一定期間以上、ふだん行っているスキンケアやメイクなどをやめる“肌断食”をやったことがある人はいますか。今回、紹介するのは“髪断食”。人によっては今すぐやる必要性が高いと、教えてくれたのは美容師の日熊大志さん。髪断食とはなんなのか、やり方と注意点を解説していただきました。
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美容師から見た、昨今の髪トラブル
本人は、髪の調子がよいと認識していても、美容師がそれに違和感を覚えるのは“シャンプー台でシャンプーをしたとき”です。
例を挙げると、髪をぬらした瞬間に、ぬるっとした非常に違和感のある感触がします。しっかりシャンプーをして、このぬめりを落とすと、実際は髪が相当傷んでいるというケースがあります。ヒアリングの末、たいていの場合が日頃使用しているシャンプーやトリートメントが原因とわかります。
大もとの原因とは、毛髪表面にへばりついてコーティングのようになる、「ジメチコン」という成分。このジメチコンが髪をコーティングして、“元気な髪に見せていただけ”だったのです。使用している本人は、見た目上は髪の調子がよいので気づきにくいのですが、カラーやパーマのもちが悪い、ヘアアイロンのスタイリングが効きづらいというサインとなって、本来の髪の状態を表します。
もしこのようなサインがあれば「髪断食」を行い、一度髪をリセットしてみましょう。自分の素髪の状態を知ったうえで、本当に必要なヘアケアを検討するプロセスは、非常に重要です。
この例に限らず、肌のように髪も過保護にし過ぎて本来の自己修復機能、バリア機能が損なわれている問題があります。肌や髪になにかを塗ることは、それだけでストレスになるという側面があります。そのため、なにが過剰で、なにが不足しているのかを知るために、ときどきは「髪断食」をする必要があります。
髪断食のやり方と注意点
髪断食のいちばん簡単な方法は、入浴時、少し熱めのお湯で髪の毛をすすぐ、“湯シャン”です。目安として、お湯の温度は41~42度。このくらいの温度になると、皮脂が溶けやすくなり、お湯だけでも洗い落とすことができます。
湯シャンだけで、たいていの汚れと臭いも取れます。ただし、熱ければいいわけではありませんので、この41~42度という温度の幅を守ってください。
次に、あら塩を使う方法です。
用意するあら塩量の目安としては、大さじ2杯。お湯でぬらした髪に、あら塩を直接つけます。あら塩を溶かしながら、頭皮にすりこむようにマッサージします。マッサージすることで発汗が促され、汗といっしょに皮脂などの毛穴汚れが出てきます。これは、選択透過性という、浸透圧の特性です。
同じように、髪を塩水でもみ込みます。余分な皮脂や汚れを落とすことができます。塩水を作るときの目安としては、お湯1リットルに対し、大さじ1杯です。あら塩を使うメリットとして、湯シャンと比較すると、“皮脂や髪の栄養分を過剰に落とし過ぎなくなる”というところです。デメリットとしては、あら塩には豊富なミネラルが含まれているため、独特なニオイが出ます。いわゆる、潮のニオイです。
このデメリットを失くす役わりでもあり、髪断食にもオススメなのが3つ目の方法で使う“お酢”です。あら塩を使ってアルカリ性に傾いた髪や頭皮をちょうどよい状態に戻してくれるのが、酸性のお酢になります。お酢の酢酸は、臭いをとる作用があります。希釈した酢の溶液で頭皮と髪をすすぐことで、頭皮や髪がきゅっと引き締まります。“塩シャン”と“酢リンス”は、髪断食におすすめの方法です。塩シャン、酢リンスそれぞれを終えたあとは、シャワーで十分にすすいでください。
髪断食とは、いわば髪の断捨離です。ヘアケアアイテムは、例えそれぞれがよいアイテムであっても、併用することでケンカが起きて、成果を出せることもなければ、悪い結果になることもあります。髪を原点に戻す機会となる、髪断食。ぜひお試しください。
取材・文/高田空人衣