コスメが全成分を表示するようになった今、自分が使っているアイテムがどんなもので作られているのか一見してわかるようになりました。その中でもよく目にする「油剤」という成分。どんなものか知っていますか? 今回は、気になる成分「油剤」について、かずのすけ先生にわかりやすく解説いただきます。
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油剤と一口で言っても、その種類はさまざま。肌リスクのないものを見極めよう
——成分表示でよく見る「油剤」。どんな成分なんでしょうか? おすすめは?
「簡単に言えばメイク製品の主成分になっている油状(オイル)成分ですね。油剤の種類によってテクスチャや崩れにくさや感触などが変わってきます。メイク製品のベースに用いられる油剤には、安定性が高くて酸化や刺激のリスクのないものが理想的です。
例えば、「エステル」や「シリコーン」などですね。エステルとは簡単に言えば植物油等を原料に化学合成した合成オイルのことです。さまざまな種類があり、粘度や質感など幅広く選べます。一方の「シリコーン」はケイ石という鉱物から作られる物質のこと。これをオイル状に合成したものが、シリコーンオイルです。シリコーンというと、一般的には敬遠されがちですが、僕はメイクアップ製品の主成分としてはむしろ推奨すべき成分と考えています。これらは特に化粧品成分の中で最も安全性と安定性にすぐれた油剤の一種です。
——シリコーンやエステルを選ぶコツはありますか?
例えばシリコーンにもタイプがあり、大きく2つに分類されます。ひとつが「鎖状シリコーン」と呼ばれるもので、比較的しっかりした皮膜を作る油分です。成分の末尾に「~コン」「~シロキサン」とつくものが大半です。ジメチコンやジメチルシロキサンなど。もうひとつが「環状シリコーン」と呼ばれるもので、揮発性があり比較的軽い質感のものが多いです。鎖状シリコーンと同じく末尾にコンやシロキサンがつきますが、さらに成分の頭に「シクロ」がついているのが特徴です。シクロペンタシロキサンやシクロメチコンなどがその代表。エステルは色んな成分がありますが、メイクアップ用だとトリエチルヘキサノインなどが頻繁に使われています。」(かずのすけ先生)
——酸化は老化の原因とも言われていますが、それはなぜでしょう?
「化粧品を使うことで肌荒れをする!などという原因の多くは、皮膚の上でなんらかの化学反応が生じているからと考えられます。肌のたんぱく質を壊したり、中和反応が起こったり…その化学反応にはいろいろな種類がありますが、中でも身近で注意すべきものが「酸化反応」なのです。
酸化が起こると、元々安定だった物質が、不安定な別の物質に変化してしまうことがあります。これが皮膚の組織を壊したり刺激になったりするため、これが蓄積するとシワやたるみ、シミなどを生じさせる一因になると考えられています。(かずのすけ先生)
例え同じ成分でも、スキンケアとメイク製品とではその安全性は異なることがある
——スキンケア製品の成分としてよく知られている「油脂」と「精油」ですが、メイク製品に配合されている場合の注意点はありますか?
「油脂はオリーブ油や椿油、ダイズ油、ココナッツ油などの動植物が生体内で作る油のことです。
油脂は皮脂の仲間の成分なので、スキンケアに用いたりクレンジングオイルに用いると肌なじみがよく柔軟効果も高く非常に有用です。しかし安定性はあまり高くなく紫外線などで酸化されやすいデメリットがあるため、メイク製品や日焼け止めなどの日光が直で当たる製品に油脂を配合するのはあまり相応しくないと考えています。
またローズ油やオレンジ油など一見油脂と似た名称の「精油」は、厳密には油ではなく植物などの芳香成分を濃縮した「天然香料」の一種です。こちらは主成分に用いられることはないのでメイク製品に入っていても基本的に酸化の問題ありませんが、柑橘系の精油などには日光に当たるとアレルギー物質に変化する光感作性物質が含まれていることが稀にあります。シミなどの原因になることもないとは言えませんし、精油は全般的にアレルギーや刺激になりやすい成分なので気になる場合は精油にも気をつけたほうがいいです。
ちなみに油脂と精油は名称が似ているのですが、植物の油脂は“実”や“種”から採取されることが多いです。オリーブ果実油やヒマワリ種子油など。かたや精油は、植物の“花”や“皮”、“葉(ハーブ)”から採取されるもの。ダマスクバラ花油やベルガモット果皮油、セージ油など。植物のどの部分から摂取されているか、を考えるとわかりやすくなりますよ」(かずのすけ先生)
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取材・文/渡部玲