表情筋の衰えは頭皮にも悪影響

長引くマスク生活でよく指摘されるのが表情筋の衰えです。これにより、ほうれい線や顔のたるみを気にする人が増えていますが、それと同じように表情筋の衰えは頭皮環境にも悪い影響をもたらします。

「頭頂部にある帽状腱膜（ぼうじょうけんまく）と、おでこのあたりにある前頭筋は、ほかの筋肉や腱と違い、骨に付着していません。そのため、前頭筋とつながる顔の筋肉“表情筋”が衰え、うまく使えなくなったり、こわばったりすると、重力に引かれて前頭筋が下に落ち、帽状腱膜を引っ張ります。すると、帽状腱膜の上にある頭皮が下に引き伸ばされてしまいます。ゴムホースをつぶすと水が流れにくくなるように、頭皮にある毛細血管も、引っ張られて血液が流れる管が狭くなると、スムーズに血液が流れません。そのため、表情筋の衰えが、頭皮の血流を妨げることになるのです」（辻さん）

髪は血液によって運ばれる栄養によってはぐくまれます。頭皮に張り巡らされている毛細血管のすみずみに潤沢な血液がまわることが重要です。

水分不足や口呼吸も髪の健康に関係!?

またマスクをしていると、常時水分補給をしにくかったり、のどの渇きに気づかなかったりして、水分不足になることが熱中症対策の面からも危惧されていました。

「水分不足になると、血液中の液体成分が減ることで“ドロドロ血”になってしまいます。そのため、血流が悪くなり、毛細血管をはじめとする細い血管しかない頭皮にうまく血が巡らなくなります。髪は血液が運ぶ栄養によってはぐくまれるので、これでは豊かな髪が育ちません」

そして、口呼吸による自律神経の乱れも白髪を引き寄せてしまいます。
「鼻呼吸は、夜やリラックスしているときに働く副交感神経を優位にする働きがあります。口呼吸になり、主に日中に優位になる、体と精神を“オン”の状態にする交感神経が活発な状態が長く続き、“オフ”の状態にする副交感神経への切り替えがスムーズに行われないと、自律神経のバランスが乱れてしまいます。それが、髪にとってよくないのです」

深呼吸することで副交感神経が優位になり、自律神経が整って頭皮に血流がまわるだけでなく、リラックスできることで質のよい睡眠をもたらしてくれます。

「マスクをしていても、『表情筋が衰えないように動かし』『こまめな水分補給を心がけ』『鼻呼吸』を意識して行ってください」と辻さん。

薄毛や白髪以外にも、ハリ・ツヤ・コシが失われるなどの老け髪トラブルが気になるなら、マスク生活のなかでもこうしたことを意識してみるとよいでしょう。

参考書籍

『「髪が増えるしくみ」から考案 頭皮が蘇るすごいマッサージ』（アスコム）

文／庄司真紀

辻 敦哉［著］

つじ・あつや　1979年、埼玉県浦和市生まれ。埼玉県理容専門学校卒業、東京文化美容専門学校卒業、ロンドンTONI&GUYアカデミー修了。2006年リヴォーン株式会社入社。シブヤ西武百貨「THE REV-OWN」店長、営業推進部長を務める。独自の高い技術が、ゴッドハンドとして業界を賑わす。その後独立し、2011年にヘッドスパ専門店「PULA(プーラ)」をオープン。95%以上の人たちの髪のコンディションを改善して超人気店となり、半年以上予約がとれないほどに。2018年に「カラダの内側から髪を元気にするラボ」を立ち上げ、病的な脱毛症を改善する技術を提供している。2017年にはその実績が評価され、アジアの優れた起業家に贈られる「アジアゴールデンスターアワード2017」で、日本人で2人だけのマスター大賞を受賞した。著書に『世界一簡単な髪が増える方法』『育毛のプロが教える髪が増える髪が太くなるすごい方法』（アスコム）などがある。テレビ、ラジオ、雑誌など様々なメディアに多数出演。

［監修者］
コッツフォード 良枝（こっつふぉーど・よしえ）
美容外科・皮膚科医師、日本抗加齢医学会専門医、銀座禅クリニック院長。
山梨大学医学部卒業後、国際医療センター国府台病院を経て、日本医科大学麻酔科学講座に入局。2011年から皮膚科、美容皮膚科、美容外科に従事する。フジテレビ『バイキング』、毎日放送『林先生が驚く初耳学!』、テレビ東京『なないろ日和!』など多くのメディアに出演、活躍中。