アサリやハマグリなどの貝類が産卵期を迎える春先。栄養をたっぷりとためこんだこの時期の貝類は、肉厚で旨みが増します。でも、下処理がうまくできないと、臭みや苦みがあったり、砂を噛んでしまったりしますよね。
今回は京都で育ち、和食や精進料理を研究してきた料理研究家の荒木典子さんに、貝の下処理の正しい方法と、アサリとハマグリを使ったレシピを教えていただきました。
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国産のアサリは少なくなっている
最初に、貝類の現状について、押さえておきましょう。3月ごろから潮干狩りが盛んになるアサリは、春と秋に産卵期があるため、旬が年に二度あります。アサリは潮干狩りでも簡単に獲れ、もっとも身近な貝と言えるでしょう。しかし、実は日本での生産量は急激に減少していて、1980年代には14万トンあった生産量が2000年以降は3万トン程度しかなくなり、消費の半分を輸入に頼っている状態なのです。
理由は埋め立てや水質汚濁、温暖化による被害など、環境の変化によるものが大きいことがわかっています。現在は水産庁指導のもと、有明海で国産アサリ復活に向けての取り組みが行われています。これはハマグリも同じで、国内に流通しているほとんどが輸入によるものです。環境問題について考えることは、この国の貴重な資源を守ることにもつながっています(水産庁調べ)。
アサリとハマグリの違いとは?
アサリとハマグリを見分けられるでしょうか? 同じ二枚貝ですが、実は触ってみると質感が異なります。
「ハマグリは表面がツルツルしているのですが、アサリは貝殻がザラザラとしていて、線上に窪んでいます。そのためそこに砂が溜まりやすく、砂を吐き出させることができても、貝の表面をよく洗わずに調理してしまうと砂が入ることがあるので注意しましょう。
また、アサリとハマグリは風味は異なりますが、どちらも旨みが強く、今回レシピをご紹介するフォーと茶碗蒸しは、それぞれもう一方の貝でも作ることができます。味の違いも楽しんでみてくださいね」(料理研究家・荒木典子さん、以下同)
大事なのは塩加減! 貝の下処理の仕方
それではまず、アサリを使って下処理の仕方を確認していきましょう。ハマグリも同様に処理することができます。
1.塩水に浸して暗いところへ置く
アサリを平たいバットなどに入れて、海水と同じ、3%程度の濃度の塩水に浸け、暗いところに置いておきましょう。「貝は浜辺にいますから、ボウルのような深いものより、浅いバットのような器がいいでしょう。貝頭が少し出るくらいの塩水を入れます。ざるや新聞紙などで蓋をして暗くすることで、砂を吐き出します。海水程度の塩水でないと砂を吐かないので、塩分濃度に注意しましょう。貝が口を開けてから最低でも30分、できれば2時間ほど置いておけば砂を吐き切ります」
2.貝の表面をよく洗う
砂抜きをしたら、貝をよく洗います。「特にアサリは貝の表面に砂がついているので、お互いを擦り合わせて3度ほど水を替えて洗います」
3.水を切ってざるにあげる
ボウルで貝を洗うと、底に砂が溜まるので、途中で貝をざるにあげて水を替えましょう。表面や口についた砂も落ちていきます。「割れている貝があったら、傷んでいる可能性があるので省いておきます。傷んでいる貝がひとつでも入っていると、煮たときに生臭さがあり、料理がダメになってしまいます」
4.死んでいる貝がいないか確かめる
死んでしまった貝がいないか確かめるには、ふたつの貝を合わせて叩くとわかるといいます。「叩いた音が濁っているときは、死んでいる可能性が高いので省いておきます。すべての貝を叩いてみると、それだけ違う音がするのでわかると思いますよ」
下処理はこれで完了です。すぐに使わないときは、砂抜きをしたら表面を拭いてチャック付き保存バッグなどに入れて冷凍しておきましょう。使うときは電子レンジなどで解凍せず、凍ったままの状態で使います。
それでは、貝を使った料理を早速作ってみましょう。引き続き、料理研究家の荒木典子さんに解説していただきます。