太る背景には消費するカロリーよりも多くのカロリーを摂取しているから。そんな「バランスの問題」がよく指摘されます。そのため食べ過ぎに気をつけるというのが一般的でしょう。そうしたなかで、海外の研究で報告されたのが、必ずしも食べ過ぎが太る原因ではないというもの。食事の量よりも問題になる点が考えられそうだというのです。
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ダイエットをさまたげるのは?
コロナ禍で体重を増やしてしまい、食事を減らして、エクササイズに励む人も多いかもしれません。太らないためのポイントとしてみんなこうした努力をしていて、しかも世界的にカロリー制限や運動がすすめられているのに、肥満の問題が一向に改善しないのはどうしてなのでしょう。そのあたりが問題になってきているようです。
今回、米国、カナダ、ベルギーの研究グループは、従来のエネルギーバランスに基づく肥満の考え方には問題があるのではないかという論文を発表しました。過去の研究から集積された科学的証拠に基づいて着目したのは、食べる量だけでなく、食品がホルモンや新陳代謝に与える影響だというのです。
血糖値を上げやすい食品に注目
研究グループが提案しているのが「炭水化物-インスリン・モデル」という考え方。インスリンは体に入ってきた糖などの炭水化物の影響を受ける血糖値を下げるホルモンです。炭水化物とインスリンのバランスのなかに太りやすさにつながる秘密がありそうだというのです。
そのうえで、研究グループによれば、肥満の原因は食べ過ぎではなく、血糖値を高めやすい「GL(グリセミックロード)値」の高い食品ではないかと指摘しています。
GL値は、炭水化物の血糖値の上げやすさを反映した「GI(グリセミックインデックス)値」をさらにわかりやすく発展させた指標になっています。具体的には食品1回分(たとえば、ご飯1膳)が血糖値をどれくらい上げるかを表す数値です。この考え方に従うと問題になるのは、消化の速い加工度の高い炭水化物をとり過ぎる食事パターンということ。真っ白に精製された小麦粉をたくさん使った主食やお菓子などは問題になりやすいことになってきます。
研究グループは、GL値が高いと血糖値を下げるインスリンや、逆に血糖値を高めるグルカゴンといったホルモンの反応をうながして、脂肪を蓄えやすいように体を変えてしまう問題があると説明しています。脂肪細胞にカロリーを蓄えるようになってしまうので、筋肉やほかの組織にまわるカロリーが減ります。すると「体が十分なカロリーを得ていない」と脳が誤って判断して空腹を感じて、体はカロリーを温存しようと新陳代謝を落としてしまうといいます。脂肪が過剰なのに、空腹感が続くという矛盾が起きてしまうのです。
こうした考え方に基づいて研究グループは、消化がよすぎる加工度の高い炭水化物を控えると、減量もラクになると提案しています。オートミールのような加工度の低い雑穀をとり入れたり、そもそも炭水化物を控えたりするダイエットはこうしたGL値の観点からも注目されるのかもしれません。
<参考文献>
Perspective published in The American Journal of Clinical Nutrition argues the root causes of the obesity epidemic are more related to what we eat rather than how much we eat
https://nutrition.org/scientists-claim-that-overeating-is-not-the-primary-cause-of-obesity/
Ludwig DS, Aronne LJ, Astrup A, de Cabo R, Cantley LC, Friedman MI, Heymsfield SB, Johnson JD, King JC and Kruass RM, et al. The carbohydrate-insulin model: a physiological perspective on the obesity pandemic. Am J Clin Nutr, nqab270, https://doi.org/10.1093/ajcn/nqab270.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34515299/
https://academic.oup.com/ajcn/advance-article/doi/10.1093/ajcn/nqab270/6369073