林智子さん、以下同)
マスクで起こるニキビの原因
1. 皮脂の分泌物が増えるため
2. 水分量が高まり蒸れるため
3. 着脱によって温度と湿度の急激な変化が起こるため
4. マスクが擦れるため
ニキビの原因は毛穴の詰まりにあり!
もともとニキビができやすい体質の人のなかには、肌が比較的オイリーで分泌物が多いタイプがあります。一方、「インナードライ肌」といって、皮膚の表面はベタついて一見オイリーに見えるのに対し、肌内部の水分量が少なく、実は乾燥しているというタイプも要注意なのだそう。
「ニキビは、キメが乱れて毛穴が詰まることがいちばんの原因です。詰まった毛穴に皮脂がたまるとアクネ菌が増えて、炎症性のニキビになってしまうんですよね」
生理周期でニキビが悪化する!
ニキビとひとくちに言っても、その原因はさまざまです。そのなかでも、ホルモンバランスが崩れることによってできるニキビは、生理周期に関わっています。
「海外では女性の生理周期、つまりホルモンバランスが原因のニキビを、他のニキビと分けて考えることがあります。通常のニキビのようにニキビ治療薬も使用しながら、低用量ピルなどのホルモンバランスを整えるような婦人科系の治療薬を用いられることがあるのです。ニキビ治療をするときに医師から訊かれると思いますが、いつも同じような周期でニキビができる、という場合はホルモンが原因であることを疑ってみるのもひとつです」
ニキビ治療は市販薬より医師の処方薬がおすすめ
では、ニキビができたらどうすればいいのでしょうか? 診察に行くのが面倒でつい自分で潰してしまう……という方は注意が必要です。
「ニキビをつぶしてしまうと、その周辺に無理な力が加わることで炎症になり、結果として跡が残りやすくなります。場合によっては毛穴が炎症した部分がしこりのように残ってしまうこともありますし、そうなるとレーザー治療など自費治療が必要となる可能性もでてきて、治療も大変になってしまいます。まずは皮膚科を受診するのがもっとも安心でしょう」
ニキビを作らないための予防法
それでは具体的にどんなことに気をつけたらニキビの予防になるのでしょうか? 3つのポイントを教えていただきました。
1. マスクのサイズを確認すること
マスクの擦れがニキビや肌トラブルの原因になっている方を多く見かける、という小林先生。
「喋ってもマスクがその都度ズレない適切なサイズのものを選びましょう。また、素材は不織布よりは布の方が肌にはいいですね。ただ、そもそもなぜマスクをしているかを考えれば、やはり不織布をおすすめしたいです」
2. マスクをこまめに外すこと
マスクをずっとつけっぱなしにしているよりは、こまめに外して風通しをよくすることが大切とのこと。
「マスクを外すときは、湿度が急激に下がらないようスプレータイプの化粧水を、マスクで覆われていた部分にシュッと吹きかけるのがおすすめです。とくに、これから乾燥が激しくなる秋冬に突入するので、いつもバッグに持っておくのがいいですよ」
3. 保湿しすぎないこと
とはいえ、やりすぎは逆効果。スキンケアに力を入れようとすると、ついやりすぎてしまうのが保湿なのだそう。
「保湿はニキビにとても大切なことだと思っている方も多いのですが、やりすぎてしまうとそれは逆効果に。とくにオイルを塗っている人は、本当に肌に必要か考えてみましょう。診察してみないとはっきりとは言えませんが、マスクニキビができやすい人には、過剰な油分は不要です」
正しい洗顔方法は、たっぷりの“泡”で洗うこと
続いて、ニキビ予防にも効果的なスキンケアの教えていただきましょう。
「使用する化粧品の良し悪しは、その人の肌によって違うのでこれがいいとは言えませんが、敏感肌の方には弱酸性タイプをおすすめしています。そしてスキンケアでいちばん大切なのは、泡立てた泡で洗顔をすること。泡を使うことで肌への直接的な摩擦が減りますし、皮脂をしっかり吸着してくれるので汚れが落ちやすいのです。泡だてネットで泡だててもいいですし、泡ででてくるタイプの洗顔フォームを使うのもいいと思います。その日の汚れをきちんと落とすことが肌トラブルを減らしてくれます。
また、洗顔後に塗布するものは体質によって化粧水だけで十分な人もいますし、乳液などでカバーする必要がある人もいます。自分の肌に適切な保湿というのは個人差が大きい、ということはぜひ覚えておいてください」
食べ物やサプリメントで体の中からニキビ対策を
不眠や栄養が偏った食生活が続いたりすることも、ニキビの原因のひとつです。生活リズムを整えたり、食事を見直したり、日々の過ごし方に気を遣うことでもニキビの予防になるそう。
「食べたときに血糖値が急激に上昇しやすいファストフードや丼もの、乳製品などは、ニキビになりやすいと言われています。ゼロにすることはできなくても、食べ過ぎに注意することもニキビ予防になるでしょう。血糖値の上昇が緩やかなきのこや海藻など、食物繊維が豊富なおかずを食べたり、和食中心にしたりするのがおすすめです。また、お酢には血糖値の急激な上昇を抑える効果がありますので、酢のものやマリネなどもいいですよ」
栄養バランスがよい食事を心がけることがいちばんとはいえ、忙しかったり自炊が大変だったりする人は、サプリメントを処方してもらうのもいいでしょう。
「皮膚科では、皮脂の分泌を減らす効果が期待できるビタミンB2やB6、色素沈着を改善するビタミンCなどを処方することがあります。医師に相談し、食生活で改善できない部分はサプリメントに頼るのもひとつの手です」
マスクをしていると保湿されて肌によさそう……というのはまったくの誤り。温度や湿度の差、高すぎる湿気で肌トラブルの原因になり得るのです。できてからでは処置が大変なニキビをなるべく作らないよう、予防に努めましょう。
Profile
皮膚科医 / 小林智子
皮膚科専門医・医学博士。2010年日本医科大学医学部卒業後名古屋大学皮膚科入局。同大学大学院博士課程修了。同志社大学アンチエイジングセンターにて糖化と肌についての研究を行う。また、食事と健康に関してレシピや情報などを医学的な立場から発信するブランド「ドクターレシピ」を監修。プライベートでは2児の母でありながら肌のコンプレックスで悩む女性たちに、美容に関する正しい知識を身につけて美しい肌を手に入れてもらうため、日々活動する。新刊に『皮膚科医が肌荒れしたら食べる おくすり朝ごはん」(ワニブックス)がある。
『皮膚科医が肌荒れしたら食べる おくすり朝ごはん』(ワニブックス)
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